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因業
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いんごう
ふりがな文庫
“
因業
(
いんごう
)” の例文
仕切りの
金目垣
(
かなめがき
)
は、いやが上にもよく茂り、野良犬の通路とも見えるかなりの穴が一つある外には、木戸一つない
因業
(
いんごう
)
なものでした。
銭形平次捕物控:085 瓢箪供養
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
小鳥
(
ことり
)
一
羽
(
わ
)
飼
(
か
)
つたこともないという、ごうつくばりの
因業
(
いんごう
)
おやじが、なぜ
金魚
(
きんぎょ
)
を
飼
(
か
)
う
気
(
き
)
になつたか、その
点
(
てん
)
にも
問題
(
もんだい
)
がないことはない。
金魚は死んでいた
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
「質屋といえば、
因業
(
いんごう
)
ときまっているが、奈良井屋さんは、よく貸してくれる。旦那の大蔵様は、苦労人でいらっしゃると……」
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
因業
(
いんごう
)
な養父母、植源の隠居、それらの人達から離れて暮せるということを考えるだけでも、手足が急に自由になったような安易を感じた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そこへ
抱主
(
かかえぬし
)
が
因業
(
いんごう
)
で、最近持上った例の松村という物持の身受話が段々うるさくなり、うんというか、借金を倍にして
外
(
ほか
)
へ住み
換
(
かえ
)
でもするか
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
これほど細君の病気に悩まされていた健三は、比較的島田のために
祟
(
たた
)
られる恐れを
抱
(
いだ
)
かなかった。彼はこの老人を
因業
(
いんごう
)
で
強慾
(
ごうよく
)
な男と思っていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
馬鹿な話さ、保養に来ていながら働くことを考えるのが何よりの
楽
(
たのし
)
みだ。
因業
(
いんごう
)
のようだが
俺
(
わし
)
はこれだから兎に角世間並にやって行けるのだと思う。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
むしろ私は、私にああした汚点を浸み込ませたのだ——と思うところの、——私の祖母のけちと
因業
(
いんごう
)
とに無限の憤りを感ぜずにはいられないのだ。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
ところがその居酒屋の親爺なる人物が又、人気の荒い大浜界隈でも名打ての
因業
(
いんごう
)
おやじでナカナカそんな
甘手
(
あまて
)
の
元手喰式
(
さやくい
)
慣用手段
(
いんちき
)
に乗るおやじでない。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「邪険でも
因業
(
いんごう
)
でも、吾、何にも構わねえだ。旦那様のおっしゃる通りきっと勤めりゃそれで可いのだ。」
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
使い道を知っているところへは、金というやつは廻って参りません、
因業
(
いんごう
)
なやつでございますねえ
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
過去の
因業
(
いんごう
)
いまだ尽きず、
拙
(
つたな
)
きすゑものつくりにこねられてかかる見にくき姿とはなりける。
土達磨を毀つ辞
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
因業
(
いんごう
)
そうな爺やの顔がふいとその瞬間鮮かに浮んで来ただけ、その閉された小屋は妻がそれをうす気味悪がった以上に、私自身の心に暗い影を与えているにちがいなかった。
朴の咲く頃
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
アオーイ
鰌屋
(
どじょうや
)
、いくらだ一升、ウ、
高
(
たけ
)
え高え負けろ、もう二文負けろィ、あれ
因業
(
いんごう
)
だな、ヤイ負けねえとぶンなぐるぞ、ア負けたか感心なんまいだぶなんまいだぶ、オイ婆さん
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
「
因業
(
いんごう
)
じじいだとか、厄病神だとか、早くくたばっちまえとかさ、ところが、——或るとき躯の調子がおかしくなり、医者に診てもらうと、
腰椎
(
ようつい
)
カリエスだということがわかった」
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
会うが
宜
(
よ
)
いじゃねえか、事に
依
(
よ
)
って金でも呉れさしったら、その金で路用も出来るてえもんだ、二つにはまた
我
(
わ
)
が亭主の居所も知れるかも知れねえだ、そんな
因業
(
いんごう
)
なことを云わねえで
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
青年二
因業
(
いんごう
)
なこと言うなよ。新しいの汲んで来てやったら文句はないだろう。
安重根:――十四の場面――
(新字新仮名)
/
谷譲次
、
林不忘
(著)
その頃段々と家運の傾きかけた祖母の家では前宗(前島宗兵衛)に、十万両と云う途方もない借財を
拵
(
こしら
)
えていましたが、前宗と云う男が、聞えた
因業
(
いんごう
)
屋で、厳しい督促が続いたものですから
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その方を見ると、
黄
(
きい
)
ろな頬の肉の厚いちょいと
因業
(
いんごう
)
らしい婆さんですよ。
雪の夜の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「
因業
(
いんごう
)
な恥知らずのお茶飲みで、二十年間も食事を薄くするにただこの魔力ある植物の振り出しをもってした。そして茶をもって夕べを楽しみ、茶をもって真夜中を慰め、茶をもって
晨
(
あした
)
を迎えた。」
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
ところがその長屋の大屋さんですがちょっとした物持ちでしてな、
因業
(
いんごう
)
だったので憎まれていましたが、大屋のうえに金持ちなので歯が立たず、
店子
(
たなこ
)
たちは歯ぎしりしながらも
追従
(
ついしょう
)
していたそうです。
猿ヶ京片耳伝説
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さういふ或る夜のこと、お銀ちやんの家では例の十七の女——八重ちやんが、うつかりして
因業
(
いんごう
)
なひやかし客を呼び込んだ。二人は、呼び込み口の内と外とで、引つ張つたり引つ張られたりしてゐた。
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
「さあ、あれで
因業
(
いんごう
)
な事が出来るだらうか」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「なんて
因業
(
いんごう
)
な娘つ子だらう」
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
「
因業
(
いんごう
)
な生まれだなあ」
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
割り算は
因業
(
いんごう
)
まざあ・ぐうす
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
少しも面白くはありません。番頭の庄七は
因業
(
いんごう
)
なことに商売のことしか掛引を知らねエ。——さア、何とか、返答せいッ——と脇差を
銭形平次捕物控:131 駕籠の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
貧しい作男の哀願に、堅く財布の口を締めている養父も、傍へお島に来られて
喙
(
くち
)
を
容
(
い
)
れられると、
因業
(
いんごう
)
を言張ってばかりもいられなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「おい、天堂、そいつは少し
因業
(
いんごう
)
すぎるだろう。宅助の事情も聞いてみればもっともなところがある」とお十夜が
仲
(
なか
)
をとって
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かつて英国にいた頃、
精一杯
(
せいいっぱい
)
英国を
悪
(
にく
)
んだ事がある。それはハイネが英国を悪んだごとく
因業
(
いんごう
)
に英国を悪んだのである。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この算用を
算盤
(
そろばん
)
ぱちぱち、五を引いて二が残り、たった三厘の相違があっても
髻
(
たぶさ
)
を
掴
(
つか
)
んで
引摺倒
(
ひきずりたお
)
そうという
因業
(
いんごう
)
な旦那を持ってるから、夜の更けるまで帳場に坐って
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかえしに、
色仕掛
(
いろじか
)
けで、たらしこんでしこたま
金
(
かね
)
を
出
(
だ
)
させてやろうと
考
(
かんが
)
えたつてわけ。ところが、ほんとうに
因業
(
いんごう
)
おやじでどうにもならない。おまけに、
嫌疑
(
けんぎ
)
までかけられてさ。
金魚は死んでいた
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
「差配の
因業
(
いんごう
)
じじい、お梅ばばあのしみったれ」と彼は喚いた
赤ひげ診療譚:03 むじな長屋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
客「どうだもう
帰
(
けえ
)
ろうじゃアねえか、
因業
(
いんごう
)
な
武士
(
さむれえ
)
だ
彼
(
あ
)
の
畜生
(
ちきしょう
)
」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何という
因業
(
いんごう
)
な事でしょう
越年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
慾が深くて
因業
(
いんごう
)
で、若い時からずいぶん人を泣かせてきた様子ですから、どこに
深怨
(
しんえん
)
の
刃
(
やいば
)
を
磨
(
と
)
ぐ者があるかもわからない情勢です。
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「うんにゃ、四匹の虎を退治したあげく、こんどは自分が虎になって、あの
因業
(
いんごう
)
旦那の
曹
(
そう
)
に密告され、たったいま、県役署へ曳かれて行った」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なんぼ
因業
(
いんごう
)
だって、あんな因業な人ったらありゃしないよ。今日が期限だから、是が非でも取って行くって、いくら言訳をいっても、
坐
(
すわ
)
り込んで
動
(
いご
)
かないんだもの。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
騒ぐまいてや、やい、嘉吉、こう見た処で、二
歩
(
ぶ
)
と一両、貴様に
貸
(
かし
)
のない顔はないけれど、主人のものじゃ。
引負
(
ひきおい
)
をさせてまで、勘定を合わしょうなんど
因業
(
いんごう
)
な事は言わぬ。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それほど
性根
(
しょうね
)
には分っていながら、なんで
因業
(
いんごう
)
旦那と有名な
曹家
(
そうけ
)
の酒なぞ食らやがって、いい気になってしまったのか」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ヘエ、——まア、私も悪いには違いありませんが、あんまり
因業
(
いんごう
)
だから、ツイ、面白くないこともありました。
銭形平次捕物控:070 二本の脇差
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ええ、蚊がくうどころのことじゃないわね。お前もあんまり
因業
(
いんごう
)
だ、因業だ、因業だ。」
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「女房は鼻で斃れ、主人は
因業
(
いんごう
)
で斃れ、子分は探偵で斃れか」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
村の
曹閑人
(
そうかんじん
)
というのは、ひどく
因業
(
いんごう
)
で欲張り者という評判で有名な小長者だが、これを聞くと、自身、門を開いて
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あ、
因業
(
いんごう
)
佐野喜の
親爺
(
おやじ
)
か、この春の火事で、女を三人も焼き殺した
楼
(
うち
)
だ。
下手人
(
げしゅにん
)
が多すぎて困るんだろう」
銭形平次捕物控:117 雪の夜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
唯今
(
ただいま
)
は御慮外をいたしまして、恐入ってござります。命を
繋
(
つな
)
ぐためとは申せ、
因業
(
いんごう
)
な
活計
(
くらし
)
でござりまして、
前世
(
さきのよ
)
の罪が思い遣られまする。」と
啜上
(
すすりあ
)
げて、
南無阿弥
(
なむあみ
)
と小声にて唱え
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
殺されたのは、雑司ヶ谷きっての大地主で、
寅
(
とら
)
旦那という四十男、
吝
(
けち
)
で
因業
(
いんごう
)
で、無慈悲で乱暴だが金がうんとあるから、殺されたとなると世間の騒ぎは大きい。
銭形平次捕物控:121 土への愛着
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「後家のお
嘉代
(
かよ
)
というのが荒物屋をやって、内々は高利の金まで廻しているという名代の
因業
(
いんごう
)
屋だろう」
銭形平次捕物控:147 縞の財布
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「言ったよ、待ったなしと言ったに相違ないが、そこを切られちゃ、この
大石
(
たいせき
)
がみんな死ぬじゃないか。親分子分の間柄だ、そんな
因業
(
いんごう
)
なことを言わずに、ちょいとこの石を待ってくれ」
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「桶屋の
甚三郎
(
じんざぶろう
)
と言や、日本橋で知らない者のない
因業
(
いんごう
)
な片意地な人間ですぜ」
銭形平次捕物控:029 江戸阿呆宮
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
“因業”の意味
《名詞》
仏教における因と業。
頑固で無慈悲なさま。
(出典:Wiktionary)
因
常用漢字
小5
部首:⼞
6画
業
常用漢字
小3
部首:⽊
13画
“因業”で始まる語句
因業爺
因業者
因業婆
因業屋
因業面
因業御殿