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名聞
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みょうもん
ふりがな文庫
“
名聞
(
みょうもん
)” の例文
某
(
それがし
)
年来
桑門
(
そうもん
)
同様の渡世致しおり候えども、
根性
(
こんじょう
)
は元の武士なれば、死後の
名聞
(
みょうもん
)
の儀もっとも大切に存じ、この遺書
相認
(
あいしたため
)
置き候事に候。
興津弥五右衛門の遺書(初稿)
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「これは一藩の大事で、私一個の
名聞
(
みょうもん
)
とはべつの問題です」と代二郎は云った、「——お願いですから暫く一人にさせて下さい」
初夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「いえ私などは旅の
商人
(
あきんど
)
、このような大家のお嬢様と、そんな噂が立とうものなら願ってもない身の
名聞
(
みょうもん
)
、有難いくらいでございますよ」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
芸妓
(
げいしゃ
)
にしたという素敵な玉だわ……あんなのが一人、里にいれば、里の誉れ、まあさね、私のうちへ出入りをすれば、私の内の
名聞
(
みょうもん
)
ですのよ。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
つまり公家らはかくして武家の
名聞
(
みょうもん
)
心を満足させてこれを喜ばすと同時に己らの品位をば保ち得るものと思ったのである。
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
▼ もっと見る
これ以て誠に
名聞
(
みょうもん
)
がましいが、何かの参考になるかも知れないと思って記憶している通りを書き止めておく次第である。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
日ごろ謙譲な性質で、
名聞
(
みょうもん
)
を好まない景蔵のような友人ですらそうだ。こうなると半蔵もじっとしていられなかった。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
... 出した事もありますが、一軒一分か二朱にしきゃァ当りませんで、それは
名聞
(
みょうもん
)
」あなたのようなお方は「実に尊い神様のようなお方だ」と激賞したのち
我が円朝研究:「怪談牡丹灯籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
名聞
(
みょうもん
)
を思うにしても、当代の下劣の人によしと思われるよりは、上古の賢者、未来の善人を
愧
(
は
)
じる方がよい。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
しかも、明慧は、めったに言論を
弄
(
もてあそ
)
ぶような人でなかった。自重して、深く晩節を持し、権力とか、
名聞
(
みょうもん
)
とか、そんなことに軽々しくうごく人でも決してない。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
良沢が蘭学に志を立て申したは、真の道理を究めようためで、
名聞
(
みょうもん
)
利益のためではござらぬゆえ、この学問の成就するよう冥護を垂れたまえと、かように祈り申したのじゃ。
蘭学事始
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
是は
名聞
(
みょうもん
)
のための法会である、名聞のためにすることは魔縁である、と思いついたので、遂に願主と
挘
(
むし
)
りあい的
諍議
(
そうぎ
)
を仕出して
終
(
しま
)
って、折角の法会を滅茶滅茶にして帰った。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
若いとき喧嘩をして、腕に怪我をしてから切り落すようになったんだから、
軍人
(
いくさにん
)
の向う傷と同じで、男にとっては
名聞
(
みょうもん
)
なくらいなものですよ、わたしはあの片腕が大好きなのさ
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
旧識同伴の
間闊
(
とおどおしき
)
を恨み、生前には
名聞
(
みょうもん
)
の遂げざるを
愁
(
うれ
)
え、死後は
長夜
(
ちょうや
)
の
苦患
(
くげん
)
を恐れ、目を
塞
(
ふさ
)
ぎて
打臥
(
うちふ
)
し居たるは、
殊勝
(
しゅしょう
)
に物静かなれども、胸中騒がしく、心上苦しく、三合の病いに
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
秋田屋清左衞門の番頭も、其の頃大名の御家老などが来ると
家
(
いえ
)
の
誉
(
ほま
)
れ
名聞
(
みょうもん
)
だというので、庭の掃除などを厳しく言付けぐる/\見廻って居ります。そらおいでだと云ってお出迎いをいたし
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
唯今日がある、
刹那
(
せつな
)
がある。彼等は神を恐れない。
王者
(
おうしゃ
)
を恐れない。
名聞
(
みょうもん
)
を思わない。彼等は失うべき富もない。
愛
(
おし
)
む可き家族も無い。彼等は其れより以下に落つ可き何等の位置も有たない。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
父さまが
鎌倉
(
かまくら
)
においでなされたら、わたしらもこうはあるまいものを、
名聞
(
みょうもん
)
を好まれぬ職人
気質
(
かたぎ
)
とて、この
伊豆
(
いず
)
の山家に隠れ
栖
(
ずみ
)
、親につれて子供までも
鄙
(
ひな
)
にそだち、しょうことなしに今の身の上じゃ。
修禅寺物語
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
下劣なる趣味を拘泥なく一代に
塗抹
(
とまつ
)
するは学人の恥辱である。彼らが貴重なる十年二十年を
挙
(
あ
)
げて
故紙堆裏
(
こしたいり
)
に
兀々
(
こつこつ
)
たるは、衣食のためではない、
名聞
(
みょうもん
)
のためではない、ないし
爵禄財宝
(
しゃくろくざいほう
)
のためではない。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
不死の神がわたくしに、
二面
(
ふたおもて
)
のある
名聞
(
みょうもん
)
と
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
それは
名聞
(
みょうもん
)
というものだ。達ではない。
現代訳論語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
名聞
(
みょうもん
)
を求めず。栄達を願わず。米塩をかえりみずして、ただ自分自身の芸道の切瑳琢磨と、子弟の
鞭撻
(
べんたつ
)
に精進した……という、ただそれだけの人物であった。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
君恩をかさに着て利欲
名聞
(
みょうもん
)
のほか何ものもない行状は、ごく近ごろのことゆえ、きっと
硫黄
(
いおう
)
ヶ
島
(
しま
)
にいるあいだに、
天魔外道
(
てんまげどう
)
に心を食われ、都返りをして来た者は
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
汲
(
く
)
んで飲むものはこれを飲むがよし、
視
(
なが
)
めるものは、
観
(
み
)
るがよし、すなわち清水の
名聞
(
みょうもん
)
が立つ。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼等が図書のため、疋田家の
名聞
(
みょうもん
)
のために死のうとしてきたことはたしかだ。しかしその他にもう一つ理由がある。それは秋田藩に
於
(
お
)
ける
廻座
(
まわりざ
)
と家中との長い反目不和であった。
三十二刻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
我執
名聞
(
みょうもん
)
を捨てたものの慈悲である。それは仏の真理のために、——正義や善に充たされた世界のために、行なわれるのであって、現世的な効果のために行なわれるのではない。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
謙譲で
名聞
(
みょうもん
)
を好まない景蔵のような人を
草叢
(
くさむら
)
の中に置いて考えることも楽しみに思った。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「何が親切なんだろう、色恋にも
名聞
(
みょうもん
)
というものがあるのに、風呂番と逃げたんでは話にもなにもなりゃしない。ほんとうにわたしは、あの時ぐらい情けなく思ったことはありません」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
名聞
(
みょうもん
)
狂いを嫌うところからこのような山間にくすぶってはいるがどうして勝れた人物であり、いかに相手が金持ちであろうと人格の卑しい紋兵衛などの附き人などに成る人物ではない。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その許しもないのに死んでは、それは
犬死
(
いぬじに
)
である。武士は
名聞
(
みょうもん
)
が大切だから、犬死はしない。敵陣に飛び込んで
討死
(
うちじに
)
をするのは立派ではあるが、軍令にそむいて
抜駈
(
ぬけが
)
けをして死んでは功にはならない。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
私共
(
わたくしども
)
も随分
大火災
(
おおやけ
)
でもございますと、五十両百両と
施
(
ほどこし
)
を出した事もありますが、一軒前一分か二朱にしきゃア当りませんで、それは
名聞
(
みょうもん
)
、貴方は見ず知らずの者へ、おいそれと百両の金子を下すって
文七元結
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかも翁はそのような栄達、
名聞
(
みょうもん
)
を求めず。一意、旧藩主の恩顧と、永年奉仕して来た福岡市内各社の祭事能に関する責務を忘れず、一身を奉じつくして世を終った。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
自分も兵家に生れた
名聞
(
みょうもん
)
に、信玄ほどな年になったら、いちどは信玄のように大兵を自由にうごかしてみたいものだ。——あの
総帥
(
そうすい
)
ぶりを見ては、たとえ今、信玄を毒を
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なぜ手をついて
懺悔
(
ざんげ
)
をしない。悪かった。これからは可愛い娘を決して
名聞
(
みょうもん
)
のためには使いますまい。家柄を鼻にかけて
他
(
ひと
)
の娘に無礼も申掛けますまい、と恐入ってしまわないよ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
名聞
(
みょうもん
)
嫌いの道人様、お城をご出立なさるにも、いずれ
窃
(
こっそ
)
り人知れず、朝か夜分かそんな時刻に、お出ましになるに相違ないと、それで裏門へは妾の父が、そうして表門へは山影様が……」
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
正しい代りに修行が
厳
(
きび
)
しい——厳しい修行で弟子が少ない、もと
名聞
(
みょうもん
)
を好む性質でないから世間からは多く知られていないが、わしとは若い頃から気が合うてよく
交
(
まじ
)
わった——せっかく剣道を
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その全部とはいえないまでも、大部分の武士輩が、北条の下ではうだつも上がらぬものとみて、土地欲、子孫繁栄欲、身一代の
名聞
(
みょうもん
)
欲などを、この風雲に賭けたのであって
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そうせよとわしが命じたのじゃ。田沼の下屋敷を破壊せよと! ……かりにも老中の下屋敷が、市民によって破壊されたとあっては、
名聞
(
みょうもん
)
としても田沼意次、地位にいることは出来まいからな」
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
神宮で持つという方が、
名聞
(
みょうもん
)
にも事実にも
叶
(
かな
)
うものでありましょう。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
派手
(
はで
)
ずきで、
名聞
(
みょうもん
)
を気にする
質
(
たち
)
で、又、儀礼を好む綱吉将軍は、きょうのような柳営の行事に、
忙
(
せわ
)
しく数日を暮すことは、
平常
(
ふだん
)
が退屈きわまる日々なだけに、甚だ張合いがあるらしいのである。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いわゆる世間の
名聞
(
みょうもん
)
利慾からは遠く離れて住み澄ましていたのであった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
甲山
(
こうざん
)
に
鎮守
(
ちんじゅ
)
して二十七
世
(
せい
)
の
名家
(
めいか
)
、
武田菱
(
たけだびし
)
の
名聞
(
みょうもん
)
をなくし、あまたの一
族
(
ぞく
)
郎党
(
ろうどう
)
を討死させた責任をご一
身
(
しん
)
におい、
沙門遁世
(
しゃもんとんせい
)
のご
発心
(
ほっしん
)
! アア、それはよくわかっておりまする! お父上のご心中
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あらゆる
名利
(
みょうり
)
を
名聞
(
みょうもん
)
、また一切の我慾と他慾を——
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“名聞”の意味
《名詞》
世上のうわさ。評判。名声。
名声を得るために体裁を繕うこと。
(出典:Wiktionary)
名
常用漢字
小1
部首:⼝
6画
聞
常用漢字
小2
部首:⽿
14画
“名聞”で始まる語句
名聞心
名聞利養
名聞好
名聞利得
名聞利要