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ねかた
ふりがな文庫
“
根方
(
ねかた
)” の例文
片手で私の手をソッと握って、片手で扉を静かに閉めると、靴音を忍ばせつつ、向うの壁の
根方
(
ねかた
)
に横たえてある、鉄の寝台に近付いた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼が家の横なる松、今は幅広き
道路
(
みち
)
のかたわらに立ちて夏は涼しき蔭を旅人に借せど十余年の昔は沖より波寄せておりおりその
根方
(
ねかた
)
を洗いぬ。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
こんな自分勝手の理屈を考えながら、佐山君は川柳の
根方
(
ねかた
)
に腰をおろして、鼠色の
夕靄
(
ゆうもや
)
がだんだんに浮き出してくる川しもの方をゆっくりと眺めていた。
火薬庫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もうそろ/\春先きで、
逸早
(
いちはや
)
く這ひ出した蟻が、黒光りになつた臺所の大黒柱の
根方
(
ねかた
)
の穴へ歸つて行くのを見て
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
四人は杉の木の
根方
(
ねかた
)
の処に
蹲跼
(
しゃが
)
み、樹にもたれ、柵の
処
(
ところ
)
に体をおしつけてその声を聞いている。声は、木曾で聴いたのよりも、どうも澄んで朗かである。
仏法僧鳥
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
▼ もっと見る
井桁格子
(
いげたごうし
)
の浴衣に
鬱金木綿
(
うこんもめん
)
の手拭で
頬冠
(
ほおかむ
)
り。片袖で顔を蔽って象のそばから走り出そうとすると、
人気
(
ひとけ
)
のないはずの松の
根方
(
ねかた
)
から
矢庭
(
やにわ
)
に駈け出した一人。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
螢
(
ほたる
)
であった。田圃を上りきると、今度は南の空の
根方
(
ねかた
)
が赤く焼けて居る。東京程にもないが、此は横浜の
火光
(
あかり
)
であろう。村々は死んだ様に
真黒
(
まっくろ
)
に寝て居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
街道と
波打際
(
なみうちぎわ
)
との距離は、折々遠くなったり近くなったりする。
或
(
あ
)
る時は浜辺をひたひたと
浸蝕
(
しんしょく
)
する波が、もう少しで松の
根方
(
ねかた
)
を
濡
(
ぬ
)
らしそうに押し寄せて来る。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
松の
根方
(
ねかた
)
にもがいていたお綱は、転々としながらこう叫んだ。叫んだけれど声は出ない。さいぜんお十夜のために、
扱帯
(
しごき
)
を解かれて猿ぐつわをかけられていた。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
椰子の木の
根方
(
ねかた
)
をさがして、椰子の実をひろって来て、穴をあけて水をのんだ。それだけではたりない。
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
鶴見はそんなことを考えながら、庭の
草挘
(
くさむし
)
りをするついでに、石蒜の生える場所を綺麗に掃除をしておいた。
濡縁
(
ぬれえん
)
の横の
戸袋
(
とぶくろ
)
の前に南天の株が植えてある。その南天の
根方
(
ねかた
)
である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
根方
(
ねかた
)
の
処
(
ところ
)
の
土
(
つち
)
が
壊
(
くづ
)
れて
大鰻
(
おほうなぎ
)
を
捏
(
こ
)
ねたやうな
根
(
ね
)
が
幾筋
(
いくすぢ
)
ともなく
露
(
あら
)
はれた、
其
(
その
)
根
(
ね
)
から一
筋
(
すぢ
)
の
水
(
みづ
)
が
颯
(
さつ
)
と
落
(
お
)
ちて、
地
(
ぢ
)
の
上
(
うへ
)
へ
流
(
なが
)
れるのが、
取
(
と
)
つて
進
(
すゝ
)
まうとする
道
(
みち
)
の
真中
(
まんなか
)
に
流出
(
ながれだ
)
してあたりは一
面
(
めん
)
。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私たち——Aさんと、医専の二人と庄亮と私とは、その楡の
根方
(
ねかた
)
に座をしめた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
あるいは伐りしという以上は
根方
(
ねかた
)
からその柳を伐ってしまったものかとも解釈が出来るのであるが、しかし「無残に」という言葉から推すと、まだその柳は全生命を取られたのではなくって
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
湖水の岸に柳があり、その
根方
(
ねかた
)
に一人の女が、
咽
(
むせ
)
ぶがように泣いている。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
然
(
さ
)
う
斯
(
か
)
うして
居
(
ゐ
)
る
間
(
うち
)
に、
松下
(
しようか
)
南面
(
なんめん
)
の
方
(
はう
)
は
大概
(
たいがい
)
掘
(
ほ
)
り
盡
(
つく
)
して
了
(
しま
)
つた。
余
(
よ
)
は九
月
(
ぐわつ
)
二
日
(
か
)
幻翁
(
げんおう
)
佛子
(
ぶつし
)
の二
人
(
にん
)
と
共
(
とも
)
に
行
(
ゆ
)
つて、
掘
(
ほ
)
らうとしたが、
既
(
も
)
う
余
(
よ
)
の
坑
(
あな
)
は、
松
(
まつ
)
の
木
(
き
)
の
根方
(
ねかた
)
まで
喰入
(
くひい
)
つて
了
(
しま
)
つて、
進
(
すゝ
)
む
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
ぬ。
探検実記 地中の秘密:03 嶺の千鳥窪
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
手に持っていた小さい
徳利
(
とくり
)
を下に置いて、
鑿
(
のみ
)
のようなもので、しきりに杉の
根方
(
ねかた
)
を突っついていました。いいかげんに突っついてみてから、その徳利を穴へあてがってみて、また突っつき直します。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
帽子をとりあげたり、
堤
(
どて
)
の
根方
(
ねかた
)
におしつけたり、するんだよ。
病む子の祭
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
四人は杉の樹の
根方
(
ねかた
)
の処に
蹲跼
(
しやが
)
み、樹にもたれ、柵の処に体をおしつけてその声を聴いてゐる。声は、木曾で聴いたのよりも、どうも澄んで朗かである。
仏法僧鳥
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
とびっくりして、竹童をだきおこした
蔦之助
(
つたのすけ
)
は、しばらくしげしげとかれの姿をみつめていたが、やがて、松の
根方
(
ねかた
)
へ腰をおろして、心からこのおさない者に
謝罪
(
しゃざい
)
した。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
砂山が急に
崩
(
ほ
)
げて草の根で
僅
(
わずか
)
にそれを
支
(
ささ
)
え、
其
(
その
)
下
(
した
)
が
崕
(
がけ
)
のようになって
居
(
い
)
る、其
根方
(
ねかた
)
に座って両足を投げ出すと、背は
後
(
うしろ
)
の砂山に
靠
(
もた
)
れ、右の
臂
(
ひじ
)
は傍らの小高いところに
懸
(
かか
)
り、
恰度
(
ちょうど
)
ソハに
倚
(
よ
)
ったようで
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
少し端へ寄って、街道の樹の
根方
(
ねかた
)
に立ってながめていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
松の
根方
(
ねかた
)
から上をあおいで、一同がこたえを待つ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
根
常用漢字
小3
部首:⽊
10画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“根方”で始まる語句
根方地