佛蘭西フランス)” の例文
新字:仏蘭西
こないだ雜誌だか新聞だかでひよいと讀んだ話であるが、佛蘭西フランスのある市のある家の一室である朝中年の紳士がピストルで顳顬を貫かれて死んでゐた。
探偵小説の魅力 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
蟋蟀こほろぎが鳴く夏の青空あをぞらのもと、神、佛蘭西フランスうへに星のさかづきをそそぐ。風は脣に夏のあぢはひを傳ふ。銀砂子ぎんすなごひかり凉しき空の爲、われは盃をあげむとす。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
わたくし三々五々さん/\ごゞむれをなして、其處此處そここゝつてる、顏色いろ際立きはだつてしろ白耳義人ベルギーじんや、「コスメチツク」で鼻髯ひげけんのやうにかためた佛蘭西フランス若紳士わかしんし
内のお嬢さんは麹町こうじまちの高等女学校へ通って居らしって、英語は勿論佛蘭西フランス語もお出来になるし、外国の文学だの音楽だのをたしなんで居らっしゃるようだから
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
巴里パリーはどこの都ですか」とおたずねになった。すると「佛蘭西フランスの都であります」と光子がうれしそうに答えた。
先生の顔 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
なかちやうから檜町ひのきちやうの高臺にあがると、麻布あざぶの龍土町である。そこの第一聯隊と第三聯隊との間に龍土軒と云ふ佛蘭西フランス料理屋がある。そこが龍土會の會場であつた。
佛蘭西フランス共和政府はフオンテンブロオ深林の老樹を保養するに醫藥の費を惜しまないといふ事である。
十年振:一名京都紀行 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
佛蘭西フランスなる諸作家バルザツク、ユウゴオ、ゾラ、ドオデエの徒は、或は人情派のさかひを超えて、人間派に入れりともいふべからむが、これとてもまた近世の作家なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
待合室では、眞赤に喰ひ醉うた金襴の袈裟の坊さんが、佛蘭西フランス人らしい髯の長い宣教師を捉へて、色々管を捲いて居る。宣教師は笑ひながら好い加減にあしらつて居る。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
藤の花蔭に長い籐椅子に倚つて居る白衣の獨逸婦人などを美しく思つて過ぎた。伯林へ着く前に私は寢臺を作らせて寢た。十九日の朝佛蘭西フランスの國境で汽車賃を十圓追加された。
巴里まで (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
『あァわかつた佛蘭西フランスねずみだわ、ウィリアムだいせいと一しよた』(歴史れきしならつたけれどもあいちやんは、なに何年位なんねんぐらゐまへおこつたこと判然はツきりりませんでした)そこまたあいちやんがふには
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
けふは何の新しき事をもたらし給ふ。佛蘭西フランス新聞には何の記事かありし。昨夜はいづくにてか時を過し給ひしと問ひぬ。ジエンナロ。新聞には珍らしき事も候はず。昨夜は劇場にまゐりぬ。
りともらぬミハイル、アウエリヤヌヰチは、大得意だいとくいで、佛蘭西フランス早晩さうばん獨逸ドイツやぶつてしまふだらうとか、モスクワには攫客すりおほいとか、うま見掛計みかけばかりでは、其眞價そのしんかわからぬものであるとか。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
何も伊太利イタリーとばかりは限らない。佛蘭西フランスでも、英国でも乃至ないし印度インドだの波斯ペルシャだの埃及エジプトだの亜剌比亜アラビヤだのと云う国でも、まだ日本よりは遥かに増しのように感ぜられる。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わたくし世界せかい漫遊まんゆう目的もくてきをもつて、横濱よこはまみなと出帆ふなでしたのは、すで六年ろくねん以前いぜんことで、はじめ亞米利加アメリカわたり、それから大西洋たいせいよう荒浪あらなみ横斷よこぎつて歐羅巴エウロツパあそび、英吉利イギリス佛蘭西フランス
英吉利イギリスはなれて佛蘭西フランスちかく——
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
敏子ガ部屋借リヲシテイル家ノ名前モ、ソレガ日本人ヲ夫ニ持ツ佛蘭西フランス婦人ノ家デ、ソノ人ハ同志社大学ノ佛語教師デアルヿハ分ッテイタガ、名前ハドウシテモ出テ来ナカッタ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
鐵車てつしや深林しんりんくには、一層いつそう巧妙こうめうなる器械きかいがある、それは鐵車てつしや前方ぜんぽう木牛頭もくぎうとう上下じやうかより突出とつしゆつして、二十一の輪柄りんぺいいうする四個しこ巨大きよだいなる旋廻圓鋸機せんくわいゑんきよきと、むかし佛蘭西フランス革命時代かくめいじだい
早い話が、映画を見ても、アメリカのものと、佛蘭西フランス独逸ドイツのものとは、陰翳いんえいや、色調の工合が違っている。演技とか脚色とかは別にして、写真面だけで、何処かに国民性の差異が出ている。
陰翳礼讃 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)