組頭くみがしら)” の例文
山口駿河は号を泉処せんしょという。当時外国奉行の首席である。函館奉行の組頭くみがしらから監察(目付)に進んだ友人の喜多村瑞見きたむらずいけんとも親しい。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
なしたり然るに此時江戸へ出訴しゆつその事組頭くみがしら出府致すべき處種々いろ/\取込とりこみのことあるにより飛脚ひきやくを村方より立ると云を九助は聞込何卒わたくしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
程なく支度を更えて、万太郎が竹の間の沓石くつぬぎへ出ると、廊下には金吾、庭先には黒鍬の組頭くみがしら小早川剛兵衛が平伏しております。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「厳秘第一、こっそりお組頭くみがしらに耳打ちしてな、足軽詰め所へ参らば水くぐりの達人がおるに相違ない。密々に旨を含めて、五、六人同道せい」
背広の男は組頭くみがしらとも見える女給を呼んでお千代を引合せると、その女給はまず酒場のうしろの三畳ばかりの室にお千代を案内して羽織や肩掛をぬがせ
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「ナニ紋太夫が参ったと。彼は元来鉄砲組の組頭くみがしらをしていた軽輩じゃ。それを左膳に取り入って今の身分になった筈じゃ。副使などとは片腹痛い!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そんなことはござんせんよ。お組頭くみがしらのお屋敷は、ここから五ちょうとは、離れちゃいないんですもの。きっと将軍のお成りが、遅れているんでしょうよ」
分かるも、分からぬも、観客けんぶつは口あんごりと心もそらに見とれて居る。平作へいさくは好かった。隣に座って居る彼が組頭くみがしら恵比寿顔えびすがおした爺さんが眼をうるまして見て居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
幸いにお支配はおいでなさいませんし、お組頭くみがしらのあなた様の御威光で、あいつらもふるえ上ってしまうことでございましょう、よいところにお気がつかれまして結構で
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
無事に使命を果たして帰った彼は、組頭くみがしらにも褒められ、かみのおぼえもめでたかった、しかし彼は決して切支丹のことを口にしなかった。彼は再び絵筆を執らなかった。
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あの方が、私の家——傳馬町二丁目の越前屋にも、大層な寳が埋めたまゝにしてあると申すのださうで、——私の家は、御存じかも知れませんが、江戸兩替屋の山の手の組頭くみがしらになつて居ります。
大番頭の下には各組頭くみがしら四人、組衆くみしゆう四十六人、与力十騎、同心二十人がゐる。京橋組、玉造組、東西大番を通算すると、上下の人数が定番二百六十四人、大番百六十二人、合計四百二十六人になる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「それは、きやつが、奥坊主の組頭くみがしらをやめてからのことだな」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
母屋もやの方へ引き返して行って見ると、上がりはなたたんだ提灯ちょうちんなぞを置き、風呂ふろをもらいながら彼を見に来ている馬籠村の組頭くみがしら庄助しょうすけもいる。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
組頭くみがしら通牒つうちょうしてあるので、組頭は当日名簿と人員をたずさえて参加する。山岡家の兄弟も、ここへ連れて来られたのであった。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後より三五郎這出はいいでて只今組頭くみがしら周藏申上しに相違なく九助儀は一文一錢の勘定も粗末は御座なく小前こまへの者共へあはれみを掛けと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
安政三年二月より蕃書取調所調役しらべやくを命ぜられ、累進して文久二年十二月同所調役組頭くみがしらとなる。元治元年六月十人組御番人。慶応二年十二月陸軍奉行並支配。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「村入」の条に書いた私共の五人組の組頭くみがしら浜田の爺さんも、今年の正月八十で亡くなりました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この一行は、しかるべき組頭くみがしらに支配されて、都合八人ばかり、測量器械をかついで歩み行く、つまり軍艦奉行の手の者が、海岸検分の職を行うべく、この地点に上陸したものでしょう。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
組頭くみがしらの屋敷で月見の宴を開いたときに、席上でかの尾白の鷲の噂が出て、おととし撃ち損じた岩下も、去年撃ち損じた深谷と矢崎も、いささか面目をうしなった形で、しきりに残念がっていると
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「すっかり見もし聞きもしたよ。組頭くみがしらへさっそく言上ごんじょうしよう」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
組頭くみがしら蔵人くらんど、それを見るといんぎんでした。
本陣、問屋をはじめ、宿役人から組頭くみがしらまで残らずそこに参集して、氏神境内の宮林みやばやしからもみの木一本を元伐もとぎりにする相談をした。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
逃げようとすれば逃げられないこともなかった厩中間うまやちゅうげんの端にいたるまで、それらの組頭くみがしらについて二十四人ことごとく戦って死んだ。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又默言と叱り付汝は何者なにものだととふにハイ組頭くみがしらで御座ります名は何と云うヘイ周藏と申しますと答ふるに理左衞門コリヤおのれにはたづねぬひかへて居れ不埓ふらちやつ白眼付にらみつける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
茶の長火鉢ながひばち妙振出みょうふりだしをせんじていた妻何心もなく取次に出て見ると、堀田原ほったわら町名主まちなぬしを案内にして仲間ちゅうげん提灯ちょうちん持たせた中年のさむらい小普請組こぶしんぐみ組頭くみがしらよりの使者と名乗って一封の書状を渡して立去る。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
組頭くみがしらからどんなに叱られるか判らない。
馬妖記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
石屋の坂を登りきったところで、平兵衛は上町の方から降りて来る笹屋ささや庄助しょうすけにあった。庄助は正直一徹な馬籠村の組頭くみがしらだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この菊池半助も、前身は伊賀いが野武士のぶしであったが、わけあって徳川家とくがわけに見いだされ、いまでは忍術組にんじゅつぐみ組頭くみがしらをつとめている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
組頭くみがしら笹屋庄助ささやしょうすけ、それから小笹屋こざさや勝七の跡を相続した勝之助の手合いだ。馬籠町内でもことに半蔵には気に入りの人たちだ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
尾州名古屋のとみの小路に御槍組頭くみがしらで七百石をおとり遊ばしていた相良勘解由様さがらかげゆさまを御主人としてつかえていた仲間ちゅうげんの九兵衛です
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは徳川家の伊賀衆隠密組いがしゅうおんみつぐみ組頭くみがしらで、かつて富士ふじ人穴城ひとあなじょうへ、じぶんが主命しゅめいでようすをさぐりにいったとき、はじめてその名を知った男だ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半蔵の挨拶あいさつだ。百姓総代ともいうべき組頭くみがしら庄助と、年寄役伊之助とは、こういう時に半蔵が力と頼む人たちだったのだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わたしは山村様のお屋敷にいる人たちから、神奈川奉行の組頭くみがしらつかまえられた話を聞いて来ましたよ。どうして、君、これは聞き捨てにならない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
庭を駈け出した源次郎は、やがて黒鍬の組頭くみがしら剛兵衛を連れて戻って来ました。時ならぬ場所で、不意のお召に、剛兵衛は何事かと、吉宗の前にひざまずき
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
組頭くみがしら笹屋ささや庄兵衛しょうべえはじめ、五人組仲間、その他のものが新茶屋に集まったのは、この人の帰国を迎えるためであった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
武者たちは、顔見あわせて、かれの弁舌に、ふと、誘惑ゆうわくをおぼえた様子だったが、組頭くみがしらかと見える男は、突然、かれの縄目なわめを自分の手に持ち直して、どなりつけた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
問屋の九太夫くだゆう、年寄役の儀助ぎすけ、同役の新七、同じく与次衛門よじえもん、これらの宿役人仲間から組頭くみがしらのものはおろか、ほとんど村じゅう総がかりで事に当たった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
組頭くみがしらの耳に入らぬ程度のささやきや笑い声はそのゆとりを現わしている。中で一名、腹痛を訴えている兵があった。出陣早々もう病苦を訴えるのは何事だと同僚たちがとがめつつも励ますと
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時の親戚請人しんせきうけにんには栄吉、保証人は峠の旧組頭くみがしら平兵衛である。相変わらず半蔵のもとへ手伝いにかよって来る清助からおまんはくわしいことを聞き知った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「しずかにせい。さっきそのほうがおれをたすけてくれた返礼に、こんどはきさまを救ってやる。徳川家へまいれば伊賀衆いがしゅう組頭くみがしら、いくらでも取り立ててやるから一しょについてくるがいい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五月中旬から六月上旬へかけて、半蔵は峠村の組頭くみがしら平兵衛へいべえを供に連れ、名古屋より伊勢いせ、京都への旅に出た。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
守将の奥村助右衛門おくむらすけえもんの日ごろの仁愛と今日の明確な決意が、烈しい叱咤しったや激励をともなわなくても、よく各部の組頭くみがしらたちから士卒にまで、みわたっているためともいえようが、もっと大きな力が
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
組頭くみがしら廃止後も峠のおかしらで通る平兵衛は二月にはいって、寒いかわき切った日の夕方に左衛門町の宿へ着いた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
組頭くみがしらの声に、松平方の鉄砲もみな折敷おりしいた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)