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そうそう
ふりがな文庫
“
匇々
(
そうそう
)” の例文
お恥かしい話ではあるが開業
匇々
(
そうそう
)
の好景気に少々浮かされ気味の私は、いつの間にか学生時代とソックリの
瓢軽者
(
ひょうきんもの
)
に立ち帰っていた。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
なるほどそう云われて見れば、あの
愛敬
(
あいきょう
)
のある田中中尉などはずっと前の列に加わっている。保吉は
匇々
(
そうそう
)
大股
(
おおまた
)
に中尉の側へ歩み寄った。
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
門弟
為
(
な
)
す所を知らずして恐る恐る理由を問うこと再三に及びし時、妾は盲人なれども鼻は
確
(
たしか
)
なり、
匇々
(
そうそう
)
に去って
含嗽
(
がんそう
)
をせよと云いしとぞ
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
帰って来て
匇々
(
そうそう
)
吉田は自分の母親から人間の
脳味噌
(
のうみそ
)
の黒焼きを飲んでみないかと言われて非常に嫌な気持になったことがあった。
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
小鴨の黄色い毛が褪せるようになってからエロシンコ君はたちまちロシヤの母親を想い出し、チタに向って
匇々
(
そうそう
)
立去った。
鴨の喜劇
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
▼ もっと見る
せぬように、御無事で帰るようにとは、ほんのりとキナ臭い匂いが致して、兄ながら只ではききずてならぬ申し条じゃ。では、
匇々
(
そうそう
)
に乗り物の用意せい
旗本退屈男:09 第九話 江戸に帰った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「また?
能
(
よ
)
く
叱
(
しか
)
られるのね。御帰り
匇々
(
そうそう
)
、随分気が
利
(
き
)
かないわね。
然
(
しか
)
し
貴方
(
あなた
)
もあんまり、
好
(
よ
)
かないわ。
些
(
ちっ
)
とも御父さんの云う通りになさらないんだもの」
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
もはやわたしは見るにたえなくなって、
匇々
(
そうそう
)
に海を出、重いこころをいだいて、山の池にかえりました。
人魚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
光陰
匇々
(
そうそう
)
電気の鉄線を走るよりも急なり。昨日ぞ今日の昔なる。一日また一日、行きやまずんば今日において遙々万里の将来もまたたちまちにして他日の現今とならん。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
そのあとを彼は女に向いて云った、「そなたも久しぶりで人間の顔を見るわけじゃ、まもなく
餅撒
(
もちま
)
きがはじまりましょう故、縁起を拾うて
匇々
(
そうそう
)
に戻るがよい、衣類はこれで上等」
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
姉がしきりに
頭
(
かしら
)
をふるを「何? 何?」と問うに、紅リボンは顔をしかめて「いやな人だよ」と思わず声高に言って、しまったりと言い顔に肩をそびやかし、
匇々
(
そうそう
)
に去り行きたり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
私はなんでも初めよし後悪し、竜頭蛇尾の性格で、昔やった職業でも、入社
匇々
(
そうそう
)
は大いに好評を博するのだが、慣れるにしたがって、駄目になってしまう。飽き性というのであろう。
自作解説:怪人二十面相と少年探偵団
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その時なんぞは銀行からお帰り
匇々
(
そうそう
)
と見えまして、白襟で小紋のお召を二枚も
襲
(
かさ
)
ねていらっしゃいまして、早口で弁舌の
爽
(
さわやか
)
な、ちょこまかにあれこれあれこれ、始終
小刻
(
こきざみ
)
に体を動かし通し
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……先日は貞助様(領左衛門舎弟)御入京御座候ところ御
匇々
(
そうそう
)
にて残意少からず存じ奉り候。さて愚意
聊
(
いささ
)
か
御咄
(
おはな
)
し申し候ところ、御承知にて早速金百両御差し向け下され、
慥
(
たしか
)
に
収手
(
しゅうしゅ
)
御芳情感佩奉り候。
志士と経済
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
使番
(
つかいばん
)
大番頭五百石多賀一学などが
暇乞
(
いとまご
)
いをして
匇々
(
そうそう
)
に退散した。
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
匇々
(
そうそう
)
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
僕はもう一度人目に見えない苦しみの中に落ちこむのを恐れ、銀貨を一枚投げ出すが早いか、
匇々
(
そうそう
)
このカッフェを出ようとした。
歯車
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「なぜお
躊
(
ため
)
らい召さる。征夷将軍がお墨付に
対
(
むか
)
って、乗物のままは無礼でござろうぞ。
匇々
(
そうそう
)
に土下座さっしゃい」
旗本退屈男:05 第五話 三河に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
フンシへ小便を垂れるようになってくれたら大丈夫だと、それを頼みにしていたのだが、来る
匇々
(
そうそう
)
からこんな調子では、直ぐにも逃げられてしまいそうに思えた。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
御購求の上御侍女の方へなりとも御分与
被成下候
(
なしくだされそろ
)
て御賛同の意を御表章
被成下度
(
なしくだされたく
)
伏して懇願仕
候
(
そろ
)
匇々
(
そうそう
)
敬具
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「実はそこのところをお願いに参りましたので、臼杵君も開業
匇々
(
そうそう
)
赤の縄付を出したとあっては……」
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
身嗜
(
みだしな
)
みが奇麗で、喬は女にそう言った。そんなことから、女の口はほぐれて、自分がまだ出て
匇々
(
そうそう
)
だのに、先月はお花を何千本売って、この
廓
(
くるわ
)
で四番目なのだと言った。
ある心の風景
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
匇々
(
そうそう
)
門を締めて、余計なことに関係せぬに越したことはないから、真先きに人声が絶え、続いて次から次へと燈火を消してしまうので、冴え渡った月が独りゆるゆると寒夜の空に出現した。
白光
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
武男は
匇々
(
そうそう
)
に
老爺
(
じじい
)
に別れて、
頭
(
かしら
)
をたれつつ
出
(
い
)
で去りぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
僕はもう一度人目に見えない苦しみの中に落ちこむのを恐れ、銀貨を一枚投げ出すが早いか、
匇々
(
そうそう
)
このカツフエを出ようとした。
歯車
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
自分がいかにも病人らしい悪い
顔貌
(
がんぼう
)
をして歩いているということを思い知らされたあげく、あんな重苦しい目をしたかと思うと半分は腹立たしくなりながら、病室へ帰ると
匇々
(
そうそう
)
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
来る
匇々
(
そうそう
)
からこんな調子では、直ぐにも逃げられてしまひさうに思へた。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「どうしたんだい。正月
匇々
(
そうそう
)
……」
呑仙士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そいつが中々
踔厲風発
(
たくれいふうはつ
)
しているから、面白がって前の方へ出て聞いていると、あなたを一つかけて上げましょうと云われたので、
匇々
(
そうそう
)
退却した。
田端日記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わたしは彼の言葉の中にはっきり軽蔑に近いものを感じ、わたし自身に腹を立てながら、
匇々
(
そうそう
)
この店を
後
(
うし
)
ろにした。しかしそれはまだ善かった。
夢
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
やっと笑う事もあるようになったと思うと、二十七年の春
匇々
(
そうそう
)
、夫はチブスに
罹
(
かか
)
ったなり、一週間とは
床
(
とこ
)
につかず、ころりと死んでしまいました。
捨児
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そこですぐに相談が
纏
(
まとま
)
って、ものの五分と経たない内に、二人は夏羽織の肩を並べながら、
匇々
(
そうそう
)
泰さんの家を出ました。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は結婚した翌日に「
来
(
き
)
匇々
(
そうそう
)
無駄費ひをしては困る」と彼の妻に小言を言つた。しかしそれは彼の小言よりも彼の伯母の「言へ」と云ふ小言だつた。
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そんな事を
繰
(
く
)
り返している内に、僕はだんだん酒を飲むのが、妙につまらなくなって来たから、何枚かの
銭
(
ぜに
)
を
抛
(
ほう
)
り出すと、
匇々
(
そうそう
)
また舟へ帰って来た。
奇遇
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
翌朝俊吉は一張羅の背広を着て、食後
匇々
(
そうそう
)
玄関へ行つた。何でも亡友の一周忌の墓参をするのだとか云ふ事であつた。
秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
明治元年五月十四日の
午
(
ひる
)
過ぎだつた。「官軍は明日夜の明け次第、東叡山彰義隊を攻撃する。上野
界隈
(
かいわい
)
の町家のものは
匇々
(
そうそう
)
何処
(
どこ
)
へでも立ち
退
(
の
)
いてしまへ。」
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は息苦しい一瞬の後、今日も薔薇を髪にさした
勝美
(
かつみ
)
夫人を
冷
(
ひややか
)
に眺めながら、やはり無言のまま
会釈
(
えしゃく
)
をして、
匇々
(
そうそう
)
俥
(
くるま
)
の待たせてある玄関の方へ急ぎました。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さめざめと泣き沈み、種々申し慰め候へども、一向耳に掛くる体も御座無く、且は娘容態も詮無く相見え候間、止むを得ず
再
(
ふたたび
)
下男召し
伴
(
つ
)
れ、
匇々
(
そうそう
)
帰宅仕り候。
尾形了斎覚え書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
刹那
(
せつな
)
の
間
(
あいだ
)
こんな事を考えた自分は、泣いて
好
(
い
)
いか笑って好いか、わからないような感動に圧せられながら、外套の襟に顔を
埋
(
うず
)
めて、
匇々
(
そうそう
)
カッフェの外へ出た。
毛利先生
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
自分は「よく寝てゐます」とぶつきらぼうな返事をして、泣顔を見られるのが嫌だつたから、
匇々
(
そうそう
)
凩の往来へ出た。往来は
相不変
(
あひかはらず
)
、砂煙が空へ舞ひ上つてゐた。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、短い日限内に、果すべき用向きの多かつた夫は、唯彼女の母親の所へ、
来
(
き
)
匇々
(
そうそう
)
顔を出した時の外は、殆一日も彼女をつれて、外出する機会を見出さなかつた。
秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「じゃ僕は失敬しよう。いずれまた。」と、取ってつけたような
挨拶
(
あいさつ
)
をして、
匇々
(
そうそう
)
石段を下りて行った。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お蓮はここへ来た時よりも、一層心細い気になりながら、高い
見料
(
けんりょう
)
を払った
後
(
のち
)
、
匇々
(
そうそう
)
家
(
うち
)
へ帰って来た。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
打ち明けてそう尋ねる
訣
(
わけ
)
にも行かず、また尋ねたにした所で、余人の知っている筈もありませんから、帰り
匇々
(
そうそう
)
知らせてくれるようにと、よく番頭に頼んで置いて
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「恩を
讐
(
あだ
)
で返すにつくいやつめ。
匇々
(
そうそう
)
土の牢へ投げ入れい。」と、大いに
逆鱗
(
げきりん
)
あつたによつて、あはれや「れぷろぼす」はその夜の内に、見るもいぶせい地の底の牢舎へ
きりしとほろ上人伝
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さて若殿様は
平太夫
(
へいだゆう
)
を御屋形へつれて御帰りになりますと、そのまま、
御厩
(
おうまや
)
の柱にくくりつけて、
雑色
(
ぞうしき
)
たちに見張りを御云いつけなさいましたが、翌朝は
匇々
(
そうそう
)
あの
老爺
(
おやじ
)
を
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そこで私と甥とは、太刀を鞘におさめる
間
(
ま
)
も惜しいように、
匇々
(
そうそう
)
四条河原から逃げ出しました。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
過てるを知って
憚
(
はばか
)
る
事勿
(
ことなか
)
れとは、
唐国
(
からくに
)
の聖人も申された。一旦、仏菩薩の妖魔たる事を知られたら、
匇々
(
そうそう
)
摩利の教に帰依あって、天上皇帝の御威徳を
讃
(
たた
)
え奉るに
若
(
し
)
くはない。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
純粋な
羞恥
(
しゅうち
)
の血を頬に上らせながら、まるで弟にでも対するように、ちょいと大井を
睨
(
ね
)
めると、そのまま派手な
銘仙
(
めいせん
)
の
袂
(
たもと
)
を
飜
(
ひるがえ
)
して、
匇々
(
そうそう
)
帳場机の方へ逃げて行ってしまった。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そこで幇間が、津藤に代つて、その客に
疎忽
(
そこつ
)
の詑をした。さうしてその間に、津藤は芸者をつれて、
匇々
(
そうそう
)
自分の座敷へ帰つて来た。いくら
大通
(
だいつう
)
でも間が悪かつたものと見える。
孤独地獄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
匇
部首:⼓
5画
々
3画
“匇々”で始まる語句
匇々不一