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好悪
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こうお
ふりがな文庫
“
好悪
(
こうお
)” の例文
旧字:
好惡
こんな顔ぶれを集めての催しである上に、主人の松雲は相変わらずの温顔で、客に親疎を問わず、
好悪
(
こうお
)
を選ばずと言ったふうの人だ。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
また
平生
(
へいぜい
)
の衣食住についても、おのおの
好悪
(
こうお
)
する所なきを期すべからずといえども、互いに忍んでその好悪に従わざるべからず。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
すなわち客観的態度の公平なるに対して、この態度の不公平——不公平と云うとおかしく聞えますが、
好悪
(
こうお
)
に支配せられる事であります。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
或時期に達した処女が異性を見て
好悪
(
こうお
)
の情を動かし、進んでは恋愛の感情にまで
込入
(
こみい
)
るのは、食事や睡眠の欲望と共に自然の要求であって
私の貞操観
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
好悪
(
こうお
)
は人間の勝手である。彼も自分のことになれば、そんなふうに妥協した。寝つく前に、寧子の横顔を描きながら眠った。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
もし
或
(
あるい
)
は、
強
(
し
)
いてこれを批判するものがありとすれば、それは単なる趣味の
好悪
(
こうお
)
、個人としての好き
嫌
(
きら
)
いにすぎないだろう。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
愛好心はなくても理解心があるのか、それが問題であるが、食物の
好悪
(
こうお
)
などから類推すると、考えが平易すぎる心配がある。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
浜口 人間の
好悪
(
こうお
)
の感情は、制御しきれんものらしい……心の重荷になって、ひとり苦しむのはやりきれないから、君にだけ、うちあけておく。
喪服
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
おまけに一番悪いことはその人としてだけ考える時でもいつか僕自身に似ている点だけその人の中から引き出した上、勝手に
好悪
(
こうお
)
を
定
(
さだ
)
めているのです。
手紙
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
脂粉に
彩
(
いろ
)
どられた
傾国
(
けいこく
)
の美こそなかったかも知れないが、美の価値を、自分の目の
好悪
(
こうお
)
によって定める、男の鑑賞眼は、時によって狂いがないとはいえない。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
鑑賞者の
好悪
(
こうお
)
に支配されることの大きいものであるが、それにもかかわらず、私はかつてモーツァルトの音楽を嫌いだと公言し得る人間のあることを知らないほどである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
彼はミルハに興味を覚えた。彼女の方がアーダよりも
怜悧
(
れいり
)
だと推察した。しかしそのひどく
阿諛
(
あゆ
)
的なやり方と
曖昧
(
あいまい
)
な微笑とには、
好悪
(
こうお
)
の入り交った気持を起こさせられた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
天職
(
てんしょく
)
を
自覚
(
じかく
)
せず、また、それにたいする
責任
(
せきにん
)
を
感
(
かん
)
ぜず、
上
(
うえ
)
のものは、
下
(
した
)
のものに
好悪
(
こうお
)
の
感情
(
かんじょう
)
を
露骨
(
ろこつ
)
にあらわして
平気
(
へいき
)
だった、いまよりは、もっと
暗
(
くら
)
かった
時代
(
じだい
)
の
話
(
はなし
)
であります。
天女とお化け
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
わたくし
一己
(
いっこ
)
の
好悪
(
こうお
)
によっていうと、興福寺の竜王よりはこの天王の方がすぐれている。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
たとえば
孔子
(
こうし
)
が『
春秋
(
しゅんじゅう
)
』を書くに
私心
(
ししん
)
をはさまなかったとは、『春秋』に出る人物を批評するに好きだから
褒
(
ほ
)
める、
癪
(
しゃく
)
にさわるから悪く書くというのでなく、
好悪
(
こうお
)
は論外として
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
私が
今日
(
こんにち
)
人を一目で判断して
好悪
(
こうお
)
を決し、信用不信用を決するには、ただこの悲しみの所在によって行うので、これは甚だ危険千万な方法で、そのために人を見間違うことは多々あるのだが
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
好悪不合長相蒙
好悪
(
こうお
)
合わずして長く相
蒙
(
おお
)
う
詩人への註文
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
けれども初対面の時から津田を好いてくれなかった叔父が、その後彼の
好悪
(
こうお
)
を改めるはずがないという事もよく承知していた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
唯
(
た
)
だ女子の持っていたものは甲の男子を愛して乙の男子を
厭
(
いと
)
うという自然の
好悪
(
こうお
)
に過ぎなかったであろう。
私の貞操観
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「いやいや、
仏法
(
ぶっぽう
)
の貴賤を分たぬのはたとえば
猛火
(
みょうか
)
の大小
好悪
(
こうお
)
を焼き尽してしまうのと変りはない。……」
尼提
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
客に親疎を問わず、
好悪
(
こうお
)
を選ばずとはこの人のことだ。ことに頭は剃りたてで、僧貌も一層柔和に見える。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
落日の赤い
靄
(
もや
)
のなかへ、黒い点のように遠く消え去った文覚の影を見送っているまに、若人輩の胸には、彼という人間に対する
好悪
(
こうお
)
も感情も
掻
(
か
)
き消えて、彼の残したことばだけが
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それはハイフェッツは非常な技巧家で、技術上の破綻や出来不出来はほとんどないために、等級を付けても、結局は選者のそれらの曲に対する
好悪
(
こうお
)
の表示以外の何ものでもないからである。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
おのずから
好悪
(
こうお
)
するところのものあるが如し。
学問の独立
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
換言すると、自分の
好悪
(
こうお
)
撰択を許さない強制的の苦しみを含んでいる。そう云う風にほかから
圧
(
お
)
しつけられた仕事では精神生活とは名づけられない。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、何も才物だからと云って、その人間に対する
好悪
(
こうお
)
は、勿論変る訳もありません。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
父の
御蔭
(
おかげ
)
で、代助は多少この道に
好悪
(
こうお
)
を有てる様になっていた。兄も同様の原因から、画家の名前位は心得ていた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それでも
好悪
(
こうお
)
はある。買つてもいゝと思ふのもある。然し巧拙は全く
分
(
わか
)
らない。従つて鑑別力のないものと、初手から
諦
(
あき
)
らめた三四郎は、一向
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
かない。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
学力は同程度として
好悪
(
こうお
)
のかくまでに
岐
(
わ
)
かるるは両者の性質のそれほどに異なるがためならずんばあらず
『文学論』序
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
大小の区別のつく、
軽重
(
けいちょう
)
の等差を知る、
好悪
(
こうお
)
の判然する、善悪の分界を
呑
(
の
)
み込んだ、賢愚、真偽、正邪の批判を
謬
(
あや
)
まらざる大丈夫が出来上がるのが目的である。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
従って製作品に対する
情緒
(
じょうしょ
)
がこれにうつって行って、作物に対する
好悪
(
こうお
)
の念が作家にうつって行く。なおひろがって作家自身の好悪となり、結局道徳的の問題となる。
無題
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
食ってるのは情ない訳だ、君が特別に
数奇
(
すき
)
なものが無いから困難なんだよ。二個以上の物体を同等の程度で
好悪
(
こうお
)
するときは決断力の上に遅鈍なる影響を与えるのが原則だ
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この
曖昧
(
あいまい
)
なところがまたお延の堀に対する
好悪
(
こうお
)
の感情をそのままに現わしていた。事実をいうと、彼女は堀を好いているようでもあり、また好いていないようでもあった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それでも
好悪
(
こうお
)
はある。買ってもいいと思うのもある。しかし巧拙はまったくわからない。したがって鑑別力のないものと、初手からあきらめた三四郎は、いっこう口をあかない。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
好悪
(
こうお
)
は人々の随意である。好悪より生ずる物品金銭の贈与もまた人々の随意である。
文芸委員は何をするか
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこでこの部門の主要な目的は前に申すごとく真を発揮するに存する事は別に
繰
(
く
)
り
返
(
かえ
)
す必要もございますまい。すでに真が目的である以上は
好悪
(
こうお
)
の念を取りのけなければなりません。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ともかくも
好悪
(
こうお
)
の両面を記述して、しかも公平に記述すると云う事は、あたかも冷熱の二性を写して、湯と水を同一視しろと云う注文と同じ事で、それ自身において矛盾であります。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
好悪
(
こうお
)
は
理窟
(
りくつ
)
にはならんのだから、いやとか好きとか云うならそれまでであるが、根拠のない好悪を発表するのを恥じて、理窟もつかぬところに、いたずらな理窟をつけて、弁解するのは
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その上その頃の健三は、女に対する美醜の鑑別もなければ
好悪
(
こうお
)
も
有
(
も
)
たなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
責任のある船頭にこんな質問を掛けられるほど腹の立つ事はないように、自分の
好悪
(
こうお
)
を支配する人間から、素知らぬ顔ですきかきらいかを尋ねられるのは
恨
(
うら
)
めしい。小夜子はまた口籠る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
さうして
気
(
き
)
が
向
(
む
)
けば、いくらでも、
蔵
(
くら
)
から
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
て、
客
(
きやく
)
の
前
(
まへ
)
に
陳
(
なら
)
べたものである。
父
(
ちゝ
)
の
御蔭
(
おかげ
)
で、代助は多少
斯道
(
このみち
)
に
好悪
(
こうお
)
を
有
(
も
)
てる様になつてゐた。
兄
(
あに
)
も同様の原因から、画家の名前位は心得てゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
すなわち
好悪
(
こうお
)
、すなわち情、を有しております。
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“好悪”の意味
《名詞》
好きなことと嫌いなこと。好き嫌い。
(出典:Wiktionary)
好
常用漢字
小4
部首:⼥
6画
悪
常用漢字
小3
部首:⼼
11画
“好”で始まる語句
好
好奇
好事家
好事
好加減
好奇心
好々爺
好誼
好餌
好尚