助太刀すけだち)” の例文
その格闘史としては、古今無類の七条油小路の現場へ駈けつけて、そのいずれかの一方へ助太刀すけだちをするかと思えばそうではない。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
古い宿場の御伝馬役として今までどおりのわがままも言えなくなるとみて取った人たちの助太刀すけだちは、一層その不平の声を深めた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
車掌の言い草もかなり横暴なので、スラヴ族は多血質だ。むかっとして、頼まれもしないのに、女の助太刀すけだちに飛び出して行く。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
見込で御頼みとあれば假令たとへ親兄弟おやきやうだいたりとも義に依ては急度きつと助太刀すけだち致すべしと言へば掃部は聞て偖々さて/\頼母たのもしき御心底しんていかんじ入たり然樣さやう御座らば何を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
直接売られた喧嘩は言わずもがな、他人の喧嘩でも、助太刀すけだちさえ頼まれれば、いつどこへでも飛びこんで行って、理窟りくつのあるほうに味方をする。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一つは警視総監の鼻を明かし旁々かたがた、呉井嬢次の讐討かたきうちの助太刀すけだちをするに就いて、準備的の偵察をこころみるために……それからもう一つは嬢次少年が
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
龍太郎りゅうたろう助太刀すけだちにでようとおもうまに、みごとに勝負をつけてしまった若者の早技はやわざに、したをまいて感嘆かんたんしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平「気性きしょうな奴だ、心配いたすな、かたきの知れた其の時は、此の飯島が助太刀すけだちをして敵を屹度きっと討たせてやるから、心丈夫に身をいとい、随分大切に奉公をしろ」
なんという壮観だったろう! おれはホッと溜息ためいきを吐いた。そばから助太刀すけだちに出ようという気も起こらない。
左近はこう咄嗟とっさに決心すると、身仕度をする間も惜しいように、編笠をかなぐり捨てるが早いか、「瀬沼兵衛せぬまひょうえ加納求馬かのうもとめが兄分、津崎左近が助太刀すけだち覚えたか。」
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
打つつぶてあやまってその身に返る事はあっても、弾丸たまは仕損じてもあなたを損いはしません。助太刀すけだちの志です。
自分は紺野どのの介添かいぞえとして来たが、ばあいによっては助太刀すけだちをすると思ってもらいたい、吉川十兵衛。
失蝶記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「さようじゃ。いろいろ考え合わしてみるに、てっきりそのほうのしわざとめぼしがついたゆえ、かく黙山同道にて助太刀すけだちに参ったのじゃが、目きき違いじゃと申すか」
そののち、母の死際しにぎわに着てゐた小袖が証拠になつて、不思議にも隣のいえ主人あるじがその盗人ぬすびとであることが判つたので、かれは自分の主人しゅじん助太刀すけだちをかりて、母のかたきを討つた。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
その又助は佞姦狡猾ねいかんこうかつ、九十郎へ助太刀すけだちしようともせず、若侍と一緒になって、織江を手取りにしようともせず、両者の間の位置に佇み、依然として胸へ腕を組み、両方へまなこを配っている。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
若旦那も時々助太刀すけだちに出かける。それが大変に丁寧な言葉をつかっているのに対して女学生の言葉が思いの外にぞんざいである。問答ばかりでなかなか容易には肝心の針の方に手が行かない。
千人針 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
と、竜一の父は、俊亮の助太刀すけだちでもしているかのような口調くちょうだった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
僕は様子を立聞して、臨機応変の助太刀すけだちを為るから
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
清兵衛は朝月の助太刀すけだちに力を
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
芸妓連は、悲鳴を上げて逃げるのもあれば、遠くから石を投げて助太刀すけだちのつもりでいるのもある。弥次の石が、飛びはじめる。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一つには、恩義のある咲耶子さくやこへの助太刀すけだち、われと思わんものはつづけ、御旗みはた楯無たてなしをうしなって、武田たけだの家なく、武田の家なくして、この伊那丸はないぞ!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おおさ。しかも馬場先の晴れの場所で、助太刀すけだちらしい武士が二人引添うておったがいささか肝を奪われたわい。面目ない話じゃが聊か身に覚えのない事じゃまで……」
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
真の侠客じゃとお父様がおめ遊ばした、の家に奉公し、辛抱して親のあだが知れた時、お助太刀すけだちをねがうと云ったら、文治郎さまが助太刀をして下さるだろうと考えて居ります。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
起せり友次郎も始はお花が色香いろかまよ出國しゆつこくしたるあやまちは有どものちにお花が助太刀すけだちして美名びめい世上せじやうに上たる事是ひとへに岡山侯の賢良けんりやうなるより下にも又斯る人々ありしと其頃世上にうはさせり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ア、あの、タッ、たたたッ丹下、舟下左膳の助太刀すけだちじゃ。余から頼む、おもてだって城内のものをやられん筋じゃ。で、ココ、ここは、ど、どうしても軍之助、ソ、そちの出幕でまくじゃ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
甚太夫は平太郎の死に責任の感をまぬかれなかったのか、彼もまた後見うしろみのために旅立ちたい旨を申し出でた。と同時に求馬と念友ねんゆうの約があった、津崎左近つざきさこんと云う侍も、同じく助太刀すけだちの儀を願い出した。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
女を討ったと云われては、末代まで、高安平四郎の恥になるから、生命いのちだけは助けてくれる。はやく城内へ戻って、好きな甚三郎でも、助太刀すけだちに連れて来い。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その宇津木兵馬に、近藤、土方らが助太刀すけだちして、近いうち貴殿の首を取りに来るそうじゃ」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とられしと云もをはらぬに重四郎成程なるほど金兵衞親方が殺されたと云うはさは聞たれ共人の云事ゆゑ實正じつしやうとも思はざりしが夫なら彌々いよ/\人手ひとでかゝられしかしてかたきは知しかと聞に掃部されば其事に付貴殿へ助太刀すけだち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
文「それでござる、其の時お助太刀すけだちは誓って御無用でござりますぞ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
助太刀すけだちはゆるさぬぞ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
するとまた、木戸を蹴破ってきた一人の助太刀すけだち、常木鴻山こうざんである。常木流の捕縄術ほじょうじゅつは自他共にゆるす名人。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お前の助太刀すけだちで難をのがれたが、いつも道庵は、用心棒がなければひとり太刀が使えねえということに見られると名折れだから、今度、途中で万が一、いかなる狼藉者ろうぜきものが現われようとも
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
敵は二千五百人——こちらは重太郎を主として後藤、塙の助太刀すけだち、都合三人。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あんな助太刀すけだちがうしろをいてこようとは思わなかったからなあ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女でも薙刀なぎなたの一手も心得ていようものなら、あとから助太刀すけだちと出るところなんですが、悲しいことにわたしは花鋏はなばさみよりほかに刃物を扱ったことがない女でございますから、こわい思いをしながら
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
(しかも、助太刀すけだちたのんで……)
御鷹 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男の助太刀すけだちが無けりゃできねえんだから……
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)