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喙
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くちばし
ふりがな文庫
“
喙
(
くちばし
)” の例文
吾々に支払う蚊の涙ほどの鑑定料が惜しいのかも知れないが、余計なところには一切
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れさせないのだから詰まらない事
夥
(
おびただ
)
しい。
無系統虎列剌
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
こういう問題に対して自分は到底
喙
(
くちばし
)
を容れる資格のないものであるが、ただ手近な貧しい材料だけについて少しばかり考えてみる。
短歌の詩形
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そこで船頭と相談して舟をやろうとしていると、やがて巨きな
喙
(
くちばし
)
が水の面に出て来た。それは深い
闊
(
ひろ
)
い井戸のようなものであった。
汪士秀
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
僕などからかれこれ
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れられることは、実際迷惑かも知れんが、そこは一つ、年寄の顔を立てると思つて勘弁してもらひたい。
五月晴れ
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「君の家庭のことに
喙
(
くちばし
)
を容れるようですまないが……なぜ君はナヂェージダ・フョードロヴナと一緒に発ってはならんのかね。」
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
▼ もっと見る
たとい口が
喙
(
くちばし
)
になっていても、我々はそこに人らしい表情を強く感ずる。しかるに能面の鬼は顔面から一切の人らしさを消し去ったものである。
面とペルソナ
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
こう云っている男は近眼目がねを掛けた
痩男
(
やせおとこ
)
で、柄にない大きな声を出すのである。
傍
(
そば
)
から遠慮げに
喙
(
くちばし
)
を容れた男がある。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「近頃、当家は、奥と、表とが、混同して参りました。表より、奥を指図するのは、とにかく、奥より、藩政へまで、
喙
(
くちばし
)
を出す方が出来て——」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
日本には、国会開設の催しのある由であるが、外交、兵制、経済の三事は、けっして議院の
喙
(
くちばし
)
をいれさせてはならない。
天皇:誰が日本民族の主人であるか
(新字新仮名)
/
蜷川新
(著)
背中一ぱいに青い波がゆれて、まっかな
薔薇
(
ばら
)
の大輪を、
鯖
(
さば
)
に似て
喙
(
くちばし
)
の尖った細長い魚が、四匹、花びらにおのが胴体をこすりつけて遊んでいます。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「そんなことができるかッ。青二才の分際で、
要
(
い
)
らざる
喙
(
くちばし
)
、大事の
妨
(
さまた
)
げすると、うぬから先に血まつりに捧げるぞ」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
諸君が斯ういふことに
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れないでも、無論学校の方で悪いやうには取計ひません——諸君は勉強が第一です。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「
大坂
(
ダイハン
)
、貴様これからあの女と口を
利
(
き
)
くな。顔もみるな。少しは考えろ」と
喙
(
くちばし
)
を入れるのに松山さんが続けて
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
すべて父母の随意に出るもので子女はその相談にも
与
(
あず
)
かることが出来ない。また
其事
(
それ
)
に
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れる権利もない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
且
(
かつ
)
その学問上に研究する事柄もその方法も本人の思うがまゝに一任して
傍
(
かたわら
)
より
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れず、その成績の果して
能
(
よ
)
く人を利するか利せざるかを問わざるのみか
人生の楽事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
鳥何か言い掛けると蛇を
喙
(
くちばし
)
から
堕
(
おと
)
す。その頭をプレ神踏まえて鳥に虎を追わしめた。蛇の頭
膨
(
ふく
)
れたるはプレ神に踏まれたからで鳥に
啄
(
ついば
)
まれた頸へ斑が出来た。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
あなた方は兄さんの将来について、とくに
明瞭
(
めいりょう
)
な知識を得たいと御望みになるかも知れませんが、予言者でない私は、未来に
喙
(
くちばし
)
を
挟
(
さしは
)
さむ資格を持っておりません。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
他の怪物の一つは、鉄の嘴を持ってきて大異の
脣
(
くちびる
)
に当てた。脣はまたそのまま鳥の
喙
(
くちばし
)
のようになった。
太虚司法伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
殊に公平を第一義とする史学に
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
るるものに在りては、この点において最も厳格ならむことを要す。今の仏教史を口にするもの、よく此の如きなきを必し得るか。
仏教史家に一言す
(新字旧仮名)
/
津田左右吉
、
小竹主
(著)
わしは
他人
(
ひと
)
の内輪のことに
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れるのが嫌いでして——それはあんた御自身の問題ですからなあ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
しんとした中に眼に見えぬ力が
執拗
(
しつえう
)
に彼を圧して来る。彼は身を刺すやうな憎悪を感じた。ビ・リ・リ・リ・リと叫びながら遠野のくれた
喙
(
くちばし
)
の紅い小鳥が籠の中で跳上る。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
娘の体は再び花の中に
埋
(
うず
)
もれたが、やや有って
顕
(
あらわ
)
れた少年の
背
(
せな
)
には、
凄
(
すさま
)
じい
鈎形
(
かぎがた
)
に曲った
喙
(
くちばし
)
が触れた。大鷲は虚を伺って、とこうの
隙
(
すき
)
なく蒼空から襲い
来
(
きた
)
ったのであった。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
以上述べ来った事については多分万葉学者からは貴様の様な門外漢が無謀にも我が万葉壇へ
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
るるとはケシカランことだとお叱りを蒙るのを覚悟のまえで、カクハモノシツ。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
「あんな愚劣なよた者に今後絶対に
喙
(
くちばし
)
を容れさせない解決法が一つあります——」
狼園
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
追々、事態の進捗に際し彼是れ
喙
(
くちばし
)
を入れ、破壊を旨とするがごときは真に国家を憂うるものにあらず、御同様、男子の本分を現わすはこのときにあり、断じてこれを行えば鬼神もこれを
早稲田大学
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
亨一は此話の間に屡々
喙
(
くちばし
)
を
揷
(
さしは
)
さまうとしたがやつと女の詞の句切れを見出した。
計画
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
『
敗
(
ま
)
けてお遣りよ。昌作さんが可哀想だから。』と見物してゐたお柳が
喙
(
くちばし
)
を容れた。不快な顏をして昌作は手を引いた。靜子は氣の毒になつて、無言で昌作の札を一枚自分の方へ取つた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「何だ、何です、君は。突然に人の話の中へ
喙
(
くちばし
)
をいれて、無礼ではないか」
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
イワンは己の
喙
(
くちばし
)
を
挾
(
さしはさ
)
んだのを不快に思つたと見えて、叫ぶやうに云つた。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
これに反して、東洋においては、法は神または君の作ったもので、人民はかれこれ
喙
(
くちばし
)
を容れるべきものでないとなっておったから、法に関する諺が
自
(
おの
)
ずから人民間には出来なかったものであろう。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
思いがけない声を、尚も出し続けようとする口を、押えようとすると、自身すらいとおしんで居た柔らかな唇は、どこかへ行ってしまって、替りに、ささやかな管のような
喙
(
くちばし
)
が来てついて居る——。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
羽山は笑ひつゝ
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れぬ「金貨の一つも拾つたと云ふのか」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
この上無遠慮に
喙
(
くちばし
)
を入れることも
憚
(
はばか
)
られたのであろう。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
喙
(
くちばし
)
の
結
(
むす
)
びたゞしく
しやうりの歌
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
殆ど支那の文献に
喙
(
くちばし
)
を容るゝ資格だに闕けてゐる。それゆゑわたくしの言ふ所には定て誤があらう。どうぞ世間匿好の士に其誤を指擿してもらひたい。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ラウズ英訳『
仏本生譚
(
ジャータカ
)
』一九六に、仏前生飛馬たりし時鬼が島に苦しむ海商どもを救うた事を述べたるにも、その飛馬全身白く
喙
(
くちばし
)
烏に似、毛ムンジャ草のごとく
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
あんな、
喙
(
くちばし
)
の青い、ハムレットだのホレーショーだのと一緒になって、歯の浮くような、きざな文句を読みあげて、いったい君は、どうしたのです。なにが朗読劇だ。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
夫
(
そ
)
れから私の兄は年を取て居て色々の朋友がある。時勢論などをして居たのを聞たこともある、けれども私は夫れに就て
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れるような地位でない。
只
(
ただ
)
追使
(
おいつかわ
)
れる
許
(
ばか
)
り。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
教員会のある度に、意見が
克
(
よ
)
く衝突する。何かにつけて邪魔に成る。
彼様
(
あん
)
な
喙
(
くちばし
)
の黄色い手合が、校長の自分よりも生徒に慕はれて居るとあつては、第一それが小癪に触る。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
であるから外交上の事に
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れる権利はむろんない。またそういう事は出来ない地位に在る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
王はそこで王成の鶉を手に持って、
喙
(
くちばし
)
より
爪先
(
つまさき
)
まで
精
(
くわ
)
しく見てしまって、王成に問うた。
王成
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
一家の批判を、一家として最後最上の批判と信ずるのに、
何人
(
なんぴと
)
も
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れようがない。
文芸委員は何をするか
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
家を持つて間のない道助夫妻が何かしら退屈を感じ出して、小犬でも飼つて見たらなどと考へてる頃だつた、遠野がお祝ひにと云つて
喙
(
くちばし
)
の紅い小鳥を使ひの者に持たせて
寄来
(
よこ
)
してくれた。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
学術上の素養もなく知識もないものが学術的研究に
喙
(
くちばし
)
をいれようとしたり、そういうようなことさえもなかったとはいいがたいが、これではまじめな学術の研究が盛にならなかったのは
日本に於ける支那学の使命
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
亨一は此話の間に屡々
喙
(
くちばし
)
を
挿
(
は
)
さまうとしたがやつと女の詞の句切れを見出した。
計画
(旧字旧仮名)
/
平出修
(著)
額の左右に角のある赤い髪の者、青い髪をして翼の生えた者、鳥の
喙
(
くちばし
)
のような口をして
※牙
(
きば
)
の生えた者、牛のような顔をした者、それらは皆
藍靛
(
あいいろ
)
の体をして、口から火のような焔を吐いていた。
太虚司法伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
公も、もう、お判りになったであろう。奥向より、表のことへ
喙
(
くちばし
)
を入れるは愚か、呪殺まで試みた女を、今日まで生かしておいたのは不思議じゃ。公が、ここまで、お判りなら、論は無い。由羅を
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
かたわらにいたる
旅商人
(
たびあきゅうど
)
は、卒然
我
(
われ
)
は
顔
(
がお
)
に
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れたり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
胡麻塩頭
(
ごましおあたま
)
を五分刈にして、金縁の目金を掛けている理科の教授
石栗
(
いしぐり
)
博士が重くろしい語調で
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れた。
里芋の芽と不動の目
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
医者を評せんと欲せば医者たるべし。至大のことより至細のことに至るまで、他人の働きに
喙
(
くちばし
)
を
容
(
い
)
れんと欲せば、試みに身をその働きの地位に置きて
躬
(
み
)
みずから顧みざるべからず。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
“喙(くちばし)”の解説
くちばし(嘴、喙、觜)とは、鳥類他の採食器官で、上下の顎が突出し、口周辺がひと繋がりの角質の板によって硬くなったもの。頭部の他の部分から滑らかに続くものもあるが、鳥類ではその間に区別がある。唇のような柔軟性がないが、硬いために突くなどする際には効果が大きい。一般には鳥のそれを指す。
(出典:Wikipedia)
喙
漢検1級
部首:⼝
12画
“喙”を含む語句
容喙
口喙
吻喙
喙木鳥
喙長魚
御喙容