外題げだい)” の例文
政談月の鏡と申す外題げだいを置きまして申しあぐるお話は、宝暦ほうれき年間の町奉行で依田豐前守よだぶぜんのかみ様の御勤役中に長く掛りました裁判でありますが
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
歸りましたら早速に、表看板だけでも揚げて置いて、前景氣を附けたいと存じますが、その外題げだいはどういふことに決まりました。
近松半二の死 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
振り袖の人形が何の外題げだいでも自由自在に次から次へ踊って行くにつれて、爺さんのチョボもだんだんとぎれとぎれに怪しくなって行った。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
余興では南洋土人を加えた喜劇と舞踊の大一座(面白いことには、その喜劇の外題げだいに、「黄金仮面」というのがあった。無論興行主の当て込みである)
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その他宗祇のために、あるいは『源氏』五十四帖の外題げだいを認め、『新古今』、『後拾遺』、『伊勢物語』等の銘を書し、またしばしば扇面に書し与えた。
さっと外題げだいを取り換え、いなせなしまの衣をつけた軽快な味の持ち主、初がつお君が打って出たからたまらない。
いなせな縞の初鰹 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
それを面白がって、わやわや騒ぎ立てているとは、大学も、このごろはたちが落ちたものさ。幽霊に、ハムレットの発狂。三文芝居にでもありそうな外題げだいだ。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
半井広明はやむことをえず、こういう口上こうじょうを以て『医心方』を出した。外題げだいは同じであるが、筆者区々まちまちになっていて、誤脱多く、はなはだ疑わしき麤巻そかんである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかし、番付いっぱいに「市川海土蔵」が書いてあるものですから、どこに外題げだいがあるのかよくわかりません。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
道学のかたまり仁義忠孝の化物ばけもののような馬琴すらも『仇討義理与犢鼻褌かたきうちぎりとふんどし』というような、外題げだいを見ても内容が察しられる意外の遊戯的な作を何篇も作っておる。
氏はすこぶる出渋っていたけれどもついに私の言うことを聞いて出かけた。それは高田、藤沢などの壮士芝居で外題げだいは何であったか忘れたが、とにかく下らないものであった。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「新作天羽衣てんのはごろも天人娘てんにんむすめ夢浮橋ゆめのうきはし外題げだいはまだ決めちゃあねえが——おめえか、おめえは踊るのだ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
はいると新狂言の二番目もので、筋は勿論外題げだいさへ、更に不案内なものだつた。舞台には悪く納つた茶室があつて、造花の白梅が所々に、貝殻細工のやうな花を綴つてゐた。
あの頃の自分の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
公設展覧会出品の裸体画は絵葉書とする事を禁ぜられ、心中しんじゅう情死の文字ある狂言の外題げだいは劇場に出す事を許さず。当路の有司ゆうし衆庶しゅうしょのこれがために春情を催す事をおもんぱかるが故なり。
猥褻独問答 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
お吉が行方不明ゆくへふめいになつた晩から、昨晩まで休んで居たが、今晩から又三日、違つた外題げだいで興行し、十月になると、小屋を疊んで、暖かい地方へ行くことになつて居るのでした。
明後日あさっての夜は芝居見に連れゆくべし。外題げだい阿波十郎兵衛あわのじゅうろべえなるよしききぬ。そなたに見せなば親恋しと思う心かならず起こらん、そのときわれを父と思え、そなたの父はわれなり」
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それに二年ほど先だつて、『中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲學的日記の拔萃』といふ恐ろしく長い外題げだいの作品がある。これも室町幻想である。そのなかで、殺人者は書いてゐる。
「たしか、今度の二番目の外題げだいも、京人形。」
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
外題げだいを『出世奴孫子軍配しゅっせのやっこそんしのぐんばい
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
パリの市会議事堂で Le bon jugement de la très sainte et gracieuse Vierge Marie(いとも神聖にして優しき、処女マリヤのねんごろなる裁判)という外題げだいの教化的な演劇が
あの佐倉宗吾の芝居は三代目瀬川如皐じょこうの作で、嘉永四年、猿若町さるわかまちの中村座の八月興行で、外題げだいは『東山桜荘子ひがしやまさくらそうし』といいました。
半七捕物帳:60 青山の仇討 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
勿論セリフは全くわからないし、身形みなりも作らない作業姿なので、最初は何が何だかサッパリわからなかったが、だんだんと場面が進行するにつれて外題げだいがわかって来た。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし可笑おかしい事には、外題げだいに慶安としてあるものは、後に寛文かんぶん中に作ったもので、真に慶安中に作ったものは、内容を改めずに、後の年号を附して印行いんこうしたものである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
お耳慣れました西洋人情話の外題げだいを、まつみさお美人びじん生埋いきうめとあらためまして…これはいけはた福地ふくち先生が口うつしに教えて下すったお話で、仏蘭西フランス侠客おとこだて節婦せっぷを助けるという趣向
岩見重太郎から日清戦争へと、外題げだいと共に劇団員の腕も上達したはずだが、最後は猪川先生の一喝でオジャンになった。そして私は東京へ出て、もっぱら、見る方へ、精を出した。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
昼過のやわらかな日光に、冬枯れした庭木の影が婆娑ばさとして白い紙の上に描かれる風趣。春の夜に梅の枝の影を窓の障子に見る時の心持。それはすでに清元浄瑠璃の外題げだいにも取入れられている。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それで外題げだいを勝手に改めたのでありますが、御諒解ねがいたいと存じます。
能書を語る (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
と掲げ、その下に見えるか見えないかの小さな文字で、外題げだい
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その替りの外題げだいは「優曇華浮木亀山うどんげうききのかめやま」の通しで、きりに「本朝廿四孝」の十種香から狐火きつねびをつけた。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しき見分みわけきませんから、心眼しんがん外題げだいを致しましたが、大坂町おほさかちやう梅喜ばいきまう針医はりいがございましたが、療治れうぢはうごく下手へたで、病人にはりを打ちますと、それがためおなかが痛くなつたり
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
あの櫛田神社の絵馬堂に奉納されました額ぶちの外題げだいに「三国志」をと仰有った柴忠さんの御註文を避けて、わざと「芳流閣上の二犬士」の場面をお作りになった、お母様のお心の底には
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
外題げだいは「太閤記小田原攻め」の一条
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その草双紙を受取ってみると、外題げだいは新編うす墨草紙、為永瓢長作と記してあった。
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さてこれは外題げだい心眼しんがんまうす心のといふお話でござりますが、物の色をで見ましても、たゞあかいのでは紅梅こうばい木瓜ぼけの花か薔薇ばら牡丹ぼたんわかりませんが、ハヽア早咲はやぎき牡丹ぼたんであるなと心で受けませんと
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その草雙紙を受取つてみると、外題げだいは新編うす墨草紙、爲永瓢長作と記してあつた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
引続きまして真景累が淵と外題げだいを附しまして怪談話でございます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あなたはお芝居が好きだから、河内山こうちやまの狂言を御存知でしょう。三千歳みちとせ花魁おいらんが入谷の寮へ出養生をしていると、そこへ直侍なおざむらいが忍んで来る。あの清元の外題げだいはなんと云いましたっけね。
半七捕物帳:09 春の雪解 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「なんとこれ迄にこしらえたが、外題げだいを何とつけたらよかろう」
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)