珍事ちんじ)” の例文
大喝一声だいかついっせい、金博士は相手のあごをぐわーンと一撃やっつけた。とたんにあたりは大洪水だいこうずいとなったという暁の珍事ちんじであった。
その年うるう五月五日、咸臨丸かんりんまる無事ぶじ帰朝きちょうし、かん浦賀うらがたっするや、予が家の老僕ろうぼくむかいきたりし時、先生老僕ろうぼくに向い、吾輩わがはい留守中るすちゅう江戸において何か珍事ちんじはなきやと。
なにしろ会場における不満連ふまんれんの総大将けん黒幕くろまくとしてはルーズヴェルト氏みずか采配さいはいを取っているという始末しまつであるから、我々の考えでは珍事ちんじなしには終らぬと気遣きづかったのも
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
長屋の者の一同は捨置難すておきがたき二つの珍事ちんじなかにも家主庄兵衞が殺されたるは大變たいへんなりと其のあに山田元益の許へも斯と報知しらせるに元益驚きはせ來り家内を改め見たる所ろ何一つだに紛失ふんじつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
領主 あさまだきに如何いかなる珍事ちんじ出來しゅったいしたのぢゃ、ゆめおどろかして呼出よびいだすは?
そのうら骨髓こつずいとほりてそれよりの目横めよこにかさかにか、女髮結をんなかみゆひとめらへて珍事ちんじ唯今たゞいま出來しゆつたいかほつきに、れい口車くちぐるまくる/\とやれば、この電信でんしん何處いづくまでかゝりて、一てうごと風説うはさふとりけん
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
実に今回のバッタ事件及び咄喊とっかん事件は吾々われわれ心ある職員をして、ひそかにわが校将来の前途ぜんと危惧きぐの念をいだかしむるに足る珍事ちんじでありまして、吾々職員たるものはこの際ふるって自ら省りみて
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あゝ人間にんげん運命うんめいほど不思議ふしぎものはない。この珍事ちんじのあつた翌日よくじつわたくしは、日出雄少年ひでをせうねんたゞ二人ふたりで、ながさ卅フヒートにもらぬ小端艇せうたんていゆだねて、みづそらなる大海原おほうなばらなみのまに/\たゞよつてるのであつた。
思うに当時人心じんしん激昂げきこうの際、敵軍を城下に引受ひきうけながら一戦にも及ばず、徳川三百年の政府をおだやか解散かいさんせんとするは武士道の変則へんそく古今の珍事ちんじにして、これを断行だんこうするには非常の勇気ゆうきを要すると共に
がいせし土地へは歸り難しとすゐして斯は言しなるべし忠相ぬし又も忠兵衞に打向うちむかひ此度は珍事ちんじ忽地たちまちにして斯善惡を分ちし事一は糊賣のりうりお金が親切しんせつ丁稚でつち和吉の忠義によれば和吉は此まゝ引連歸りて目を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その二には、きさき御産の行事として、御殿の棟からこしきを落す習慣があり、皇子の時は南、皇女の時は北と決まっていたが、この時には間違って北に落してしまい、慌てて落し直すという珍事ちんじがあった。