もれ)” の例文
盗人ぬすびと足痕あしあとを犬のように探れない鼻で実際香が嗅げようか、舌にしてもその例にもれない、触感も至って不完全なもので
大きな怪物 (新字新仮名) / 平井金三(著)
されば竹にさへづ舌切雀したきりすゞめ、月に住むうさぎ手柄てがらいづれかはなしもれざらむ、力をも入れずしておとがひのかけがねをはづさせ、高き華魁おいらんの顔をやはらぐるもこれなり。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのとき問答もんどう全部ぜんぶをここでおつたえするわけにもまいりねますが、ただあなたがた御参考ごさんこうになりそうな個所ところは、るべくもれなくひろしましょう。
前夜ぜんやあめはれそら薄雲うすぐも隙間あひまから日影ひかげもれてはるものゝ梅雨つゆどきあらそはれず、天際てんさいおも雨雲あまぐもおほママかさなつてた。汽車きしや御丁寧ごていねい各驛かくえきひろつてゆく。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
光子さんの部屋からもれる、灯がぼんやりと、淡い光を漂はせてゐました。光子さんの心は、晴間の底にたゞずんでゐるかのやうに、少しも浮きたちませんでした。
(新字旧仮名) / 牧野信一(著)
けれども、「マリー・ロオジェ事件」を読まれた読者は、以上の点を除いては、文中に挙げられた大小すべての事項が遅かれ早かれもれなく、分析解剖されていることに気附かれるであろう。
不幸ふかう由來もとさとめて、ちヽこひはヽこひしの夜半よはゆめにも、かぬさくらかぜうらまぬひとりずみのねがかたくなり、つヽむにもれ素性すじやうひとしらねばこそ樣々さま/″\傳手つてもとめて、香山かやま令孃ひめくるしく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なお且つ震いおののける先のさまには引変えて、見る見る囚徒が面縛めんばくされ、射手の第一、第二弾、第三射撃のひびきとともに、囚徒が固く食いしぼれる唇をもれる鮮血の、細く、長くその胸間に垂れたるまで
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旨となしかりにもまがりし事はきらひ善は善惡は惡と一筋ひとすぢにいふ者なれば如何いかにせんみづきよければうをすまずのたとへもれず朋輩の讒言ざんげんに依り浪人なし此裏借家うらじやくやうつり住み近頃多病たびやうになりたれど心持のよき其日は此護國寺の門前へ賣卜ばいぼくに出わづかの錢を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我庵わがいほた秋の光景けしきにはもれざりける。
秋窓雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)