はじ)” の例文
くれたけの根岸の里の秋けて、片里が宿の中庭の、花とりどりなる七草に、はじの紅葉も色添えて、吹く風冷やけき頃とはなりました。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
丘のすそをめぐるかやの穂は白銀しろかねのごとくひかり、その間から武蔵野むさしのにはあまり多くないはじの野生がその真紅の葉を点出てんしゅつしている。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
筑紫の、はじ木原こばら、木原には夕光ゆふかげ満ち、夕光に鷽鳥うそどり啼けり。宰府道、ここの木原に、飼鳥かひどりの、よき鷽鳥うそどりを、もつあらしも。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
崖の上のはじはもう充分に色づいて、どこからとなく聞えて来る百舌鳥もずの声が、何となく天気の続くのを告げるようである。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
徐大盡じよだいじん眞前まつさきに、ぞろ/\とはひると、くらむやうな一面いちめんはじ緋葉もみぢもゆるがごとなかに、紺青こんじやうみづあつて、鴛鴦をしどりがする/\と白銀しろがねながしてうかぶ。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
筑紫の秋は、駅路の宿とまりごとに更けて、雑木の森にははじ赤くただれ、野には稲黄色く稔り、農家の軒には、この辺の名物の柿が真紅の珠を連ねていた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
近くの丘にははじの叢が、ほのおのように紅葉し、その裾には野菊や竜胆りんどうの花が、秋の陽を浴びて咲いていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それより共に手伝ひつつ、はじの弓に鬼蔦おにづたつるをかけ、生竹なまだけく削りて矢となし、用意やがてととのひける。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
どこという確かなあてもないが、怪しい馬は水から出て来るらしいというのを頼りに、二人は多々良川に近いところに陣取って、一本の大きいはじの木を小楯こだてに忍んでいると
馬妖記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
晴れながら、とげとげしいはじの梢が、眼に痛く空を刺してゐるのさへ、何となく肌寒い。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
南支のはじの実を移入して、製蝋せいろうの法を開き、内地の夜の燈火をより明るくしたのも彼であり、海外の冶金術やきんじゅつを入れて改良を加え、いわゆる南蛮鉄の製錬せいれんもたらしたのも彼だといわれている。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
をりからはじ眞紅しんくなるが、のまゝの肌着はだぎうつりて、竹堰たけせきはぎしもく、あゝ、つめたからん。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
向う岸のはじの並木が夕日にいろどられているのを眺めながら、悠々と糸を垂れはじめた。
水鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
灘村なだむらに舟を渡さんとふなばたに腰かけて潮の来るを待つらん若者あり。背低きはじつつみの上にちて浜風に吹かれ、くれないの葉ごとに光を放つ。野末はるかに百舌鳥もずのあわただしく鳴くが聞こゆ。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
はじかえでなんどの色々に染めなしたる木立こだちうちに、柴垣結ひめぐらしたる草庵いおりあり。丸木の柱に木賊もてのきとなし。竹椽ちくえん清らかに、かけひの水も音澄みて、いかさま由緒よしある獣の棲居すみかと覚し。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
さうして青い股引をつけたはじの實採りの男が靜かに暮れゆく卵いろの梢を眺めては無言に手を動かしてゐる外には、展望の曠い平野丈に何らの見るべき變化もなく、凡てが陰鬱な光に被はれる。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
にやくねれる、こひにやなやめる、避暑ひしよころよりしていまみやこかへらざる、あこがれのひとみをなぶりて、かぜ音信おとづるともあらず、はら/\と、はじかき銀杏いてふつゝゆびしなへるは
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうして青い股引をつけたはじの実採りの男が静かに暮れてゆく卵いろの梢を眺めては無言に手を動かしてゐる外には、展望の曠い平野丈に何らの見るべき変化もなく、凡てが陰鬱な光に被はれる。
水郷柳河 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
葉がくりにいまだか青きはじの実の幼なごころよ我はゆめみし
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ふかみどりはじの木かげにつ見れば童女どうによかなし母によく似て
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はじの木にとををに白く積む雪は枝にもつめど実の房ごとに
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
日も暮れてはじの実とりのかへるころくるわの裏をゆけばかなしき
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
濁川に、向ふ河岸かしはじの實に
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
はじ實採みとりの來る日に
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)