もゆ)” の例文
此地火一に陰火いんくわといふ。かの如法寺村によほふじむらの陰火も微風すこしのかぜいづるに発燭つけぎの火をかざせば風気ふうきおうじてもゆる、陽火やうくわざればもえず。
もゆるよろこびよ。そのひびき空気をつんざく。神経は破れて死ぬべくも覚えつゝ、いかにせん、又生きんとする願ひになやむ。
徐大盡じよだいじん眞前まつさきに、ぞろ/\とはひると、くらむやうな一面いちめんはじ緋葉もみぢもゆるがごとなかに、紺青こんじやうみづあつて、鴛鴦をしどりがする/\と白銀しろがねながしてうかぶ。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
林は全く黄葉きばみ、蔦紅葉つたもみぢは、真紅しんくに染り、霧起る時はかすみへだてて花を見るが如く、日光直射する時は露を帯びたる葉毎に幾千万の真珠碧玉を連らねて全山もゆるかと思はれた。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
狂ひ出でんずる息をきびしく閉ぢて、もゆるばかりにいかれるまなこは放たず名刺を見入りたりしが、さしも内なる千万無量の思をつつめる一点の涙は不覚にまろでぬ。こは怪しと思ひつつも婆は
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
余はただ心の中にもゆ思念おもいに強いられ止むを得ず筆を執ったのである。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
もゆしたたり
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
此地火一に陰火いんくわといふ。かの如法寺村によほふじむらの陰火も微風すこしのかぜいづるに発燭つけぎの火をかざせば風気ふうきおうじてもゆる、陽火やうくわざればもえず。
満面にもゆるがごとき怒気を含んで、頂の方を仰ぎながら、靴音を沈めて、石段をじて、松のこずえに隠れたのがあった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
地平線の上にかいなを長くさしのべなば、われはもゆるかの土と紅色くれない石榴ざくろとに触れもやせん。金光きんこう燦爛さんらんたる国土かな。鳥飛ばず、曇りもえせず、色もあせざる空の下。
と声をかけて、と見るとこれが音に聞えた、もゆるような朱の唇、ものいいたさを先んじられて紅梅の花ゆらぐよう。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此書このしよの前編上のまき雪中の火といふくだりに、六日町の(魚沼郡)西の山手に地中ちちゆうより火のもゆる事をしるせしが、地獄谷の火の㕝をもらせしゆゑこゝにしるす。
今秋不思議にも災禍をまぬかれたわがの庭に冬は早くも音ずれた。筆をいてたまたま窓外を見れば半庭の斜陽に、熟したる梔子もゆるが如く、人の来って摘むのを待っている……。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
此書このしよの前編上のまき雪中の火といふくだりに、六日町の(魚沼郡)西の山手に地中ちちゆうより火のもゆる事をしるせしが、地獄谷の火の㕝をもらせしゆゑこゝにしるす。
迎うるごとく、送るがごとく、窓にもゆるがごとく見えめた妙義の錦葉もみじと、蒼空あおぞらの雲のちらちらと白いのも、ために、べに白粉おしろいよそおいを助けるがごとくであった。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もゆる氷塊。凍るほのお
火燧ひうちをもて発燭つけぎに火をてんこゝろみに池中になげいれしに、池中ちちゆう火をいだせし事庭燎にはびのごとし。水上に火もゆるは妙法寺村の火よりも也として駅中えきちゆうの人々きたりてこれをる。
むこうなる、海のおもにむらむらとはびこった、鼠色の濃き雲は、彼処かしこ一座の山を包んで、まだれやらぬ朝靄あさもやにて、ものすさまじく空にひひって、ほのおつらなってもゆるがごときは、やがて九十度を越えんずる
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
上より自在じざいをさげ、此火に酒のかんをなしあるひはちやせんじ、夜は燈火ともしびとす。さてつら/\此火を視るに、つゝをはなるゝこと一寸ばかりの上にもゆる、扇にあふげば陽火やうくわのごとくにきゆる。