ささ)” の例文
旧字:
式場用の物のおおい、敷き物、しとねなどの端を付けさせるものなどに、故院の御代みよの初めに朝鮮人がささげたあやとか、緋金錦ひごんきとかいう織物で
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この夜は別して身をきよめ、御燈みあかしの数をささげて、災難即滅、怨敵退散おんてきたいさんの祈願をめたりしが、翌日あくるひ点燈頃ひともしごろともなれば、又来にけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
山と積まれた薪が焔々えんえんとして燃え上ると、天主にささぐる祈の声、サンタ・マリの讃歌は熱風を裂いて天にも届けと響き渡ります。
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
私は今度朝鮮に対する私の情を披瀝ひれきするために、一つの音楽会を貴方がたにささげたく思う。会は五月初旬京城において開かれるはずである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
で、三浦家みうらけではいつも社殿しゃでん修理しゅうりそのこころをくばり、またまつりでももよおされる場合ばあいには、かなら使者ししゃてて幣帛へいはくささげました。
皮肉屋のリュシアンが或愛書狂に自著の小冊子を贈った時に、その巻頭に「書斎を所有せる無学文盲なる男に本書をささぐ」
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
となると、俺の生命は、しょせん、そのブルジョアの私利私欲のためにささげることになるのか。これもいやな感じだった。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
犠牲をささげるのを正しいこととし、犠牲を献げるのを怠るごときは、神に対する甚しい非礼とし、不道とし、大悪とする。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
また、僕たちがこれから身命をささげてお守り申すべき御主人です。ハムレットさまを、もっと大事にしてあげて下さい。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
汝素祭をささぐるにはすべてを塩をもてこれに味つくべし。汝の神の契約の塩を汝の素祭に欠くことなかれ。汝そなえ物をなすにはすべて塩をそなうべし。
あたかもこれ米国水師提督ペルリ、軍艦四隻をひきい、浦賀湾に突至とっしし、国書をささげ、交親通商の期を迫るに際す。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
儲蓄ちょちくした財力を持つ限り、併せて彼らと反対の側に、彼らに多大の恩給や年金を支払うために無数の労働者がその労働価値の大部分を間接に彼らにささげている限り
クララは夢の中にありながら生れ落ちるとから神にささげられていたような不思議な自分の運命を思いやった。おそかれ早かれ生みの親を離れて行くべき身の上も考えた。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
然し彼は彼の生前に於て宇宙の那辺なへんにか落したものがある。彼は彼の生涯をささげて、天の上、地の下、火の中、水の中、糞土の中までもぐっても探し出ださねばならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
さして手柄とも存じませぬが、ほかならぬ敵将の嫡子、君前にささげるのが至当と考え、物々しゅう思し召されましたろうが、ともあれこれへ引っ立てて来た次第でございまする
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老人らはその謝礼として、めいめいの袖の下から、金やたまのたぐいを取出してささげました。
自由平等の新天新地を夢み、身をささげて人類のために尽さんとする志士である。その行為はたとえきょうに近いとも、その志はあわれむべきではないか。彼らはもと社会主義者であった。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そしてその家庭は夫婦兄弟姉妹相和して平和みなぎるの状態にあり、ことにヨブがその子の教育において誤らず、祭壇を設け自ら祭司の職を取りて子女の赦罪のため燔祭はんさいささぐる如き
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
彼はその求めに応ずるために、ただに彼女に捧呈するばかりでなく真にささげきった一つの作品を、書いてみようと決心した。それで当分のうち他のことはいっさいできなかった。
病人の肌襦袢はだじゅばんに祈祷をささげてもらった柴又だけが、脈があることを明言したのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
終りに、この一文を、同行四人の中、馬術の達人であった神田憲君の霊前れいぜんささげる。
火と氷のシャスタ山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
先達せんだつに連れてささぐる歌ごゑも
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
私は今度朝鮮に対する私の情を披瀝ひれきするために、一つの音楽会を貴方がたにささげたく思う。会は五月初旬京城において開かれるはずである。
朝鮮の友に贈る書 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
アフリカの蛮地に赴き、ど人教化と救済に一生をささげる決心を定めるまでに、シュヴァイツァーは十年の熟慮と準備を費した。
「慎みて誰にも語るな、ただ往きて己を祭司に見せモーセが命じたる物を汝のきよめのためにささげて人々に証せよ」、ということでした(一の四三、四四)。
なんじの愛する独子ひとりご、すなはちイサクをたずさへ行き、かしこの山の頂きにおいて、イサクを燔祭はんさいとしてささぐべし。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
定基は三河の守である、式には勿論あずかったのである。ただ其の生贄をささげるというのは、野猪いのししを生けながら神前に引据えて、男共が情も無くおろしたのであった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……科学のために一身をささげようとするものに何んという不覚なことだ。昔から学者の生活が世の常の立場から見て、淋しく暗らいものであるのは知れきったことだ。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そは汝らが我につきて言述いいのべたる所はわがしもべヨブの言いたる事の如く正しからざればなり、されば汝ら牡牛おうし七頭、牡羊おひつじ七頭を取りてわが僕ヨブに至り汝らの身のために燔祭はんさいささげよ
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
生命いのちの代りに生髪を鎮守の神にささげる誓いを立てたというので、本復した銀子の髪の一束を持って行ってしまったので、恥ずかしいくらい頭が寂しかったが、それよりも湯からあがると
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
わたしたちの宿舎のとなりに老子ろうしの廟があって、滞留の間にあたかもその祭日に逢った。雨も幸いに小歇こやみになったので、泥濘でいねいの路を踏んで香をささげに来る者も多い。縁日商人も店をならべている。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
工兵たちは、巨大な一本の炭と化した銀杏の樹に万歳の声をささげた。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かえって創造的合成の効果をささげている。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
少くとも私はこの悦びに向って不断の努力をささげよう。私は悪が善にちおおせるとは思わない。私は人間の深さを信じ、真理の力を信じている。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
十字架を編み込んだ美しい帯を作ってささげようと一心に、日課も何もそっちのけにして、指の先がささくれるまで編み針を動かした可憐かれんな少女も、その幻想の中に現われ出た。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
彼れラランドは一生涯を天体観察にささげた人であるが、彼は言うた「余の望遠鏡に神のうつりし事なし、故に神は在る者にあらず」と。現今いわゆるキリスト教国の科学は大抵たいていは無神論の味方である。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
少くとも私はこの悦びに向って不断の努力をささげよう。私は悪が善にちおおせるとは思わない。私は人間の深さを信じ、真理の力を信じている。
朝鮮の友に贈る書 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
瀬古 (沢本と戸部にチョコレットを食いかかせながら)最後の一片はもちろん僕たちの守護女神ともちゃんにささげるのさ。僕はなんという幻滅の悲哀を味わわねばならないんだ。
ドモ又の死 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
用は主へのささげ物、愛は器への贈物、この二つの交わりの中で、工藝の美が育てられる。器の美は人への奉仕に種かれ、人からの情愛に実を結ぶ。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)