はい)” の例文
開山の国師は、くついではだしとなった。そして法衣の袖をうしろにたくし巻いて、みずからくわり、竹の平籠ひらかごに二はいの土を盛る。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男は、ぐいぐいとながしこむようにたてつづけていくはいものみ、口のはたをてのひらでぬぐうと立ちあがって、中庭なかにわにぶらりとでていった。
うまといふやつはあの身體からださけの二はいくちいれてやるとたちまちにどろんとして駻馬かんばでもしづかる、博勞ばくらう以前いぜんはさうしてわるうまんだものである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かの酒燈一穂しゆとういつすゐ画楼簾裡ぐわろうれんり黯淡あんたんたるの処、本多子爵と予とがはいを含んで、満村を痛罵せし当時を思へば、予は今に至つておのづから肉動くの感なきを得ず。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今日まで机竜之助がはいを傾けたということは見えているが、未だ煙草をのんだという記録はなかったように思う。ここへ来てはじめて悠々と煙草をのみ出している。
宗助そうすけ樂々らく/\火鉢ひばちそば胡坐あぐらいて、大根だいこんこうものみながら湯漬ゆづけを四はいほどつゞけざまんだ。それからやく三十ぷんほどしたら御米およねがひとりでにめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なんしろ麦飯の七八はいもひっかけて居ったンだからね。酒保しゅほに飛んで行き/\したって話してました。今じゃ大きにらくになったってますよ。最早もうあと一年半でけえって来ますだよ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
お客の一人が言ひ出したので、皆はち上つてダンテの胃の腑のためにはいをあげようとした。
茶筅ちゃせんのハケ先さえバラバラに乱れ、朱盆のような顔一面酒気をみなぎらした木曽義明は、一升入りの朱塗りのはいを、片手に持って虎のように、侍女どもを睨んで吠えるのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おやおかへりかい、かへつたばかりでつかれてやうが、後生ごしやうねがひだから、井戸端ゐどばたつて水をんでておれな、それからついでにお気の毒だけれど、おとなりで二はいかりたんだから手桶てをけに二はいかへしておれな。
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
毒酒どくしゆはいに。くれなゐしよくこそともせ。まのあたり
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ヘムロックのはいを取りながら
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
はいを納め、そして配膳の係へ、食事をうながすと、各〻、大茶碗をかかえこんで、真面目に飯をたべ始めていた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一方は於呂知おろちを主将とする妓陣ぎじん、一方は白龍を将とする妓陣、二つにわかれて、はいたてとし、舌を矢として、虚々実々の婆娑羅合戦を展じたものといえなくもない。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庭には、二ヵ所の篝火かがりびがドカドカ燃え、そこに真ッ赤なつづらが二ツ、暑い覆面を解いた原士、あぐらを組んでグルリと居流れ、はいを廻して、景気のいい歓声をかせた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
謙信が、ふと述懐じゅっかいしながら、隣へはいを乞うと、上杉憲政は、甚だしく済まないような顔して
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「彼のために、加盞かさんして、大いに、祝してやろう」はいを挙げて、交驩こうかんしながら
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やめます。——はいを砕いて禁酒する!
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はいを、落して、ふいに突ッ立った。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)