毛皮けがわ)” の例文
すっかりまいってしまい、あたまからすっぽり毛皮けがわのきものをかぶせられたまんま、板の寝床にのびている囚人がもう二三人もいるのです。
すこぎ、ミハイル、アウエリヤヌイチはかえらんとて立上たちあがり、玄関げんかん毛皮けがわ外套がいとう引掛ひっかけながら溜息ためいきしてうた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
だれでもあのハツカネズミをつかまえた人は、あれで大きな、大きな毛皮けがわのずきんをこしらえてもかまいませんよ。
なに左樣さうでない、このじう泥土どろと、松脂まつやにとで、毛皮けがわてつのやうにかためてるのだから、小銃せうじう彈丸たまぐらいでは容易ようゐつらぬこと出來できないのさ。』とわたくしなぐさめた。
四五 猿の経立ふったちはよく人に似て、女色を好み里の婦人を盗み去ること多し。松脂まつやにを毛にり砂をその上につけておる故、毛皮けがわよろいのごとく鉄砲のたまとおらず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かがんで靴下くつしたかわかしていたせいのひくい犬の毛皮けがわを着た農夫が、こしをのばして立ちあがりました。
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そんなに、さむくにでありましたから、みんなは、くろけもの毛皮けがわて、はたらいていました。ちょうど、そのとき、うみうえくもって、あちらは灰色はいいろにどんよりとしていました。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほうに大きな絵蝋燭えろうそくをたて、呂宋兵衛るそんべえは、中央に毛皮けがわのしとねをしき、大あぐらをかいて、美酒びしゅをついだ琥珀こはくのさかずきをあげながら、いかにも傲慢ごうまんらしい口調くちょうでいった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見れば、男の人は、しゅすの着物きものの上に、毛皮けがわをふちにつけた長いマントを着て、はね毛のかざりのついたぼうしをななめにかぶり、むねには、世にも美しいくさりをさげています。
それは、まっ白にぬってあって、なかにたれだか、そまつな白い毛皮けがわにくるまって、白いそまつなぼうしをかぶった人がのっていました。そのそりは二回ばかり、ひろばをぐるぐるまわりました。
丁度ちょうどその夕方ゆうがた、ドクトル、ハバトフはれい毛皮けがわ外套がいとうに、ふか長靴ながぐつ昨日きのう何事なにごとかったようなかおで、アンドレイ、エヒミチをその宿やど訪問たずねた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
けれども、むすめがあんまりうるさくせめたてるものですから、とうとうまま母もまけてしまって、りっぱな毛皮けがわ着物きものをぬって、それをきせてやりました。
かれが、こうぎょうてんしたせつなに、さる毛皮けがわであたまから身をかくしていた鞍馬くらまの竹童は
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは丁度ちょうど奇麗きれいに光る青いさかの上のように見えました。一人は闇の中に、ありありうかぶひょう毛皮けがわのだぶだぶの着物をつけ、一人はからすの王のように、まっ黒くなめらかによそおっていました。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かれの手がつかんだのは、やわらかいけものの毛だった。怪人はさる毛皮けがわをかぶっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれつねひさしいた丸帽まるぼうかぶって、ふか長靴ながぐつ穿ふゆには毛皮けがわ外套がいとうそとあるく。病院びょういんてよりもなく、代診だいしんのセルゲイ、セルゲイチとも、会計かいけいとも、ぐに親密しんみつになったのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
狩人かりゅうどは、オオカミの毛皮けがわをはいで、それをうちへもってかえりました。