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残骸
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ざんがい
ふりがな文庫
“
残骸
(
ざんがい
)” の例文
旧字:
殘骸
後に再び川越に
転封
(
てんぽう
)
され、そのまま幕末に遭遇した、流転の間に落ちこぼれた一藩の人々の遺骨、
残骸
(
ざんがい
)
が、草に倒れているのである。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
仕方なしにまた腰をおろした津田は、
袂
(
たもと
)
から煙草を出して火を
点
(
つ
)
けた。ふと見ると、灰皿は敷島の
残骸
(
ざんがい
)
でもういっぱいになっていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そしてやがて「最後の
檉柳
(
タマリスク
)
の
残骸
(
ざんがい
)
が塩野原に
横
(
よこた
)
わるのを後にすると、
最早
(
もはや
)
死の世界ではない。全然生を知らぬ世界」となって来た。
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
この難破船の
残骸
(
ざんがい
)
が見えたために、例によって、陰気な話がいろいろともちあがった。特にその日の暮れがたにはそうだった。
船旅
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
たとえば燃え尽くした
残骸
(
ざんがい
)
の白い灰から火が燃え出る、そうしてその火炎がだんだんに白紙や布切れに変わって行ったりする。
映画の世界像
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
夕暮になると花は
凋
(
しぼ
)
んだ。病人は黒ずんで来た草花を踏みにじって、
残骸
(
ざんがい
)
を床から拾いあげると、それを浴室へ持って行った。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
しばらく、向ふの森かげから
覗
(
のぞ
)
いてゐる焼けただれた工場の黒々とした
残骸
(
ざんがい
)
に、千恵はほうけたやうに見入つてをりました。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
光秀は
憤
(
いきどお
)
りを眼に燃やした。焼き落されて半ば破壊された大橋の
残骸
(
ざんがい
)
は、彼へむかってこういっているようにも見える。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鉄梁
(
ビーム
)
や鉄筋の
残骸
(
ざんがい
)
があり、鉄柱が
峙
(
そばだ
)
ち以前と何の変りもありません。ただ相変らず
人気
(
ひとけ
)
のない
淋
(
さび
)
しさのみが、沈々として身に迫ってくるばかりです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
五月五日一同はいかだの上に集まった、ゴルドンは
悵然
(
ちょうぜん
)
として、もはや
残骸
(
ざんがい
)
のみのサクラ号をかえりみていった。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
これもまだ克明に目に残っている。それから、彼が東京からはじめてこの新築の家へ訪ねた時も、その頃はまだ人家も
疎
(
まば
)
らで
残骸
(
ざんがい
)
はあちこちに
眺
(
なが
)
められた。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
またその道すがら横手
遥
(
はるか
)
に
幸橋
(
さいわいばし
)
の
見附
(
みつけ
)
を眺めやった
御郭
(
おくるわ
)
外
(
そと
)
の偉大なる夕暮の光景が、突然の珍らしさにふと少年時代の良心の
残骸
(
ざんがい
)
を
呼覚
(
よびさま
)
したというより
外
(
ほか
)
はあるまい。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
赤錆
(
あかさ
)
びてゆがんだ石油タンクや、打ちこわされた軍事施設が、ところどころに
残骸
(
ざんがい
)
をさらしていた。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
自分の生活の
残骸
(
ざんがい
)
を波のまにまに打ち捨てること! 芸術の夢の中へ泳ぎ逃げること!……創作すること! 彼は創作したかった……しかしもうそれができなかった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
離れたとわかってみれば、拙者も男、いたずらにたましいの抜けた
残骸
(
ざんがい
)
を抱いて快しとはせぬ。そこで、ものは相談だが、きょうかぎりキッパリと別れようではないか
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「君たちの乗ってきた乗物の
残骸
(
ざんがい
)
は、こっちの方角にあります。あの道を行って丘を二つほど越したところです。だいたいいまわれわれが立っているむこうがわになります」
宇宙の迷子
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
江戸ももはや中世的な封建制度の
残骸
(
ざんがい
)
以外になんらの希望をつなぐべきものを見いだされないために、この人たちをして過去から
反
(
そむ
)
き去るほどの堅き決意を
抱
(
いだ
)
かせたのであるか
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
すると私の眼に触れたのは、誰かが盛んに喰い荒らし、飲み荒らして行ったらしい
正宗
(
まさむね
)
の一升
壜
(
びん
)
と、西洋料理の
残骸
(
ざんがい
)
でした。そうだ、そう云えばあの灰皿にも
煙草
(
たばこ
)
の吸殻が沢山あった。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
頭から
尻尾
(
しっぽ
)
まである魚を飯の菜にすると云う事は久しくない事なので、私は与一の食べ荒らしたのまで洗うように食べた。与一は
皿
(
さら
)
の上に白く残った鰺の
残骸
(
ざんがい
)
を見て驚いたように笑った。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
これに賛せざる諸君よ、諸君は
尚
(
なお
)
かの中世の
煩瑣哲学
(
はんさてつがく
)
の
残骸
(
ざんがい
)
を
以
(
もっ
)
てこの明るく楽しく流動
止
(
や
)
まざる一千九百二十年代の人心に
臨
(
のぞ
)
まんとするのであるか。今日宗教の最大要件は簡潔である。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
私は何んだか急にそんな自分の
夢
(
ゆめ
)
の
残骸
(
ざんがい
)
のようなものを見に行くのが
厭
(
いや
)
な気がし出したので、そろそろ日が暮れかけて来たのをいい口実に、まだ山径がこれからなかなか大へんだからと言って
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
けれども愛の要求以上に外界の要求に従った人たちの建て上げたものは、愛がそれを破壊し終る力を持たない故に、いつまでもその醜い
残骸
(
ざんがい
)
をとどめて、それを打ち
壊
(
こわ
)
す愛のあらわれる時に及ぶ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
短い
梯子
(
はしご
)
を作り、階段の
残骸
(
ざんがい
)
をたよりとし、壁を
攀
(
よ
)
じ、天井に取りつき、引き戸の縁で抵抗する最後の者らを
薙
(
な
)
ぎ払いながら、戦列兵と国民兵と市民兵とが入り交じってる二十人ばかりの襲撃者は
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
自分では既に新しい相手を胸に描きながら、過ぎ去った恋の
残骸
(
ざんがい
)
と。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
決して魚類や海獣の
残骸
(
ざんがい
)
だけではなかったのだが、是が文献記録から完全に近く締め出されていたのみか、数千年の過去にわたって、ほぼ一貫した繰り返しであることすら考えてみようとした学徒は
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
はかなげな
残骸
(
ざんがい
)
を目の前にさらしたきりでした。
右門捕物帖:25 卒塔婆を祭った米びつ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
一九〇〇年に、もう一度そこへ行ってこの旧河床の地図を作り、これが昔のタリムの
残骸
(
ざんがい
)
である事を結論した。
ロプ・ノールその他
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私は
茫然
(
ぼうぜん
)
として
佇立
(
ちょりつ
)
した。なぜ私の家だけが過去の
残骸
(
ざんがい
)
のごとくに存在しているのだろう。私は心のうちで、早くそれが
崩
(
くず
)
れてしまえば好いのにと思った。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
乗組員は全部焼死して、
黒焦
(
くろこ
)
げの機械の
残骸
(
ざんがい
)
が畑の中で発見されたのであった。その重大事件には早速査問会が開かれて、先生もその一員に加えられたのである。
寺田先生の追憶:――大学卒業前後の思い出――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
道を挟んで、牡丹と相向う処に、
亜鉛
(
トタン
)
と
柿
(
こけら
)
の継はぎなのが、ともに腐れ、屋根が落ち、柱の倒れた、以前掛茶屋か、
中食
(
ちゅうじき
)
であったらしい伏屋の
残骸
(
ざんがい
)
が、
蓬
(
よもぎ
)
の
裡
(
なか
)
にのめっていた。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ふた抱えぐらいある巨木であるが、こうなるまでに、開けゆく郊外の住宅材料を積んだトラックにさんざん根元を踏まれたのであろう。下り松という風景の面影もない
残骸
(
ざんがい
)
である。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、その無気味な火もやがて燃え尽すだけ燃えると、空虚な
残骸
(
ざんがい
)
の姿となっていた。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
ブリキの石油缶や
空壜
(
あきびん
)
や板きれが、岩礁の間に漂っていた。難破船のいたましいかたみの品なのであろう。ことによると、九竜丸の
残骸
(
ざんがい
)
もその中にまじっているのかも知れなかった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
自分自身の
残骸
(
ざんがい
)
をになってる
驢馬
(
ろば
)
となって公衆の前に身をさらしていた。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
己のやくざな夢の
残骸
(
ざんがい
)
にウオタアマン・インクをぶっかけてやったら
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
口では強そうなことをいいながらも、残念なのかスパセニアも——残念そうといって悪ければ、
名残
(
なごり
)
惜しそうに工事の
残骸
(
ざんがい
)
を、見返り見返り金髪を
靡
(
なび
)
かせながら、男のように
洋袴
(
スラックス
)
の足を運んでいます。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
石斧
(
いしおの
)
をもったまま、手をヤヨイ号の
残骸
(
ざんがい
)
の方へのばし
氷河期の怪人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そうして、おしべはと見るとどこへ行ったかわからない。よく見ると子房の基底部にまっ黒くひからびた虫の
糞
(
ふん
)
のようなものがある。それが役目を果たしたおしべの
残骸
(
ざんがい
)
らしく思われる。
沓掛より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
鉄筋の
残骸
(
ざんがい
)
や崩れ墜ちた
煉瓦
(
れんが
)
や無数の破片や焼け残って天を引裂こうとする樹木は僕のすぐ眼の前にあった。世界は割れていた。割れていた、恐しく割れていた。だが、僕は探していたのだ。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
牛や豚の
残骸
(
ざんがい
)
はあれでも自然の断片である。
写生紀行
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
“残骸”の意味
《名詞》
残骸(ざんがい)
跡形も無く壊れた状態で残っている物。
戦場・災害地などに捨て置かれた死体。
(出典:Wiktionary)
“残骸”の解説
残骸
(出典:Wikipedia)
残
常用漢字
小4
部首:⽍
10画
骸
常用漢字
中学
部首:⾻
16画
“残”で始まる語句
残
残酷
残念
残余
残虐
残忍
残滓
残喘
残惜
残燈