小草をぐさ)” の例文
のぼつて行く山道のあるところに水が湧いて、そこに少しばかり青い小草をぐさが生えてゐる。「かりうどのみづ」などいふ小さい木札がぶらさがりゐる。
接吻 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
少時しばらくひとまない、裏家うらやにはで、をりからまたさつくもながらつき宿やどつた、小草をぐさつゆを、ゆりこぼしさうなむしこゑ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私はいばらの下に舞ふ羽虫の姿を見た、そして小草をぐさを超えて吹く柔らかな風の音を聞いた。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
崖に沿ひて一條ひとすぢ細徑ほそみちあり。迂𢌞して初の街道に通ず。われは高萱たかがやを分け小草をぐさを踏みて行きしに、月は高き石垣の上を照して、三人みたりの色蒼ざめたるかうべの、鐵格の背後うしろより、我をうかゞふを見たり。
小草をぐさいひぬ『酔へる涙の色にさかむそれまで斯くて覚めざれな少女をとめ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
木樵きこうた とりのさへづり みづおと ぬれたる小草をぐさ くもかゝるまつ
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
麦穂すね刺す小径の上に、小草をぐさを蹈みに
れぬ小草をぐさはなやつゆのたま
荷風翁の発句 (旧字旧仮名) / 伊庭心猿(著)
小草をぐさりしわが身さへ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
りし小草をぐさたふ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
小草をぐさのまへに色みえて
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
雪枝ゆきえいきせはしくつて一息ひといきく。ト老爺ぢい煙草たばこはたいた。吸殻すゐがらおち小草をぐさつゆが、あぶらのやうにじり/\とつて、けむりつと、ほか/\薄日うすびつゝまれた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のぼり来し福済禅寺ふくさいぜんじの石だたみそよげる小草をぐさとおのれ一人ひとり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
紫に小草をぐさが上へ影おちぬ野の春かぜに髪けづる朝
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
銀のつづれを小草をぐさにひつかけ
そこの小草をぐさくれなゐの
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
花の小草をぐさのしたかげに
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
小草をぐさのまへに色みえて
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おもけなくおためにつて……一寸ちよつとうれしいことわたしは。……矢張やつぱり何事なにごとこゝろつうじますのですわね。」と撫子なでしこまた路傍みちばたへ。わすれていたか、と小草をぐさにこぼれる。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
古墟ふるつかにも闇の小草をぐさ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
紅玉こうぎよく入亂いりみだれて、小草をぐさつた眞珠しんじゆかずは、次等々々しだい/\照増てりまさる、つき田毎たごとかげであつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)