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岨
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そば
ふりがな文庫
“
岨
(
そば
)” の例文
金眸は朝より
洞
(
ほら
)
に
籠
(
こも
)
りて、
独
(
ひと
)
り
蹲
(
うずく
)
まりゐる処へ、
兼
(
かね
)
てより
称心
(
きにいり
)
の、
聴水
(
ちょうすい
)
といふ
古狐
(
ふるぎつね
)
、
岨
(
そば
)
伝ひに雪踏み
分
(
わげ
)
て、
漸
(
ようや
)
く洞の入口まで来たり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
名に負ふ六角牛の峰続きなれば山路は樹深く、ことに遠野分より栗橋分へ下らんとするあたりは、路はウドになりて両方は
岨
(
そば
)
なり。
遠野物語
(新字旧仮名)
/
柳田国男
(著)
見上ぐる山の
巌膚
(
いわはだ
)
から、清水は雨に
滴
(
したた
)
って、底知れぬ谷暗く、風は
梢
(
こずえ
)
に渡りつつ、水は
蜘蛛手
(
くもで
)
に
岨
(
そば
)
を走って、駕籠は縦になって、雲を仰ぐ。
栃の実
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鬼神谷は深くその間に落込んでいるので、
暫
(
しばら
)
くこの落葉樹林に包まれた美くしい渓谷を
見下
(
みおろ
)
しながら、
岨
(
そば
)
伝いに進んで行く。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
沢を下り、
岨
(
そば
)
をめぐり、わずかな山村を眺め、また奥へ奥へと歩みつづける。たまたま逢う
樵夫
(
きこり
)
や部落の人も、遍路姿のふたりに、何の怪しみも持たなかった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
これが
那古井
(
なこい
)
の地勢である。温泉場は岡の
麓
(
ふもと
)
を出来るだけ
崖
(
がけ
)
へさしかけて、
岨
(
そば
)
の景色を半分庭へ囲い込んだ
一構
(
ひとかまえ
)
であるから、前面は二階でも、後ろは
平屋
(
ひらや
)
になる。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
玉くしげ函根の山は短か日のことに短かく、み冬さり霜
下
(
お
)
り来れば、
午
(
ひる
)
過ぎて日の目も知らず。向つべの山は明れど、こなたなる高山の
岨
(
そば
)
、風寒く木の葉ちるのみ。
観想の時:――長歌体詩篇二十一――
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その向うの更に高みになっている
岨
(
そば
)
に薄紅葉のしておる樹のあるのが、その竹山に打ち
映
(
は
)
えて見える。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
裏の障子を開けた外は重なった峯の
岨
(
そば
)
が見開きになって、その間から遠州の平野が見晴せるのだろうが濃い霞が
澱
(
よど
)
んでかかり、金色にやや透けているのは菜の花畑らしい。
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
力なき日はいつしか光り薄れて時雨空の雲の
往来
(
ゆきき
)
定めなく、
後山
(
こうざん
)
晴るゝ
歟
(
か
)
と見れば前山忽まちに曇り、嵐に
駆
(
か
)
られ霧に
遮
(
さ
)
へられて、
九折
(
つゞら
)
なる
岨
(
そば
)
を伝ひ、過ぎ来し方さへ失ふ頃
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
木曾路
(
きそじ
)
はすべて山の中である。あるところは
岨
(
そば
)
づたいに行く
崖
(
がけ
)
の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曾川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入り口である。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
扨
(
さて
)
は人家ありけるよと打喜び、山
岨
(
そば
)
の道なき処を転ぶが如く走り降り、やゝ黄ばみたる麦畑を
迂回
(
まは
)
りつゝ近付き見るに、これなむ一宇の寺院にして、山門は無けれど杉森の蔭に鐘楼あり。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
山の
岨
(
そば
)
を一つ曲ると、突然私たちの足もとから、何匹かの獣が走り去つた。
槍ヶ岳紀行
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ちょうど自分の橇の通っている
岨
(
そば
)
の、ずっと下のほうの谷のようなところを二台の橇がずんずん下りてゆくのが、それだけが唯一の動きつつあるものとして、いかにもなつかしげに見やられた。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
かけ渡す杣人がかけ橋向つ
峰
(
を
)
の
岨
(
そば
)
につづきて雪積める見ゆ
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
岨
(
そば
)
を
行
(
ゆく
)
袂の下のさくらかな 潘川
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
うち湿めりたる
岨
(
そば
)
づたひ
測量船拾遺
(新字旧仮名)
/
三好達治
(著)
名に負う六角牛の峯続きなれば山路は樹深く、ことに遠野分より栗橋分へ下らんとするあたりは、路はウドになりて両方は
岨
(
そば
)
なり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
神
(
しん
)
ならず、
仙
(
せん
)
ならずして、
然
(
しか
)
も
其
(
そ
)
の
人
(
ひと
)
、
彼處
(
かしこ
)
に
蝶鳥
(
てふとり
)
の
遊
(
あそ
)
ぶに
似
(
に
)
たり、
岨
(
そば
)
がくれなる
尾
(
を
)
の
姫百合
(
ひめゆり
)
、
渚
(
なぎさ
)
づたひの
翼
(
つばさ
)
の
常夏
(
とこなつ
)
。
五月より
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
図の上半部を成している
江
(
え
)
の
彼方
(
むこう
)
には
翠色
(
すいしょく
)
悦ぶべき遠山が見えている、その手前には丘陵が起伏している、その間に
層塔
(
そうとう
)
もあれば
高閤
(
こうこう
)
もあり、黒ずんだ
欝樹
(
うつじゅ
)
が
蔽
(
おお
)
うた
岨
(
そば
)
もあれば
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
この山
岨
(
そば
)
だとて無論
地辷
(
じすべ
)
りで埋つて了つてゐたのを、やつとどうにか道をあけたのだ。仰ぐと
檀
(
まゆみ
)
には実が青くついてゐる。臭木の実の紅と黒とはもはや何の潤ひもなく萎へて了つた。
蜜柑山散策
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
山紫陽花はこの谷間と妙見の
外
(
ほか
)
では見なかったが、妙見では一方の日を受ける谷の
岨
(
そば
)
に淡紅色の「しもつけ」が群落を作り、一方の蔭の谷では、紫陽花がまた群落を作っているのを見て
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
小便に
連
(
つれ
)
まつ
岨
(
そば
)
の菫かな 松白
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
岨
(
そば
)
みちに
艸千里
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
岨
(
そば
)
といわず、見渡す限り、色さまざまに咲き誇る各種のつつじが、大群落をなしているのであるが、今は花がなく、ただ遅れ咲きに咲いている赤花の山つつじが、点々見出されるだけである。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
秋山のなぞへの
薄
(
すすき
)
ひとつらね揺りかがやけり。秋山の名も無き山の草山の山の
端薄
(
はすすき
)
、その穂の薄揺りかがやけり。この夕、
出
(
い
)
でて見て、
岨
(
そば
)
ゆ見て、丸木橋妻と渡りて、また見ればまだかがやけり。
観想の時:――長歌体詩篇二十一――
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
師走の末の
早朝
(
あさまだき
)
、
藍
(
あい
)
の雲、
浅葱
(
あさぎ
)
の浪、緑の
巌
(
いわ
)
に霜白き、伊豆の山路の
岨
(
そば
)
づたい、その
苞入
(
つといり
)
の初茄子を、やがて霞の
靉靆
(
たなび
)
きそうな乳の
辺
(
あたり
)
にしっかと守護して、小田原まで使をしたのは、お鶴といって
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
声はすれ向ふ
岨
(
そば
)
ゆく子等がかげ山松が
間
(
ま
)
をまだ出はづれず
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
雪しろき千本鉾杉下に見てわが行く
岨
(
そば
)
よ
冷
(
ひ
)
えとほりつつ
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
金の星このもかのもの
岨
(
そば
)
をゆく彼らは枯草負ひたる
童
(
わらべ
)
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
岨
漢検準1級
部首:⼭
8画
“岨”を含む語句
岨道
嶮岨
岨路
片岨
岩岨
険岨
山岨
裏岨
渓岨
上岨
岨谷
谿岨
巖岨
岨立
岨畑
岨伝
岐岨古道記
岐岨
山間嶮岨
山岨道
...