春着はるぎ)” の例文
そして、くまのいがいいれたら、子供こどもにも春着はるぎってやれるし、らしもよくなるだろうし、こんないいことはないのだが。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
春着はるぎで、元日ぐわんじつあたり、たいしてひもしないのだけれど、つきとあしもとだけは、ふら/\と四五人しごにんそろつて、神樂坂かぐらざかとほりをはしやいで歩行あるく。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
寒月と、根津、上野、いけはた、神田へんを散歩。池の端の待合の前で芸者が裾模様の春着はるぎをきて羽根をついていた。衣装いしょうは美しいが顔はすこぶるまずい。何となくうちの猫に似ていた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
春の人出を見にブロオニユの森へ自動車をりもした。幾つかの大きな雑貨店マガザンはひつて女が春着はるぎの買物をする雑沓ざつたふをも観た。其れでとうとう四日よつか目の晩から寝込んで仕舞しまつた。𤍠が高い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
花紅葉はなもみぢうるはしく仕立したてむすめたちが春着はるぎ小袖こそでゑりをそろへてつまかさねて、ながめつながめさせてよろばんものを、邪魔じやまものゝあにうるさし、はやてゆけねとおもおもひはくちにこそいださね
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なにかと取上とりあげて見ると春着はるぎの芸者姿すがたをしたおいとの写真であつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
うまし、かるたくわいいそわかむねは、駒下駄こまげた撒水まきみづすべる。こひうたおもふにつけ、夕暮ゆふぐれ線路せんろさへ丸木橋まるきばし心地こゝちやすらむ。まつらす電車でんしやかぜに、春着はるぎそで引合ひきあはごころ風情ふぜいなり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「なんの、おかあさんは、お達者たっしゃでいらっしゃいますよ。昨日きのうおいでになって、東京とうきょうへいっている息子むすこ春着はるぎつくってやるのだと、反物たんものっておかえりになりました。」と、おかみさんは、げました。
真吉とお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから二人ふたり春着はるぎこと題目だいもくになつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
少年行せうねんかうまへがきがあつたとおもふ……こゝに拜借はいしやくをしたのは、紅葉先生こうえふせんせい俳句はいくである。ところが、そのつれてとある春着はるぎがおなじく先生せんせい通帳おちやうめん拜借はいしやくによつて出來できたのだからめうで、そこがはなしである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
春着はるぎにつけても、ひとつやつぽいところをおけよう。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)