羅宇らう)” の例文
そして、持っていた煙管パイプ羅宇らうで燻っている洋灯の心を直しながら(もう夜になっていたので、)再びその煙管を口へ持って行った。
南は新しい長裾ざんさいを濡らしては困ると思った。南は鞭の代りに持っている羅宇らうの長い煙管きせるを驢に加えた。其処は晋陽しんようの郊外であった。
竇氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ふと見ると、屏風の蔭に、友禅の小蒲団をかけて、枕元に、朱羅宇らうのきせるを寄せ、黒八を掛けた丹前にくるまって居た男がある。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
神尾主膳は、同じ家の唐歌からうたという遊女の部屋に納まって、太夫たゆう禿かむろとをはんべらせて、あか羅宇らうの長い煙管きせるで煙草をふかしていると、あわただしく
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「と、とんでもございません。私はただの羅宇らうなおしの作爺さくじいで、お歴々の前に、身分を明かすなんのと、そんな——」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
やしろの裏手で崖の中段にちょろ/\煙管きせる羅宇らうから出る様な清水が溜って、月が映っている、あに彼処あすこの水はうめえな
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
煙脂やにふさがらうとして羅宇らう空隙くうげきとほしてけぶりくち滿ちるときはつんとしたいや刺戟しげきはなかんずるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
引摺廻されたり、羅宇らうのポッキリ折れたまで、そないに打擲されやして、死身しにみになって堪えなはったも、誰にした辛抱でもない、皆、美津さんのためやろな。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どういう人に成って行くかサ」とお種は更に吾子わがこのことを言出して、長い羅宇らう煙管きせる煙草たばこを吸付けた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこで、長い羅宇らうに紐を巻いて、花火筒の手軽なもののような鉄砲をつくり、中へ煙硝えんしょうめて、たがねを鉛玉の代りに撃ち出すことを考えた。——火皿などは要らない。
はっしと火鉢をうちたる勢いに、煙管の羅宇らうはぽっきと折れ、雁首がんくびは空を飛んではたとふすまを破りぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
早くも右門はその逐電先が遠方でないことを知って、なお入念に調べてみると、そのときはしなくも目についたのは長火ばちの向こうにころがっていたなまめかしい朱羅宇らうです。
瓢箪ひようたんのやうな恰好かつこうのお煙管で、さうして羅宇らうもとちよつと紙の巻いてございました」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そうして彼の意味を読もうとしたが、主人は煙管が詰ったと見えて、敬太郎の火箸ひばし雁首がんくびを掘っていた。それが済んでから羅宇らうの疎通をぷっぷっ試した上、そろそろと説明に取りかかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
魚、玩具、菓子等の固定式及び移動式の呼び売人、羅宇らう屋、靴直し、飾り立てた箱を持つ理髪人——これ等はそれぞれ異った呼び声を持っているが、中には名も知れぬ鳥の啼声みたいなのもある。
その稈は煙管きせる羅宇らうあるいは壁の骨などに使用する最も多し。すなわちメダケに次で有用の竹なり。この竹はメダケの姉妹種なれば、その花の状ほとんど全く相同じ。すなわち第五図に示すが如し。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
商売用の羅宇らうのなおし道具は、隅に押しこめられて、狭い部屋いっぱいに、鉋屑かんなくずが散らばっているんです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
狙ひは定めてある。寸毫の狂ひは無い。主人は信心に夢中で、線香の匂ひなどは氣にもしない。長い經が始まつた。丁度潮時、眞晝の鐘が鳴る頃、羅宇らうの鐵砲は鏨の玉を
かれまた煙草たばこひつけようとしては羅宇らうひゞつたのをつた。かれはくた/\につたかみたもとからさぐしてそれをつばらしてきはめて面倒めんだうにぐる/\とひゞいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
……手ン手が手本を控えて、節づけと目張めっぱりッこで、謡ばかり聞いている。夢中で浮かれ出すと、ウウウと頭をって、羅宇らうの中をやにが通るような声を出すんだからたまりゃしません。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分の孫が夏休で学校の方から帰って来たかのように、お婆さんは捨吉に話し聞かせて、長い羅宇らう煙管きせるで一服やった。このお婆さんが細君のことを話す調子には実の娘を思う親しさがこもっていた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
羅宇らうの長き煙管きせるにて国分こくぶをくゆらしいたる母は目を
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
狙いは定めてある。寸毫すんごうの狂いはない。主人は信心に夢中で、線香の匂いなどは気にもしない。長い経が始まった。ちょうど潮時、真昼の鐘が鳴るころ、羅宇らうの鉄砲は鏨の玉を
かれ煙管きせるにすることが慾念よくねんわす方法はうはふでないことをつて、かれ丁度ちやうど他人たにんたいするある憤懣ふんまんじやうからてつけに自分じぶん愛兒あいじしたゝかにゑるもののやうに羅宇らうつぶした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
羅宇屋らうやの作爺さん……上に煙管きせるを立てた、抽斗ひきだしつきの箱を背負って、街へ出る。きせるの長さは、八寸にきまっていたもので、七寸を殿中でんちゅうといった。価は八もん、長煙管の羅宇らうは、十二もん以上のさだめ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
羅宇らうが出来たけえ、……持って来たですッ。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二尺も長い羅宇らうをすげた煙管が、一本や二本はありましょう
羅宇らう真中まんなかから折れた。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二尺も長い羅宇らうをすげた煙管が、一本や二本はありませう
「その羅宇らうの鐵砲を誰が何處へ隱したんでせう、親分」