よんどこ)” の例文
旧字:
初めは何といっても首を振ってかなかったが、剛情我慢の二葉亭も病には勝てず、散々手古摺てこずらした挙句がよんどころなく納得したので
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
悪人ながらお柳は実母でございますから、親殺しのかどは何うしてものがれることは出来ませんので、町奉行筒井和泉守様はよんどころなく
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
去年の一月末のくもつたに、わたしはよんどころない義理で下町のある貸席へ顔を出すことになつた。そこにある社中の俳句会が開かれたのである。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ソレも宜いとしておいて、この攘夷はドウだ。自分がその局にあたって居るからよんどころなく渋々しぶしぶ開国論を唱えて居ながら、その実をたたいて見ると攘夷論の張本だ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「成程、多くなるね。しかし交際だからよんどころない。何だって皆はこんなに芸を教えたがるんだろうなあ?」
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
我邦でも以前は客に料理屋の物を出すと、今日は家内不手廻ふてまわりでよんどころなく他へ料理を申付けました。お気味がお悪うございましょうけれどもと断ったものです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
伴「おれも此の節はよんどころない用で時々うちを明けるものだから、おめえがそう疑ぐるのももっともだが、そんな事を云わないでもいゝじゃアねえか」
頃は去る明治二十三年の春三月、父はよんどころなき所用あって信州軽井沢へ赴いて、およそ半月ばかりも此のしゅくに逗留していた。
とあるは毎月書肆しょしから若干ずつ資給されていた義理合上余儀なくされて渋りがちなる筆をしつつよんどころなしに机に向っていた消息を洩らしたのであろう。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
香坂 僕達の家庭ではカフェーが御法度ごはっとです。しかし交際上よんどころない場合があります。その折、女房の目をかすめて、男子の体面を保つ法如何いかん? という問題です。
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
徳川政府は行政外交の局にあたって居るからよんどころなく開港説——開国論を云わなければならぬ、又行わなければならぬ、けれどもその幕臣全体の有様はドウだとうと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
負傷者は容易に死なず、医師の説に依れば幾分か持直もちなおした気味だと云う。巡査はよんどころなく手をつかねて、の快癒に向うのを待つうちに、四五日は徒爾いたずらに過ぎた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
持って居ればよんどころなく訴えなければならねえ、去年の九月四日の晩、妻恋坂下の建部…………サだからって
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もっとよんどころない理由で籍を置いたので、専門学校の科程を履修しようというツモリは初めからなかったのだから、籍を置いたというだけで、ほとんど出席しなかったが
五年を卒えて高等学校の入学試験に失策しくじったけれど、これは誰にもあることで、人員の都合上よんどころない。その次の年に入学が叶って高等学校は三年間無事に通した。
善根鈍根 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今もいう通り、これもよんどころない災難と諦めるの外はありませんよ。ねえ、お父さんも諦めてください。
青蛙神 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この考察も万更まんざら見当違いでなく、世には確かに二葉亭の信ずるようなよんどころない境遇の犠牲となって堕落した天才や、立派な主張を持ってる敗徳者もあるにはあるが
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「戦争ということが既にいけないのです。あれはよんどころない間違で、涙を流しながらやったのです」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
われうちでかい構えの菓子屋で、金の有る事は知ってる、さア出せ、ぐず/\しやアがるとよんどころなく斬ってしまうぞ、さア金を出せと云うから、旦那は魂消たの魂消ないの
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
山下夫人もよんどころなかった。仰せに従っていれば、娘達が見す/\良縁を失う。鉄瓶屋を断った時、別に商家から口がかゝっていたので、それとなく念を押したのだった。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お父さんの悪いのではございません、みんな私が悪いのでございます、と申すはよんどころない訳で私がお前さんのお父様とっさんを慕いまする故に、お父様がお屋敷を出る様な事に成りました
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
唯だ法律といふ難かしい定規があつてよんどころなく親子兄弟姉妹あひかんせずにゐるが、アに犬や猫と五十歩百歩だ。何とかいふ人の発句ほつくとかに「羨まし思切る時猫の恋」といふのがあるさうだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
それでよんどころなく預けて行ったのです。
青蛙神 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
俊一君は耳をそばだて始めたが、折から頭の上で電話が鳴り出したので、飛び立ち上った。よんどころない。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此のたび火急に国表へ帰らんければならんので、丹誠して拵えた刀ゆえ惜しいものだが、然う/\幾口いくふりもは荷になって持って往くことが出来んに依ってよんどころなく払ってしまうのだが
と千吉君はよんどころなかった。この際辞宜じぎするのは長者に対する礼でないと考えたのである。牧野さんは又々芸者の扇子を塗り始めたが、朱竹を描いて貰ったという米沢君は
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
御寝なるたって彼奴あいつが薬師堂に居た時、わしは奉公に這入ったが、彼奴も未だ老朽おいくちる年でもないから、肌寒いよって、この夜着の中へ這入って寝ろと云うので、よんどころなく這入って寝たが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と先生は紙の耳を膏薬こうやくほど割いて渡して、ニコ/\している。赤羽君もよんどころない。名前を書いてお辞儀をして来た。それでも二学期の成績報告は論理六〇となっていたので
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今迄随分乱暴人も見たが、見付の鉄砲を持出すとはしからぬ奴だが、鉄砲に恐れて逃げる訳にはかず、よんどころないから刀の柄前つかまえへ手を掛け、亥太郎の下りて来るのを待って居りました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と新太郎君も馬鹿々々しいけれどよんどころなかった。逆らえば何んな目に会うかも知れない。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そのうち親方もしくじり、破落戸ごろつきとなったから、根岸の寮へ参るどころか足ぶみもならない。もう斯うなっては手蔓てづるが切れて顔を拝むことも出来ませんので、よんどころなく諦めて仕舞いました。
「然うです。吉川君はよんどころない人と先約があると言って帰って行きました」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此のお子が七歳の時われが前橋の藤本に抱えられて小瀧と云ってる時分、茂之助さんが大金を出して身請えすると、松五郎てえ悪足わるあしが有って、よんどころなく縁を切ったものゝ、あゝ口惜くちおしいと男の未練で
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……明日明後日は来客があるに定っているし、その先に新年宴会というどえらい奴が控えている。無論決心は堅い。今更ひるがえすのではない。交際上よんどころなく延すのだ。何も元日早々こゝの奥さんに恥を
一年の計 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
何時いつまで田舎にくすぶってたって仕方がねえもんだから、此方こっちへ帰りは帰ったものゝ、一日でも食べずに居られねえところから、よんどころないこの始末、芸が身を助けるほどの不仕合とアよく云う口ですが
と社長も行きがかり上、よんどころない。大人気おとなげない約束をしてしまった。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
甲「御免なさい、真平まっぴら御免なさい、よんどころなく頼まれて這入ったので」
場内取締の顔を見るも腹がたって堪らない、そうかと云って打付ぶっつけて愚痴をこぼすことも出来ないので、よんどころなく次の横浜き九時十分まで待たねばなりません、待っているのは仕方がないとしても
「それじゃお断りの言訳によんどころなく仰有ったんですわ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
父様とっさまが御病気の事ではよんどころございませんで、へえ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
所望しょもうされてよんどころなく語る形式にしたいのだ。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と鳥居氏はよんどころなく夫人の手腕を褒めた。
或良人の惨敗 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と堀尾君はよんどころなく十万円貰う形にした。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と卓造君のお父さんもよんどころない。
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そこで安子さんもよんどころなく
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と寛一君はよんどころなかったが
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
とお父さんもよんどころない。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
よんどころない人だ」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)