祖父ぢい)” の例文
「つまりほら、家のお祖父ぢいさんはあんなに若かつたのだとか家のお祖母ばあさんはあんなに美しかつたのだと話される時が来ると云ふんだ。」
静物 (新字旧仮名) / 十一谷義三郎(著)
祖父ぢいさまが恋をしてゐるさうだ。本当かどうか、訊いてみようぢやないか」「本当だつたら、老の慰めに叶へさせてあげようぢやないか」
枕物狂 (新字旧仮名) / 川田順(著)
其中に、一円の金貨が六ツか八ツも有升ありましたがお祖父ぢいさまはやがて其ひとつをとりいだして麗々とわたしの手のひらのせくださつた時、矢張冗談じようだんかと思ひました。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
小さい者が大きくなるとき、年とつた者はこの世からほろびてゆく。栄蔵のお祖父ぢいさん、お祖母ばあさんは死んでしまつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
祖父ぢいさんやお祖母ばあさんは、もうとつくになくなつてしまひました。お父さんも、もうだいぶ年よりになりました。
湖水の鐘 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
たとえば、今生きていて、そしてその子供がもう子供を持ってる、という、お祖父ぢいさん級の人間だ。
我等は遂に世間と戰ふべき身なり、祖父ぢいなき後は何處にゆきても人の心はつれなければ、夢いさゝかも他人に心をゆるさず、人我れにつらからば我れも人につらくなして
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「おれがお前の親父おやぢだ、祖父ぢいだ、家を出た日には、まだ若かつた、今日は年寄つたリツプ、フアン、ヰンクルだ。まあ此多人数のなかに、誰もおれを見覚えた人はないか、」
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
祖父ぢい樣は被蔽おつかぶせて、「それなら、もう止せ、止せ! 幾ら捕へて來たツて、螢といふ奴は、露を吸ツてきてゐる蟲だから、あすの朝日が出ると、みんな消えてしまうのだ。」
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「お前の祖父ぢいの峰太郎はお前の親父の峰之助に殺され、峰之助は牢死したといふでは無いか」
なんと、お祖父ぢいさん、情無なさけななかとなったではござらぬか、あさからばんまで流行りうかう仕入𢌞しいれまはって
祖父ぢいさんやお祖母ばあさんが、たまにゆつくりお守をさせてくれつていふんだね。わしも孫の顔を早く見たいが、なにしろ、あの息子が嫁を貰ふまでにや、まだ大分暇がかかる。
五月晴れ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
祖父ぢいさんの咄で、お祖父ぢいさんのお祖父さんが此淵ここへ沈んだ時は三日たつても死骸が上らず、とりはひつた番頭まで出られなくなつて、しまひには如何どうとかして擔ぎげたと聞いた。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
祖父ぢい祖母ばあも四五年前に死んで、お定を頭に男児二人、家族といつては其丈で、長男の定吉は、年こそまだ十七であるけれども、身体から働振から、もう立派に一人ひとり前の若者である。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼の後のふすまが、けたたましく開放あけはなされなかつたら、さうして「お祖父ぢい様唯今。」と云ふ声と共に、柔かい小さな手が、彼のくびへ抱きつかなかつたら、彼は恐らくこの憂欝いううつな気分の中に
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
丁度自分の祖父ぢいさんか、父親おやぢかが、山を売りはたを売り、桐の木を売り、釣つた鯰を売つて儲けた金をそつくり大原氏に預けて置きでもしたやうに、お礼一つ言はないで、平気で貰つて帰る。
今は半分盲目めくらのその子の祖父ぢいに仕へて羨しいほど仲睦じく暮して居るといふ。自分はその子を抱いてみた。割合ませた口を利く。なるほど見れば見るほど氣味のわるいまで亡き友に酷似こくじして居る。
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「いよいよお祖父ぢいさんになるんだよ。」と云つた。
父を売る子 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
一平は、お祖父ぢいさんの一助に、たいへん孝行です。
木曽の一平 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
『お祖父ぢいさんのきな惠那山ゑなやま奈何どんなでせう。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
祖父ぢいさまは此時冗談じようだん半分に革の大きい金入れを出し、中をあちらこちらとかへして見て居られました。さうして
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
私はお祖父ぢいさんに何と言つて叱られて出て來たと思つておくれかい。それもお祖父さんも私も、まさかこんな非度い怪我だらうとは思はないでの話だよ。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
栄蔵はお祖父ぢいさんやお祖母ばあさんや、若いお父さんお母さんに可愛かはいがられて成長した。四つになり五つになる。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
ほんに替り目で陽気が悪いけれど太郎たろさんは何時いつ悪戯おいたをしてゐますか、何故なぜに今夜は連れておいででない、お祖父ぢいさんも恋しがつてお出なされた物をと言はれて、又今更にうら悲しく
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ええと——お祖父ぢい様はね。今にもつとえらくなりますからね。」
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
家康の祖父ぢいさんだけにこんな事にもしみつたれだつたと見える。
その花の向うに、お祖父ぢいさまの水晶の御殿があるのです。水晶だから壁もすつかりすきとほつて、中に何千となくならんでゐる部屋/″\が一と目に見えます。
湖水の鐘 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
其中そのうち祖父ぢいさまがすりものの上へ筆の先で一寸ちよつと蚯蚓みみずよぢれたやうなものをおかきなすつたが見えましたから、不思議で/\、黙つて居ようと思つても、らへ切れませんで、ツイ
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
また、あるときは、お祖父ぢいさんの耳の中に、毛が生えてゐることを克巳が見つけて
(新字旧仮名) / 新美南吉(著)
ほんにかは陽氣ようきわるいけれど太郎たろさんは何時いつ惡戯おいたをしてますか、何故なぜ今夜こんやれておいででない、お祖父ぢいさんもこひしがつておいでなされたものをとはれて、また今更いまさらにうらかなしく
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたしは父さまと一しよにいつて、お祖父ぢいさまを見て来たい。」と言ひました。猟人は
星の女 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
母はさつきから、お祖父ぢいさんへ出す手紙を書いてゐる。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)