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肯
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がえ
ふりがな文庫
“
肯
(
がえ
)” の例文
なんとなれば、その犯行は奇想天外にして識者の常識を
肯
(
がえ
)
んぜしめず、むしろ余に対して誣告の誹を発せしむる憾みあるからである。
風博士
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼はそういう「死人島」へ避難することを
肯
(
がえ
)
んじなかった……。ただ生命! ただ真理! 彼は
嘘
(
うそ
)
をつく英雄となりたくなかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
真木大将は辞任を
肯
(
がえ
)
んじなかったが、統制派の圧力に押されて結局、退陣を余儀なくされた。この
更迭
(
こうてつ
)
は皇道派を激怒させた。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
母はみんなに引きとめられて、帰るときには吾一か誰か送って行くという条件の
下
(
もと
)
に、なお二三日鎌倉に
留
(
とど
)
まる事を
肯
(
がえ
)
んじた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
また、夜に入って若い女がこうされた、ああされた実例など、お蝶を断念させようとして、いつまでも、家の外へ出すことを
肯
(
がえ
)
んじません。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
新政府の袖にすがって新しい
路
(
みち
)
をひらいてあげようとした。それをあくまで
肯
(
がえ
)
んじないのだ。彼らはそこでひどい損害を受けたような気持になった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
甲州の原虎胤が信玄より改宗を勧められて
肯
(
がえ
)
んぜず相模に走りしことや、内藤如安、高山友祥が天主教を止めず、甘んじて
呂宋
(
ルソン
)
に趣きしことを論じて
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
若
(
も
)
しそれに
肯
(
がえ
)
んじなかったら、その男を国事犯で絞首台に送りでも、又、殺人隊をやって絶対秘密裡に暗殺してしまいでも、どうでも自由になるのです。
国際殺人団の崩壊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
これは私がいわないでも多くの読者は知ってそして
肯
(
がえ
)
んずる事実であろうと思う。私はここでこの男女関係の狂いが何故最も悪い狂いであるかをいいたい。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
もしかれらが直ちに原隊復帰を
肯
(
がえ
)
んじないとすると。……そう思うと
焦躁感
(
しょうそうかん
)
はいやが上につのり、それがめいるような
悲哀感
(
ひあいかん
)
にさえなっていくのであった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
しばしば先進の大官から重要の
椅子
(
いす
)
を
薦
(
すす
)
められても決して
肯
(
がえ
)
んじないで、一は終生微官に安んじ、一は早くから仕官を辞して、功名栄達を白眼冷笑していた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
然
(
しか
)
れども多く
謀画
(
ぼうかく
)
を致すのみにして、
終
(
つい
)
に兵に将として戦うを
肯
(
がえ
)
んぜす、兵器を
賜
(
たま
)
うも
亦
(
また
)
受けず。
蓋
(
けだ
)
し中年以後、書を読んで得るあるに
因
(
よ
)
る。又一種の人なり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
しかしながらこれには五百万マルクを必要とし、大蔵大臣はこれを支出する事を
肯
(
がえ
)
んじなかった。大蔵大臣はデルブリュックに書簡をもってこの由を申し送った。
戦争史大観
(新字新仮名)
/
石原莞爾
(著)
葉子の女性の幼稚な英雄崇拝観念が、自分の
肯
(
がえ
)
んじ切れない対照に自分の尊敬する芸術家が、その審美眼を誤まって居る、というもどかしさで不愉快になったのだ。
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その人が翁の稽古を
肯
(
がえ
)
んぜず、色々と難癖を附けて翁を
誹謗
(
ひぼう
)
したので、祖父は出会う度に喧嘩をした。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
昏迷
(
こんめい
)
し、奮激し、降伏を
肯
(
がえ
)
んぜず、地歩を争い、何らかの逃げ道をねがい、一つの出口を求めつつ、
巍然
(
ぎぜん
)
たる理想の前から一歩一歩退く時、後方にある壁の根本は
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
また、もし「汝ここに来たるとも、なんの要もなかるべし。速やかに帰れ」といわば、彼は「君の意に従って帰る代わりに、君もまたわが意に従うことを
肯
(
がえ
)
んずるか」
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
先生
咸臨丸
(
かんりんまる
)
米行
(
べいこう
)
の
挙
(
きょ
)
ありと聞て、予が
親戚
(
しんせき
)
医官
(
いかん
)
桂川氏
(
かつらがわし
)
を
介
(
かい
)
してその
随行
(
ずいこう
)
たらんことを求められしに、予はこれ
幸
(
さいわい
)
の事なりと思い、
直
(
ただ
)
ちにこれを
肯
(
がえ
)
んじ、一
見
(
けん
)
旧
(
きゅう
)
のごとし。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
数町下に水ある処ありき。上らんか、下らんかと、問いて見たるに、誰れも下ることを
肯
(
がえ
)
んぜず。
層雲峡より大雪山へ
(新字新仮名)
/
大町桂月
(著)
これを
肯
(
がえ
)
んぜなかったが、王は怒って、「王璽は朕の物である」と言って、これを大臣の手より奪って
親
(
みずか
)
ら勅赦状に鈐したる
後
(
の
)
ち、これをモールヴィーエーに返された。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
今一度、これを許容することを
肯
(
がえ
)
んじまい、と思うのが僕の一歩を運ぶたびごとの節操であった。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
私がいくら習俗を軽蔑して反抗で一杯になつたつて私の臆病な心はその反抗を他人に、かつて私が肉親の人たちに向つてしたやうに
容易
(
たやす
)
くは、向けることを
肯
(
がえ
)
んじなかつた。
感想の断片
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
単于
(
ぜんう
)
は彼らを殺そうとはしないで、死をもって
脅
(
おびや
)
かしてこれを
降
(
くだ
)
らしめた。ただ蘇武一人は降服を
肯
(
がえ
)
んじないばかりか、
辱
(
はずか
)
しめを避けようと
自
(
みずか
)
ら剣を取って
己
(
おの
)
が胸を貫いた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
キリスト教を捨てて
回々教
(
フイフイきょう
)
に改宗するように強制されたにもかかわらず、彼は自分の信仰を裏切ることを
肯
(
がえ
)
んじないで受難を選び、生皮を
剥
(
は
)
がれながら、キリストをたたえて
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
が、内蔵助の叔父小山源五右衛門、
従弟
(
じゅうてい
)
進藤源四郎など、義理にも抜けられない者どもまで、
口実
(
こうじつ
)
を設けて同行を
肯
(
がえ
)
んじなかったと聞いては、先着の同志も
惘
(
あき
)
れて物が言えなかった。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
青々と活きた姿を見せる一本として
安易
(
イーズ
)
に立脚することを
肯
(
がえ
)
んぜざる霊木である。
奥常念岳の絶巓に立つ記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
が、良沢は、未解難解の場所を解するまではとて、上梓を
肯
(
がえ
)
んじなかった。
蘭学事始
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その戦争が、どの戦争であったかさえ彼女はもう忘れているだろう。彼女はそれでもぐち一つこぼさずに総てをうけいれた。しかし汚名だけはうけいれることを
肯
(
がえ
)
んじない。どうしてだろう。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
始めは容易に
肯
(
がえ
)
んじないでも、一旦承知したとなると全力をあげて誠実をつくすのが長吉のいい性格だった。彼はこの困難な仕事を一心不乱にやりつづけた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
すると、それまで
呑気
(
のんき
)
でにこやかだったモデスタは、死にたく思うほどの絶望に陥った。彼女は食事をすることも
肯
(
がえ
)
んぜず、朝から晩まで泣いてばかりいた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
合祀を
肯
(
がえ
)
んぜずんば刑罰を加うべしとの言で、止むを得ず合祀請願書に調印せるは去年末のことという。
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
なお
肯
(
がえ
)
んぜぬ
近畿
(
きんき
)
の大小名を一個一個討って行っても、また東海方面の安定を得ても、甲山陸の強豪を亡ぼし尽しても、結局、それを以て、満足とはいえません。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
或る人は一つの言葉にも或る特殊な意味を
盛
(
も
)
り、雑多な意味を除去することなしには用いることを
肯
(
がえ
)
んじない。散文を
綴
(
つづ
)
る人は前者であり、詩に行く人は後者である。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
外題は「鍋冠り日親」の事蹟を取扱ったものであった。日蓮上人の弟子のこの日親は官憲から改宗を迫られて、これを
肯
(
がえ
)
んじなかった。そこで官憲は紅く焼いた鍋を日親の頭に冠せた。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「賤民の群れに身を落としめることを
肯
(
がえ
)
んじまい。断頭台を恐れるのは、予定に屈服することだ。常に高貴な生まれと、教養とを備えて僕の精神の肉体は礼節ある行動の道を行くんだ」
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
剃髪
(
ていはつ
)
を
肯
(
がえ
)
んじないとすれば、必ずペテルブルグへ行ってどこかの大雑誌に関係して、必ず批評欄にこびりついて、十年ばかりはせっせと書き続けるが、結局その雑誌を乗り取ってしまう。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
彼は擦れ違うために、少しでも速力を加減することを、
肯
(
がえ
)
んじなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
億兆を
鳥飛
(
ちょうひ
)
し
獣奔
(
じゅうほん
)
せしめて
憚
(
はばか
)
らず、功成って
少師
(
しょうし
)
と呼ばれて名いわれざるに及んで、
而
(
しか
)
も蓄髪を命ぜらるれども
肯
(
がえ
)
んぜず、
邸第
(
ていだい
)
を賜い、
宮人
(
きゅうじん
)
を賜われども、辞して皆受けず、冠帯して
朝
(
ちょう
)
すれども
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そして求めるためには、決して立ちどまることを
肯
(
がえ
)
んじない生命の持主であった。彼は、彼の幼年時代を、すべての健康な子供がそうであるように、ひとびとに愛せられる喜びを求めて戦って来た。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
自綱
(
よりつな
)
と聞えしは、飛騨一国を切り従えて、威勢
並
(
ならぶ
)
ものとてなかったに、天正十三年豊臣氏の臣、金森長近に攻められ、自綱は降人に出た、その子秀綱は
健気
(
けなげ
)
にも敵人に面縛するを
肯
(
がえ
)
んぜず、夫人や
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
ちょうど、末弘が私の言葉で言えば「着々、漫才に転向中」のときで、そして相棒に選んだドサ貫が転向を
肯
(
がえ
)
んじないので弱っているときだったので、その末弘とぽんたんが新しいコンビをつくった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
知力よりもさらに明敏な、意志よりもさらに強い、死ぬことを
肯
(
がえ
)
んじない生きんとする本能があった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そして人間の個性に宿った本能即ち愛が如何なる要求を持つかを
肯
(
がえ
)
んじた。そして更に又動物に現われる本能が無自覚的で、人間に現われる本能が自覚的であるのを区別した。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ところが岩蔵はそれを
肯
(
がえ
)
んじなかった。なにしろこの怪博士邸内には、常規では到底考えられないような怪しい生物などが飼ってある。それを今、村人に知らせるのには反対だ。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その母性的の博愛を誰も男一人で独占することは出来ません。わたくしがもしそれを
肯
(
がえ
)
んじても、直ぐ相手の男に飽きられるか、自らあくがれ出て、その博愛を多くの男に振り撒く性だと言います。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
数右衛門は、
肯
(
がえ
)
んじない。
濞かみ浪人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕の心は水が低いところに流れて行くような自然さをもって僕のしようとするところを
肯
(
がえ
)
んじている。全く僕は蟄虫が春光に遇っておもむろに眼を開くような
悦
(
よろこ
)
ばしい気持ちでいることができる。
片信
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
お十夜が、
肯
(
がえ
)
んぜない。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
肯
常用漢字
中学
部首:⾁
8画
“肯”を含む語句
首肯
肯分
肯定
肯入
肯綮
北爾肯州
受肯
弁肯
御肯入
御首肯
肯定者
肯諾
肯首
首肯点頭