怠慢たいまん)” の例文
工場の事務所からは、其筋の怠慢たいまんを責める様に、毎日毎日警察署へ電話がかかった。署長は自分の罪ででもある様に頭をなやました。
二銭銅貨 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「いったい、だれが、修繕しゅうぜんしなければならぬのだろうかね。」と、清吉せいきちは、いいました。責任せきにんをもつものの怠慢たいまんがはらだたしかったのです。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
「以てのほかな怠慢たいまんなりと、数日にわたって、問注所の取調べをうけ、あわやこの清高の職も領も褫奪ちだつされんばかりな詰責でございましてな」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
閣下の怠慢たいまんは、私たち夫妻の上に、最後の不幸をもたらしました。私の妻は、昨日さくじつ突然失踪したぎり、いまだにどうなったかわかりません。私は危みます。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ああ大江山君、よろこんでいいよ。わしたちはまた夕刊新聞に書きたてられて一段と有名になるよ。まったく君の怠慢たいまんのお陰だ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
加之しかのみならず文学者ぶんがくしやもつ怠慢たいまん遊惰いうだ張本ちやうほんとなすおせツかいはたま/\怠慢たいまん遊惰いうだかへつかみ天啓てんけいかなふをらざる白痴たはけなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
ある時は病人の便器を差し込んだなり、引き出すのを忘れてそのまま寝込んでしまった怠慢たいまんさえあったと告げた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
世間並の正月氣分になつて居た自分の怠慢たいまんを指摘されたやうで、こんなに恥入つたことはありません。
それにしても、第五部を書くために五年の歳月さいげつはあまりに永過ぎるのではないかとあやしむ人も多いだろう。事実、多数の読者からは、ずいぶん怠慢たいまんだというおしかりもうけた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
かみとしてもっといましむべきは怠慢たいまん仕打しうち同時どうじもっとつつしむべきは偏頗不正へんばふせい処置しょちである。怠慢たいまんながるるときはしばしば大事だいじをあやまり、不正ふせいながるるときはややもすれば神律しんりつみだす。
だがしかし、失礼ながら一言いちごん御注意ごちゅういしますが、どうも君は職務怠慢たいまんですな
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
そこへ淳于瓊じゅんうけいが、耳鼻をがれて敵から送られてきたので、その怠慢たいまんをなじり、怒りにまかせて即座に首を刎ねてしまった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうすれば、きっと日輪にちりんわたしたちの先祖せんぞ怠慢たいまんをおゆるしくださるでしょう。そして、わたしは、うつくしいつばさと、また、あなたのようないいなきごえとをさずかってきます。
紅すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
縦令たとひ石橋いしばしたゝいて理窟りくつひね頑固ぐわんことうことの如く、文学者ぶんがくしやもつ放埓はうらつ遊惰いうだ怠慢たいまん痴呆ちはう社会しやくわい穀潰ごくつぶ太平たいへい寄生虫きせいちうとなすも、かく文学者ぶんがくしや天下てんか最幸さいかう最福さいふくなる者たるにすこしも差閊さしつかへなし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
不規律と怠慢たいまんだけが塾堂を支配しているのではないか、と疑われるような場面もあり、もし学ぶことよりも批評することにより多くの興味を覚えている参観者がたずねて来たとしたら、その人は
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
御早おはやう」と挨拶あいさつした。かれ今朝けさまたとくに參禪さんぜんましたのちうしてあんかへつてはたらいてゐたのである。宗助そうすけはわざ/\おこされてもなかつた自分じぶん怠慢たいまんかへりみて、まつたきまりわるおもひをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
……貴公の怠慢たいまんには呆れたが、さりとて、今ここでと申したところで仕方があるまい。安土へはそれがしから書面を以てありのままお答え申しておく。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「憎いくされ儒者ではある」と、直ちに、張飛ちょうひ孫乾そんけんにいいつけ、耒陽県を巡視して、もし官の不法、怠慢たいまんのかどなど発見したら、きびしく実状をただして来いといった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)