横雲よこぐも)” の例文
五日の月が、西の山脈さんみゃくの上の黒い横雲よこぐもから、もう一ぺん顔を出して、山にしずむ前のほんのしばらくを、にぶなまりのような光で、そこらをいっぱいにしました。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
夕方は、まんまるなあかい日が、まんじりともせず悠々ゆうゆうと西に落ちて行く。横雲よこぐもが一寸一刷毛ひとはけ日の真中を横になすって、画にして見せる。最早もうはらんだ青麦あおむぎが夕風にそよぐ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一人ひとりづ目覚めて船甲板ボウトデツキを徘徊して居ると、水平線上の曙紅しよこうは乾いた朱色しゆしよくを染め、の三ぱうには薄墨うすずみ色を重ねた幾層の横雲よこぐもの上に早くも橙色オランジユいろ白金色プラチナいろの雲の峰が肩を張り
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
差渡さしわたし、いけもつとひろい、むかうのみぎはに、こんもりと一ぽんやなぎしげつて、みどりいろ際立きはだてて、背後うしろ一叢ひとむらもりがある、なか横雲よこぐもしろくたなびかせて、もう一叢ひとむら一段いちだんたかもりえる。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぼく此小學校このせうがくかうはひわづ四年前よねんぜん此學校このがくかう創立さうりつされたので、それよりさら十年前じふねんぜんのこと、正月元日しやうぐわつぐわんじつあさでした、新年しんねん初光しよくわういままさ青海原あをうなばらはてより其第一線そのだいゝつせんげ、東雲しのゝめ横雲よこぐも黄金色こんじきそま
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ときたびに、色彩いろきざんでわすれないのは、武庫川むこがはぎた生瀬なませ停車場ていしやぢやうちかく、むかあがりのこみちに、じり/\としんにほひてて咲揃さきそろつた眞晝まひる芍藥しやくやくと、横雲よこぐも眞黒まつくろに、みねさつくらかつた
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……すなはかぜこゑなみおとながれひゞき故郷こきやうおもひ、先祖代々せんぞだい/\おもひ、たゞ女房にようばうしのぶべき夜半よは音信おとづれさへ、まどのささんざ、松風まつかぜ濱松はままつぎ、豐橋とよはしすや、ときやゝるにしたがつて、横雲よこぐもそら一文字いちもんじ
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)