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斥
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しりぞ
ふりがな文庫
“
斥
(
しりぞ
)” の例文
私はいつになく、この無二の親友の好意を
斥
(
しりぞ
)
けたのだった。いくら五ヶ年の親友だって、こればかりは打ち明けかねるというものだ。
柿色の紙風船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
火を求むる幼な児の要求を、
無下
(
むげ
)
に荒々しく
斥
(
しりぞ
)
けた女は、いきなり頭上の鉄輪を
外
(
はず
)
し、あわてて蝋燭の火をかき消してしまいました。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
子供を預けて再縁をせよと云う親の勧めや又外から降るように来る縁談を
斥
(
しりぞ
)
けて、娘を連れたまま、
向島
(
むこうじま
)
へ別居することになりました。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
改革は
一瀉千里
(
いっしゃせんり
)
の勢を以て進めり。
総
(
すべ
)
ての障碍を打破りて進めり。抵抗者は罰せられ、異論者は
斥
(
しりぞ
)
けられ、不熱心者は遠ざけらる。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
どこまでもそれに付け込んで彼女の名誉や生命にまで
関渉
(
かんしょう
)
せんとするときには、どっこい、それは
不可
(
いかん
)
と毅然としてこれを
斥
(
しりぞ
)
ける。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
▼ もっと見る
「異教徒や野蠻な人種は、そんな教へを、今も持つてゐるでせう。だけど、基督教徒や文明國の人たちは、そんなものを
斥
(
しりぞ
)
けるのよ。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「おれにそんな事ができるものか」と兄は
一口
(
ひとくち
)
に
斥
(
しりぞ
)
けた。兄の腹の中には、世の中でこれから仕事をしようという気が
充
(
み
)
ち
満
(
み
)
ちていた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「将軍様ご大病、命旦夕! ご他界は知れている! その際参殿、電光石火に、将軍様ご遺言を質として西丸様を
斥
(
しりぞ
)
け参らせ……」
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
手を
懐中
(
ふところ
)
に暖めたとあっては、
蕎麦屋
(
そばや
)
の、もり二杯の小婢の、ぼろ
前垂
(
まえだれ
)
の下に手首を突込むのと軌を一にする、と云って
斥
(
しりぞ
)
けた。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
直ちに不自然として
斥
(
しりぞ
)
けることはできぬ。しかしまた爪先の利用はこの踊りにおいて極点に達する。これ以上に出る余地はない。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
春陽堂新支配人磯部節治君の強硬な勧誘を
斥
(
しりぞ
)
けることができず、その取捨を一任する約束で、同氏の好意に
酬
(
むく
)
いるほかはなかつたのである。
「花問答」後記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
自分は今日まで一閑斎の恩義に感じて檜垣衆の乞いを
斥
(
しりぞ
)
けて来たけれども、しかし昨今の筑摩家の無為無能には
愛憎
(
あいそ
)
が盡きた。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
斥
(
しりぞ
)
けて対馬守は眼鏡をかけ直すと、静かに再び書見に向った。——読みかけていた一書は
蕃書取調所
(
ばんしょとりしらべじょ
)
に命じて訳述させた海外事情通覧である。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
神代の物語などが歴史的事実を記したものでないということから、それを無価値のものとして
斥
(
しりぞ
)
けるのは、大なる誤である。
日本歴史の研究に於ける科学的態度
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
斥
(
しりぞ
)
けやうとしてゐる習俗が、自分と云ふものゝ隅々にまで喰ひ込んで邪魔をするのだと云ふ自覚は、どんな絶望を彼女に与へたか? 彼女は
惑ひ
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
ここにおいて蕪村は複雑的美を捉え来たりて俳句に新生命を与えたり。彼は和歌の簡単を
斥
(
しりぞ
)
けて唐詩の複雑を借り来たれり。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
此
(
かく
)
の如き人は蘭軒伝を見ても、只山陽茶山の側面観をのみ其中に求むるであらう。わたくしは敢て成心としてこれを
斥
(
しりぞ
)
ける。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
感情をあながちに
斥
(
しりぞ
)
けるのではない。女が唯一の頼みとしていた感情は、いわば元始的の
偏狭
(
へんきょう
)
と、歴史的の盲動とで海綿状に乱れた物であった。
私の貞操観
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
瑞見に言わせると、今度江戸へ出て来て見ても、水戸の御隠居はじめ大老と意見の合わないものはすべて
斥
(
しりぞ
)
けられている。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼が
斥
(
しりぞ
)
けているのは狂言であり偏執であり
成心
(
せいしん
)
であり盲従であって、求めているのは冷静な客観の自由であり、公平な立会人たる権利なのである。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
従って、一、二回聴いて飽きるレコードを
斥
(
しりぞ
)
けて、十回百回聴いて飽くことを知らないレコードを挙げるようにした。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
初めには裁いたものをも
赦
(
ゆる
)
し、
斥
(
しりぞ
)
けたものをも
摂
(
と
)
り、
曖昧
(
あいまい
)
なる内容は明確となり、しだいに深く、大きく、かつ高くなり、その終わりに近きものは
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
そして絶對に性の欲求を
斥
(
しりぞ
)
けてゐる。のみならず神に對して祈る聲は持つてゐても、人に對しては聲を鎖してゐる。
修道院の秋
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
然るに今日島崎氏の詩を
斥
(
しりぞ
)
けて既に
業
(
すで
)
に陳腐の域に墜ちたものだといふ説がある、果してその言の如くであらうか。
新しき声
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
どうぞ私のこの嘆願を
斥
(
しりぞ
)
けないで下さい。どうぞあなたの秘密をわたくしにお洩らし下さい。あなたにはもうなんのお入り用もないではありませんか。
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
他の事は何も彼も
擲
(
なげう
)
ち捨てて南無阿弥陀仏一点張り、唱名三昧に二六時中を過したというのではなく、後世からは
余業雑業
(
よごうざつごう
)
と
斥
(
しりぞ
)
けて
終
(
しま
)
うようなことにも
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
こうこたえて、所司代の申出を
斥
(
しりぞ
)
けてしまったのである。酒井は、どうすることもできないで、自らそくばくの金を献上して、御内膳の資に供えたという。
にらみ鯛
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
又或ものは誘惑に負けずに我々自身を守るであらう。しかし我々は一生を通じて悪魔と問答をしないこともあるのである。クリストは第一にパンを
斥
(
しりぞ
)
けた。
西方の人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
故に前にも述べたとおり己らの荘園からして全然地頭を
斥
(
しりぞ
)
けようとはもはや試みぬかわり、それらの武人らに頼んで、取れるだけの年貢をとるようにする。
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
セルギウスは聖者らしく振舞ふ事を、不断
斥
(
しりぞ
)
けてはゐるが、心の底では自分でも聖者だと思つてゐるのである。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
○儲けるを知つて遣ふを知らず、
斥
(
しりぞ
)
くべし。遣ふを知つて儲けるを知らず、是亦斥くべし。さらば何とかすべき。儲けて
而
(
しか
)
して遣へとは、儲けぬ人の言なり。
青眼白頭
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
なぜならこれによって得られる満足を表わす面積は、この交換を
斥
(
しりぞ
)
けるときに得られる満足を表わす面積より大であるから。だがこれだけの説明では足りない。
純粋経済学要論:01 上巻
(新字新仮名)
/
マリー・エスプリ・レオン・ワルラス
(著)
音楽家として独唱会をして死ぬのは本望です、といって、三浦博士の勧告を
斥
(
しりぞ
)
けたということも話した。
三浦環のプロフィール
(新字新仮名)
/
吉本明光
(著)
何事よりも自然への帰依が尊重せられねばならぬ。私たちは人智を拘束するすべての態度を
斥
(
しりぞ
)
けてよい。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
しかし、そうやって獲得された意味が、たちまち作品のなかで疑われ、
斥
(
しりぞ
)
けられている。そこで、精神的な意味づけを求めようとすることが不可能となってしまう。
「世界文学大系58 カフカ」解説
(新字新仮名)
/
原田義人
(著)
ただ不可能なもののうちにあつてのみそれは得意であり、可能なものを軽蔑して
斥
(
しりぞ
)
けるやうに見えた。
ゲーテに於ける自然と歴史
(新字旧仮名)
/
三木清
(著)
けれども未来派の傾向を全然
斥
(
しりぞ
)
けらるべきものだと主張する人に対しては、私は以上の見地からこの派の傾向の可能性を申し出ることが出来はしないかと思っている。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼が一本一本さがしもとめてそれを
斥
(
しりぞ
)
けているあいだに、彼の友だちはそれぞれの仕事に老い死んで、しだいに彼から欠けおちたが、彼は少しも年寄りにならなかった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
一日、古書を
渉猟
(
しょうりょう
)
中、ふと、ある疑いにとらわれた。今迄、全然考えたこともなかった疑だけに、初めは、邪神セットの誘惑ではないかと思って、それを
斥
(
しりぞ
)
けようとした。
セトナ皇子(仮題)
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
私はそれを
斥
(
しりぞ
)
けて、自分の欲する儘に振舞ふこと、例へば何処かの部屋の隅にでも一人寝るといふ様な我儘を言ふだけの親しみをそれらの人達に対して持つて居なかつた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
禅宗の和尚たちはこれを怪奇として
斥
(
しりぞ
)
けず、むしろ意味ありげに語り伝えるのが普通であった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
石田三成等の
纔者
(
ざんしゃ
)
のために
斥
(
しりぞ
)
けられて
蟄居
(
ちっきょ
)
していた加藤清正は、地震と見るや足軽を伴れて伏見城にかけつけ、城の内外の警衛に当ったので、秀吉の勘気も解けたのであった。
日本天変地異記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ただ現在の社会組織を維持せんとするものは、一般に国権の掌握者の保護の下に社会主義の要求を
斥
(
しりぞ
)
くるを常とするが故に、社会主義は一転して民主主義となるの傾きはある。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
英国主権の悲しさには王女は王宮内に絶大な権力を
奮
(
ふる
)
っているこの厚顔な英国駐在官の無礼な恋を無下に
斥
(
しりぞ
)
けられることもならず、当惑しつつも柳に風と受け流していられた。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
病む子を
遙々
(
はる/″\
)
見舞はうとして出立の支度を整へた遠い故郷の
囲炉裏端
(
いろりばた
)
で、真赤に怒つてゐるのならまだしも、親の情を
斥
(
しりぞ
)
けた子の電文を打黙つて読んでゐる父のさびしい顔が
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
あたかも凱旋将軍を迎える如くに争い集まる
書肆
(
しょし
)
の要求を
無下
(
むげ
)
に
斥
(
しりぞ
)
ける事も出来なかった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
私達の友人は既に、彼の本性にかなはない
総
(
すべ
)
ての物を脱ぎ棄て、すべての物を
斥
(
しりぞ
)
けた。
我が一九二二年:02 我が一九二二年
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
私達の友人は既に、彼の本性にかなはない
総
(
すべ
)
ての物を脱ぎ棄て、すべての物を
斥
(
しりぞ
)
けた。
我が一九二二年:01 序
(新字旧仮名)
/
生田長江
(著)
いっそうくわしく調べもしないではじめから
斥
(
しりぞ
)
けられるはずはない、と思いました。
城
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
仮りにそれが真情に発し、そして俗態を
斥
(
しりぞ
)
けて、ものの数ともしないというものであるならば、如何なる書を、いかに学んだとしても、決して模倣に終るようなことはないと思われる。
一茶の書
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
斥
常用漢字
中学
部首:⽄
5画
“斥”を含む語句
斥候
擯斥
排斥
斥候隊
指斥
貶斥
弁斥
推斥
攘斥
教頭排斥
斥候櫓
斥候長
斥候頭
斥罵
此斥候
潮斥