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漆喰
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しっくい
ふりがな文庫
“
漆喰
(
しっくい
)” の例文
漆喰
(
しっくい
)
の割目から生え伸びているほどで、屋根は傾き塗料は剥げ、
雨樋
(
あまどい
)
は壊れ落ちて、
蛇腹
(
じゃばら
)
や破風は、海燕の巣で一面に覆われていた。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
これを巡ると、大宮口から吉田口に到るまでの間に殊に多く灰青色の堅緻なる熔岩流があり、
漆喰
(
しっくい
)
で固めたように山を縦に走っている。
高山の雪
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
なぜといって、壁はレンガだけでなくて、室内の側には、レンガの上から
漆喰
(
しっくい
)
が塗ってありますし、また、板の腰張りがあります。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
一片の
漆喰
(
しっくい
)
が流れの中に落ちて、数歩の所に水をはね上げたので、ジャン・ヴァルジャンは頭の上の丸天井に弾があたったのを知った。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
奉納の
生
(
いき
)
人形や細工物もいろいろありましたが、その中でも
漆喰
(
しっくい
)
細工の牛や兎の作り物が評判になって、女子供は争って見物に行きました。
半七捕物帳:56 河豚太鼓
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
外まはりの
漆喰
(
しっくい
)
は青ずんで、ところどころ
剥
(
は
)
げ落ちてゐる。ポーチを支へてゐる石の円柱も、風雨にさらされて黒ずんでゐる。
夜の鳥
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
昔の
煉瓦建
(
れんがだ
)
てをそのまま改造したと思われる
漆喰
(
しっくい
)
塗りの
頑丈
(
がんじょう
)
な、
角
(
かど
)
地面の一構えに来て、
煌々
(
こうこう
)
と明るい入り口の前に車夫が
梶棒
(
かじぼう
)
を降ろすと
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
この部屋に酔って寝ている東作を麻酔させておいて、軒下の
漆喰
(
しっくい
)
伝いに足袋でも穿いて玄関へまわれば、足音も聞えず、足跡も残りませぬ。
S岬西洋婦人絞殺事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ところが庭は板石といったところで
漆喰
(
しっくい
)
みたようなものですからじめじめ湿って居りますからそのバタの腐敗した臭いが堂内に満ちて居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
壁は煉瓦で出来ていたが、もともとあまり上等な家ではなく、不器用に煉瓦をそっと積み上げて、その上に
漆喰
(
しっくい
)
を塗ったような建物であった。
満洲通信
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
これはかなりの広さの町で、石と
漆喰
(
しっくい
)
で出来たらしい建物が多い。背後には灌漑の行き届いているらしい豊かな牧場がある。
鎖国:日本の悲劇
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
泥溝の水面には真黒な泡がぶくりぶくりと上っていた。その泥溝を包んだ
漆喰
(
しっくい
)
の
剥
(
は
)
げかかった横腹で、青みどろが静に水面の油を
舐
(
な
)
めていた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ま新しい
漆喰
(
しっくい
)
が雨に打たれて、壁からはげ落ちるのと同じだった。彼はなお信じつづけてはいた。しかし彼の周囲には神が死にかかっていた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それも名だたる彫刻家の業なら別ですが、実に平凡な
漆喰
(
しっくい
)
屋が、いとも平易に作り上げてしまうのですから一層の驚異です。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
仏さまの頭へ笊を植えるなどは甚だ滑稽でありますが、これならば
漆喰
(
しっくい
)
の噛り付きもよく、案としては名案でありました。
佐竹の原へ大仏をこしらえたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
それから、寝床へはいり、
湿
(
しめ
)
った
漆喰
(
しっくい
)
のところどころにできた
水脹
(
みずぶく
)
れを見つめながら、彼は、自分の意見を
推
(
お
)
し進める。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
漆喰
(
しっくい
)
の土間の
隅
(
すみ
)
には古ぼけたビクターの蓄音器が据えてあって、磨り滅ったダンスレコードが暑苦しく鳴っていた。
ある崖上の感情
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
ここの
漆喰
(
しっくい
)
だけはだいたい火の力に耐えていたが、——この事実を私は最近そこを塗り換えたからだろうと思った。
黒猫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
……『
雁鍋
(
がんなべ
)
』の屋根に飛んでいた
漆喰
(
しっくい
)
細工の雁のむれを、不忍から忍川の落込む
際
(
きわ
)
の「どん/\」の水の響きを、ああ、われわれはいまどこにもとめよう。
上野界隈
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
筵
(
むしろ
)
やら、空箱やらを取除けた跡に、
漆喰
(
しっくい
)
で固め、角材を組んでその上に幅二尺、長さ四尺、高さ三尺ほどの
御影石
(
みかげいし
)
の唐櫃——三寸ほどの短い足の付いたのを
銭形平次捕物控:127 弥惣の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それは
漆喰
(
しっくい
)
で固めてあるらしく、
滑々
(
すべすべ
)
した表面を持っていたが、果然指先に、壁の面から飛びだした固いものを探りあてた。それは小さいスイッチであった。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
天国にあるその恋人の神聖な幻にでもね。こんな、
漆喰
(
しっくい
)
の人形のような女のむくろなんぞにささげられべき
質
(
たち
)
のものではないわ。あたしちゃんと知っててよ。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
町の北寄りのヘンリ
通
(
ストリート
)
に立つ木造の二階家で、ウォシントン・アーヴィングは、小さなみすぼらしい
漆喰
(
しっくい
)
塗の木造の建物で、いかにも天才の巣ごもりの場所らしく
シェイクスピアの郷里
(新字新仮名)
/
野上豊一郎
(著)
それを彼は四方の壁や、剥げ落ちた
漆喰
(
しっくい
)
や、庭に転がっている
煉瓦
(
れんが
)
や
陶瓦
(
タイル
)
の
破片
(
かけら
)
の上に読んだのだ。家屋と庭園の一切の歴史は、それらのものの上に記されていた。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
「作ってからまだ間がないらしいよ、その証拠に、
漆喰
(
しっくい
)
がまだ乾ききっていないところもあったもの」
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
剥
(
は
)
げかかった
漆喰
(
しっくい
)
の壁に向ってじっと
横臥
(
おうが
)
していると、眼の前を小さな虫のような影がとびちがう。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
それらの建物は概して木造でありペンキが塗られていたり、
漆喰
(
しっくい
)
であったりして少しも欧洲の古い建築の如き永久的な存在の感じを起させない処の建物ばかりである。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
小手垣味文が
漆喰
(
しっくい
)
細工の村越滄洲、
鏝
(
こて
)
先で朝野名士の似顔額面数十枚を作って展覧会を催したり、東両国中村楼大広間の大天井を杉板
紛
(
まが
)
いに塗り上げて評判の細工人。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
コチョコチョと石を積上げた
築山
(
つきやま
)
をつくり、風入れや、日光をわざと
遮
(
さえぎ
)
ってしまって、
漆喰
(
しっくい
)
の池に金魚を入れ、夏は、
硝子
(
ガラス
)
の管で吹きあげる噴水のおもちゃを釣るした。
旧聞日本橋:23 鉄くそぶとり(続旧聞日本橋・その二)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
南アメリカの一部では土人のみか白人までも病的に土を
嗜
(
たしな
)
み、子供などは夜中に壁の泥や
漆喰
(
しっくい
)
を剥がして食うから、それを制するため仮面を着せて寝かせるそうである。
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
見ると
漆喰
(
しっくい
)
で叩き上げた二坪ほどの土間に、例の車屋の
神
(
かみ
)
さんが立ちながら、
御飯焚
(
ごはんた
)
きと車夫を相手にしきりに何か弁じている。こいつは
剣呑
(
けんのん
)
だと
水桶
(
みずおけ
)
の裏へかくれる。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
変ったものといえば浅い木箱に入った
油土
(
パテ
)
と
漆喰
(
しっくい
)
土だけである。しかしそれもすぐ判った。勝手口の扉の傍の壁が二合ほど剥げ落ち、それを塗り直した壁土の余りである。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それ等は煉瓦と
漆喰
(
しっくい
)
との単一の密実な塊である。竈は一端で開き、相互に穴で通じている。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
一里四方の城壁で、
漆喰
(
しっくい
)
と
煉瓦
(
れんが
)
と
瀝青
(
チャン
)
とをもって、堅固に造られているのである。高さおおかた五十尺、その厚さに至っては十人の男が肩を並べて自由に歩けるほどであった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
灰色の瓦を
漆喰
(
しっくい
)
で塗り込んで、碁盤の目のようにした壁の所々に、腕の太さの木を竪に並べて
嵌
(
は
)
めた窓の明いている、
藤堂
(
とうどう
)
屋敷の門長屋が寄宿舎になっていて、学生はその中で
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
共同水道場の
漆喰
(
しっくい
)
の上を跣足のままペタペタと
踏
(
ふ
)
んで、ああええ気持やわ。それが年ごろになっても止まぬので、無口な父親もさすがに冷えるぜエと、たしなめたが、聴かなんだ。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
無闇に間口ばかり広い二階
建
(
だて
)
で、一階の外壁は
漆喰
(
しっくい
)
も塗らないで赤黒い煉瓦が
剥
(
む
)
き出しになっているが、もともと汚ならしい煉瓦が烈しい天候の変化に逢って一層くろずんでいる。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
見渡すと、女の人数だけずらりと並んだ鏡台と鏡台との間からはわずかに
漆喰
(
しっくい
)
の
剥落
(
はげお
)
ちた壁が現れていてその面には
後
(
あと
)
から後からと、
重
(
かさな
)
って書き添えられたいたずら書のさまざま。
勲章
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そこは壊れた敷石の所々に、水溜りの出来ている
見窄
(
みすぼ
)
らしい
家並
(
やなみ
)
のつゞいた町であった。玄関の
円柱
(
はしら
)
に塗った
漆喰
(
しっくい
)
が醜く
剥
(
はが
)
れている家や、壁に大きな
亀裂
(
ひび
)
のいっている家もあった。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
彼の考がここまで漂流して来た時、俊助は
何気
(
なにげ
)
なく頭を
擡
(
もた
)
げた。擡げると彼の眼の前には、第八番教室の古色蒼然たる玄関が、霧のごとく降る雨の中に、
漆喰
(
しっくい
)
の
剥
(
は
)
げた壁を濡らしていた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
外廻
(
そとまわ
)
りは白い
漆喰
(
しっくい
)
ぬりで、
瓦
(
かわら
)
ぶきの屋根に
剥
(
は
)
げっちょろけの煙突を立てているその家は、現在の主人の祖父や曾祖父が植えこんだ桑やアカシヤやポプラの緑のなかに、すっぽり埋まっていた。
嫁入り支度
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
そして、正面入口の破風の
漆喰
(
しっくい
)
に波にたわむれる人魚の絵がかいてある建物の三階へあがっていった。この建物にはエレベーターがあったらしいが、いまは外囲いの網戸だけがのこっている。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼が一
軒
(
けん
)
の家をじっと見ている中に、その家は、彼の眼と頭の中で、木材と石と
煉瓦
(
れんが
)
と
漆喰
(
しっくい
)
との意味もない集合に化けてしまう。これがどうして人間の住む所でなければならぬか、判らなくなる。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
男も
漆喰
(
しっくい
)
運びの女も、こっちへやって来ると、子供の群に加わった。
墓地へゆく道
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
あいだをつないでいる
漆喰
(
しっくい
)
は五十年もたったもので、今でももっと固くなりつつあるといわれていた。しかしそういうことは人がとかく真偽をたしかめずにただいい触らしたがる口上の一つである。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
左官たちは、
漆喰
(
しっくい
)
板の泥を浴びて、板の上からころげ落ちた。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
シャンとすると、驚くべき
敏捷
(
びんしょう
)
さで、そこに置いてあった煉瓦を取り、
鏝
(
こて
)
を持ち、
漆喰
(
しっくい
)
をすくって、壁の穴へ、煉瓦を二重に積み始めた。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
脱走計画に好機を与えたのは、ちょうどその時、屋根職人らが監獄の屋根の一部を作りかえ
漆喰
(
しっくい
)
をぬりかえてることだった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
元来仏像はギリシア彫刻の影響の下にガンダーラで始まったのであるが、初期には主として石彫であって、
漆喰
(
しっくい
)
や粘土を使う塑像は少なかった。
麦積山塑像の示唆するもの
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
いやしくも
棟梁
(
とうりょう
)
といわれる大工さん、それが出来ないという話はない、
漆喰
(
しっくい
)
の塗り下で
小舞貫
(
こまいぬき
)
を切ってとんとんと打って行けば雑作もなかろう。
幕末維新懐古談:63 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
“漆喰”の解説
漆喰(しっくい、石灰、en: Plaster)とは、水酸化カルシウム(消石灰)を主成分とする建築材料。住宅様式や気候風土などに合わせて世界各地で組成が異なっており独自の発展がみられる建築材料である。
漆喰は、水酸化カルシウム・炭酸カルシウムを主成分としており、もとは「石灰」と表記されていたものであり、漆喰の字は当て字が定着したものである。
(出典:Wikipedia)
漆
常用漢字
中学
部首:⽔
14画
喰
漢検準1級
部首:⼝
12画
“漆喰”で始まる語句
漆喰細工
漆喰壁
漆喰工事
漆喰地
漆喰場
漆喰塗
漆喰建
漆喰造
漆喰下地