山野さんや)” の例文
キキョウは山野さんや向陽地こうようちに生じている宿根草しゅっこんそうであるが、その花がみごとであるから、観賞花草として人家じんかえられてある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
日光は直射するが、海より吹く軟風なんぷうのために暑気を感ぜず、好晴のもとに浮ぶあは青靄せいあいの気が眸中ぼうちう山野さんやを春の如く駘蕩たいたうたらしめるのであつた。
ひとり高氏だけは、この正月も山野さんやですごした。伊賀路を捨て、大和、紀伊、和泉いずみ、摂津を股にかけての跋渉ばっしょうを、あえて続けて来たのである。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かのうづたかめるくちなはしかばねも、彼等かれらまさらむとするにさいしては、あな穿うがちてこと/″\うづむるなり。さても清風せいふうきて不淨ふじやうはらへば、山野さんや一點いつてん妖氛えうふんをもとゞめず。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぼく支度したくして先生せんせいうちけつけました、それがあさ六時ろくじ山野さんやあるらしてかへつてたのがゆふべ六時ろくじでした、先生せんせい夏期休業なつやすみいへどつね生徒せいとちかづ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ひげへても友達ともだち同士どうしあひだ無邪氣むじやきなもので、いろ/\のはなしあひだには、むかしとも山野さんや獵暮かりくらして、あやまつ農家ひやくしやうや家鴨あひる射殺ゐころして、から出逢であつたはなしや、春季はる大運動會だいうんどうくわい
白い、羊の毛のような雲が空に浮かんで、山野さんやのここかしこに、黒い影を投げていた。しかし、まもなく、影になっていたところに陽が当って、影はほかのところへ移って行った。
上陸じょうりくすると、すぐに、かれ部隊ぶたいは、前線ぜんせん出動しゅつどうめいぜられました。そこでは、はげしい戦闘せんとう開始かいしされた。大砲たいほうおと山野さんやあっし、銃弾じゅうだんは、一ぽんのこさずくさばしてあめのごとくそそいだ。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
このオキナグサは山野さんや向陽地こうようちに生じ、春早く開花するので、子女しじょなどに親しまれ、その花をって遊ぶのである。葉は花後かごに大きくなる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
男らしいというものか、烈々な壮志に燃えて他はかえりみられぬとしておられるのか、なにしろ、山野さんやはむしろわが家居とているものみたいに、みるまに甲賀奥地の雲へかくれてしまった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時どうじわかいものの勇気ゆうき鼓舞こぶしなければならぬ役目やくめをもっていました。かれは、かぜたたかい、山野さんや見下みおろしてんだけれど、ややもするとつばさにぶって、わかいものにされそうになるのでした。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
君が画板を持って郊外をうろつきまわっているように、僕はこの詩集をふところにし佐伯の山野さんやを歩き散らしたが、僕は今もその時の事を思いだすと何だかなつかしくって涙がこぼれるような気がするよ
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
第二に、健康けんこうになる。植物に趣味を持って山野さんやに草や木をさがし求むれば、自然に戸外こがいの運動がるようになる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
女には男あつかいされぬ君子くんしも、山野さんや侠児きょうじにはしたわれる事
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)