供養くやう)” の例文
終夜よもすがら供養くやうしたてまつらばやと、御墓の前のたひらなる石の上に座をしめて、経文きやうもんしづかにしつつも、かつ歌よみてたてまつる。
感じ懇切ねんごろ供養くやうをなして後九助の額を熟々つく/″\と見貴殿こなたは大なる厄難やくなんあり是はのがれ難きにより隨分ずゐぶんつゝしみを第一に致されよと申を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かくてその黄昏たそがれにいたり、源教げんけうは常より心して仏に供養くやうし、そこらきよらになしきやうたり。七兵衛はやきたりぬ。
それともとむらはれずかばぬれいが、無言むごんうち供養くやうのぞむのであらうもれぬ。ひとりではなにしろおもい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
惡戯者を搜すのが何よりの供養くやうぢや——拙者も包み兼ねて、實はかう/\と、平次殿のことを申上げると、ではその平次殿とやらに、早速、屋敷へ來て頂くやうに
彼は亡父の供養くやうの為めに帰郷したのであつた。一週間ほど滞在する予定だつた。私はその間、彼の家を毎晩のやうに訪ねて佐世保の造船所の有様を彼に聞かせて貰つた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
経を考ふるに云はく、し国土に講宣かうせん読誦どくじゆ恭敬くぎやう供養くやうして此の経を流通るつうせるきみ有らば、我等が四王常に来りて擁護ゆごし、一切の灾障さいさうみな消殄せうでんせしめむ。憂愁うしう疫疾やくしつまた除きいやさしめむ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
これを見ると、父は十年前に高野山にのぼり偶然にも北室院に宿泊して、宿料が一円五十銭なのに、日牌料につぱいれう七円五十銭も上げてゐる、これは、僕の母のために供養くやうして貰つたのに相違ない。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
千代 今日は最勝寺さまの御会式ぢやさかいに、死んだ娘と、この子の父御ててご供養くやうしておぢやつた。さと母様かかさまきつう止めるゆゑ、つい遅うなつて、只今帰るところぢや。してお前は何処からぢやえ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
せめて、さうした尽し方をしてやるより、おせいへの供養くやうはないのだ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
二〇一宿ひとよ供養くやうして二一罪をあがなひたてまつらんと、二二ゐやまひて奥の方に迎へ、こころよく食をもすすめてもてなしけり。
相守り悴道之助養育やういくに及びまかり在候段神妙しんめうの至りに候之に依て夫道十郎儀罪科ざいくわ悉皆こと/″\差許さしゆるされ候追善つゐぜん供養くやう勝手かつて次第爲可なるべく且又御褒美はうびとして銀二枚取せ遣はす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ところで、一せんたりとも茶代ちやだいいてなんぞ、やす餘裕よゆうかつたわたしですが、……うやつて賣藥ばいやく行商ぎやうしやう歩行あるきます時分じぶんは、兩親りやうしんへせめてもの供養くやうのため、とおもつて
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お前の尺八は供養くやうになるのか。——尤もあの晩は大層うまかつたといふが」
此事こゝかしこにつたきこえて話柄はなしのたねとしけるが、こゝろざしあるものゝいふやう、源教がもちしかの髪の毛をうづ石塔せきたふたて供養くやうせば、お菊が幽魂いうこん黄泉地よみぢのかげにもよろこびなんといひいだししに
なし七日々々の追善つゐぜん供養くやういと念頃ねんごろとむらひ兄弟にぞこもりける然るに半四郎はかねての孝心ゆゑ親の亡後なきあとは兄の半作を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
朝鳥あさとりこゑおもしろく鳴きわたれば、かさねて一三七金剛経こんがうきやうくわん供養くやうしたてまつり、山をくだりていほりに帰り、しづかに終夜よもすがらのことどもを思ひ出づるに、平治の乱よりはじめて、人々の消息