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危惧
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きぐ
ふりがな文庫
“
危惧
(
きぐ
)” の例文
二人が育って行くにつれ、母親にふと
危惧
(
きぐ
)
の念が掠めた。二人があまり気の合っている様子である。青春から結婚、それは
関
(
かま
)
わない。
蝙蝠
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
けれども、はいって来た紳士はしだいに彼の注意を喚起して、それがやがて疑惑となり、不信となり、遂には
危惧
(
きぐ
)
の念とさえなった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「いや、汝の性質は、至って軽忽で、さわがしいばかりであって、そのため事を仕損じ易いから、わしはその点を
危惧
(
きぐ
)
しているのだ」
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
イタリア官憲の危険な遊戯に対する、警告的な
危惧
(
きぐ
)
や抗弁が、ところどころにはさんであった。確実なことはつかめないのである。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
進もうとする吾々には周囲への
躊躇
(
ため
)
らいがなかった。行く末に少しでも
危惧
(
きぐ
)
を抱いたなら、勇気はいつか砕かれていたであろう。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
▼ もっと見る
由来毒をもって鳴るこのふぐなるものも料理に法を得ればなんら
危惧
(
きぐ
)
なくして、口福を満たされることは前申すとおりだ。
河豚食わぬ非常識
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
熱さえ出ればすぐ
産褥熱
(
さんじょくねつ
)
じゃなかろうかという
危惧
(
きぐ
)
の念を起した。母から掛り付けて来た産婆に信頼している細君の方がかえって平気であった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今までいつも、失敗への
危惧
(
きぐ
)
から努力を
抛棄
(
ほうき
)
していた渠が、骨折り損を
厭
(
いと
)
わないところにまで
昇華
(
しょうか
)
されてきたのである。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
彼が宮を追ひて
転
(
まろ
)
び落ちたりし谷間の深さは、
正
(
まさ
)
にこの
天辺
(
てつぺん
)
の高きより投じたらんやうに、
冉々
(
せんせん
)
として虚空を
舞下
(
まひくだ
)
る
危惧
(
きぐ
)
の
堪難
(
たへがた
)
かりしを想へるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その
危惧
(
きぐ
)
をミネはまたミネとして何となく感じていながら、それを貞子の、こまやかな心づかいであり、女としての閑子への思いやりとも理解していた。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
急にすべての事がなんだか思いもよらない方へ往ってしまいそうな
危惧
(
きぐ
)
が、其処には感じられないでもなかった。
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
水戸は、今も自分が怪物団に見つけられはしないと
危惧
(
きぐ
)
しながらも、その位置を動くことはしなかった。もし動けば、たちまち見つけられそうであった。
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
理由はわからないが、検校の言葉が父の心にある
危惧
(
きぐ
)
のおもいを裏づけたというように、……父は眉をひそめ眼をつむって、いっときじっとものおもいに沈んだ。
日本婦道記:墨丸
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これを頭から
撥
(
は
)
ね付けるようなことをしては、又世間の反感を買いはしないか、と云う
危惧
(
きぐ
)
があった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
休んだ日には、山口へというよりも、その友情への
危惧
(
きぐ
)
と申しわけなさとで胸がいっぱいになった。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
かかる再生が日本人に可能かどうか、大なる希望と深い
危惧
(
きぐ
)
の念をもって僕はいまの祖国を眺める。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
息子
(
むすこ
)
の容態もよくはなかった。彼女は二年来たえず
危惧
(
きぐ
)
のうちに暮らしてきた。そしてその危惧は、リオネロから残忍な才能で
弄
(
もてあそ
)
ばれるだけにいっそう募っていった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
奪い去られるかも知れないという
危惧
(
きぐ
)
が、一挙に蟹江の情熱をかき立てたに違いありません。今久美子を失えば、自分の人生はもう終りだ。まったくそんな感じなのでした。
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
私だけは
一
(
ウナ
)
の裏にまたダッシュの
一
(
ウナ
)
がありはしないかと邪推し、嫉妬し、
疑懼
(
ぎく
)
し……その我と我から
醸
(
かも
)
す邪推や
危惧
(
きぐ
)
や、嫉妬の念に堪えやらずして、自分と自分からめった
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その後ろには多勢の人達が非難と
危惧
(
きぐ
)
の眼を光らせて、ヂツと平次の方を見詰めて居ります。
銭形平次捕物控:162 娘と二千両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
後にはその暴挙に対して
危惧
(
きぐ
)
の念を
抱
(
いだ
)
き、次第に手を引いたという閲歴をも持つ人である。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
むやみに
危惧
(
きぐ
)
するのも不道徳かは知らぬが、一般に今日の論文は簡単過ぎる感じがある。
和州地名談
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
今後もそういう
危惧
(
きぐ
)
は夢にも思いがけないが、万一そういう不貞な心が起るとしても、それを予防するものはこの「純潔」を貴び、正しきを欲する性情の威力であると信じている。
私の貞操観
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
我々青年は誰しもそのある時期において徴兵検査のために非常な
危惧
(
きぐ
)
を感じている。
時代閉塞の現状:(強権、純粋自然主義の最後および明日の考察)
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
葉子はこの時古藤とこんな調子で向かい合っているのが恐ろしくってならなくなった。古藤の目の前でひょっとすると今まで築いて来た生活がくずれてしまいそうな
危惧
(
きぐ
)
をさえ感じた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
すべての人に棄てられたるヨブは、いかに三人の来訪を
歓
(
よろこ
)
んだであろうか。遥かに三友を望みし時、彼の心は天にも昇るべく
躍
(
おど
)
ったであろう。しかしヨブにまた
危惧
(
きぐ
)
がないではなかった。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
すると、法水は眉間を狭めて、みるみるその顔に
危惧
(
きぐ
)
の色が波打ってきた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
日露開戦の当初にもまたあるいは同じ困難に陥りはせぬかという
危惧
(
きぐ
)
からして、当時の事を覚えている文学者仲間には少からぬ
恐慌
(
きょうこう
)
を
惹
(
ひ
)
き起し、額を
鳩
(
あつ
)
めた者もなきにしもあらずであったろう。
おばけずきのいわれ少々と処女作
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼の心から、若しもという
危惧
(
きぐ
)
が、
殆
(
ほと
)
んど跡かたもなく薄らいで行った。
月と手袋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ぴんしゃんハネつけられないのが
見
(
め
)
っけものと、お雪ちゃんとしても、多少
危惧
(
きぐ
)
してかかったのでしょうけれども、それが存外物やわらかな手ごたえがあったものでしたから、まず安心していると
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あなたは、だから、すべての小さな
氣紛
(
きまぐ
)
れや、感情の上の
些細
(
ささい
)
な困難や躊躇や、單に一個人の傾向の度合や種類や強さ、
優
(
やさ
)
しさなどに對する
危惧
(
きぐ
)
を乘り超えて直ぐにその結合に這入つて了ふでせう。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
彼女は十二分に持っているんです……全然、あなたの
危惧
(
きぐ
)
ですよ
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
賢なる母親は、あんまり年若く名をなした息子の盛名が、昨今、すこしなまっているので、なんとなく前途を
危惧
(
きぐ
)
していた。地方の豪家と縁を結んでおけば——そんな下心がないともいわれなかった。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
はたして、
危惧
(
きぐ
)
は実現した。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
二人が育つて行くにつれ、母親にふと
危惧
(
きぐ
)
の念が
掠
(
かす
)
めた。二人があまり気の合つてゐる様子である。青春から結婚、それは
関
(
かま
)
はない。
蝙蝠
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
でなければ、もし海上で、尊氏方の伏兵に、背後でも断たれたら、どうしようもないという、戦略上の
危惧
(
きぐ
)
だったかもわからない。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『つまりなんというか、いろいろ多くの複雑な精神上、物質上の影響や、不安や、
危惧
(
きぐ
)
や、気苦労や、ある二、三の観念や……その他そういったものの産物』
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
人間はふぐの有毒部分を取り除き、天下の美味を誇る部分をのみ、
危惧
(
きぐ
)
なく舌に運ぶことを発見したのだ。
河豚は毒魚か
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
強
(
し
)
いて自ら
危惧
(
きぐ
)
の念を
嘲
(
あざけ
)
って、とう/\あの人の
袂
(
たもと
)
の端を、左大臣に
執
(
と
)
らせてしまったのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
自殺するか、尼になるか、ともかくその一生を放棄する手段にでる、という
危惧
(
きぐ
)
が十分にあった。
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
人生は何事をも
為
(
な
)
さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を
弄
(
ろう
)
しながら、事実は、才能の不足を
暴露
(
ばくろ
)
するかも知れないとの
卑怯
(
ひきょう
)
な
危惧
(
きぐ
)
と
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
善良なラインハルト夫人は、それらの理由もない
危惧
(
きぐ
)
について、幾度も親切に彼女をたしなめてやらなければならなかった。そしてしばらくは彼女を安心させることができた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
マジャルドーの
危惧
(
きぐ
)
している物質上の問題なぞは、何の関心でもあり得ないのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
みなさんは
長途
(
ちょうと
)
のお疲れもあることとて、すべての心配と
危惧
(
きぐ
)
をすててとうぶんはゆっくりとお好きなものをたべ、お気にいったところを散歩して、健康を回復していただきましょう。
怪星ガン
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
実に今回のバッタ事件及び
咄喊
(
とっかん
)
事件は
吾々
(
われわれ
)
心ある職員をして、ひそかに
吾
(
わが
)
校将来の
前途
(
ぜんと
)
に
危惧
(
きぐ
)
の念を
抱
(
いだ
)
かしむるに足る
珍事
(
ちんじ
)
でありまして、吾々職員たるものはこの際
奮
(
ふる
)
って自ら省りみて
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
臆病
(
おくびょう
)
な驚きと
躊躇
(
ちゅうちょ
)
とで迎える事によって、倉地に自分の心持ちの不徹底なのを見下げられはしないかという
危惧
(
きぐ
)
よりも、倉地が自分のためにどれほどの堕落でも汚辱でも甘んじて犯すか
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
久良山三五郎の船と、平次の船は、凉み船の間を漕ぎ拔けて、橋架の下から顏を出すと、これはまた、一ときは大型の屋形船が一艘、滿船の
危惧
(
きぐ
)
を
孕
(
はら
)
んで、物々しくも沸き返つてゐるのです。
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ようやく
危惧
(
きぐ
)
の念を抱き始めたものもある。強い刺激を受けたものもある。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
至高の権威を、詔勅におかんとしたのが太子だったのである。当時これはいかなる意味をもっていたであろうか。一言で云うならば、勢力ある氏族の専横を深く
危惧
(
きぐ
)
された上での決断であった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
僕は自分の新しい生活が——僕としてよりも、僕達としての生活が、——自分の今後の仕事の上にどんな影を投げるものか、胸のおどるような期待と、同時に一種の
危惧
(
きぐ
)
をもたずにはおられません。
「美しかれ、悲しかれ」:窪川稲子さんに
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
“危惧”の意味
《名詞》
危 惧 (きぐ)
あやぶみ、おそれること。
(出典:Wiktionary)
危
常用漢字
小6
部首:⼙
6画
惧
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
“危惧”で始まる語句
危惧心