もり)” の例文
その日の夕飯には、義雄の家族、二人の親戚、泉太や繁まで一緒に食卓に就いた。岸本が帰国の祝いとして、生蕎麦きそばもり二つずつ出た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その上、病人たちは殆んど何も食べないので、口もずつと少なくなつてゐた。私たちの朝の御飯のお鉢はもりがよくなつた。
兄さんは自分でしゃもじを取って、飯をてこもりにもり上げました。それからその茶碗をぜんの上に置いたまま、はしらずに私に問いかけるのです。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なだ銘酒めいしゆ白鶴はくつるを、白鶴はくかくみ、いろざかりをいろもりむ。娘盛むすめざかり娘盛むすめもりだと、おじやうさんのおしやくにきこえる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それで一時もり返したねつも今は又すつかりさめきつて、それは空しくおし入のおくでほこりにまみれてゐる。
婆やは、高調子なお初の声の下からそう答えて、小皿もりなぞを並べ立てた膳をはこんで来るのだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
砂糖水をもりたる硝盃こっぷ其儘そのまゝにして又其横手には昨日の毎夕新聞一枚とほか寸燐まっちの箱一個あり、小棚の隅に置きたる燭台は其蝋燭既に燃尽もえつくせしかど定めし此犯罪を照したるものならん
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「病気はうだい。」「四五日でなほつて仕舞しまつた。」「さう早起はやおきなんかしてもり返しはしないかい。」「大丈夫だ、今日けふは徳永が君達の行つてる画室アトリエを観せると云つたから六時に起きたよ。」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
近年は湯銭の五銭に対して蕎麦のもりかけは十銭という倍額になった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
をれしところちからよわりきれる事あり、是故このゆゑに上品の糸をあつかふ所はつよ火気くわき近付ちかづけず、時によりるにおくれて二月のなかばにいたり、暖気だんきを得て雪中の湿気しつきうすき時は大なるはちやうの物に雪をもりはたまえおき
さらもり彼の藥をお熊が手より入れて又七の前へ持來もちきたり是は母樣はゝさまよりお前に上んとて新場より取寄とりよせうをなればおあがさるべしと一年餘のあひだはじめてお熊の口より又七へ物云ものいひければ又七は喜び直樣すぐさまめし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
丘のごともり上る尻をかつ/″\も支へて立てる足の短かさ
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
その時分じぶん蕎麥そばふにしても、もりかけが八りんたねものが二せんりんであつた。牛肉ぎうにく普通なみ一人前いちにんまへせんでロースは六せんであつた。寄席よせは三せんか四せんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さて御馳走ごちそうだが、そのばんは、ますのフライ、若生蕈わかおひたけとなふる、焼麩やきふたのを、てんこもりわん
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その時分は蕎麦そばを食うにしても、もりかけが八厘、たねものが二銭五厘であった。牛肉は普通なみ一人前いちにんまえ四銭で、ロースは六銭であった。寄席よせは三銭か四銭であった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よし、と打込うちこんで、ぐら/\とえるところを、めい/\もりに、フツフといて、」
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「何、それにゃ及ばんから、御贔屓ごひいき分にもりく、ね。」
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)