世辭せじ)” の例文
新字:世辞
どんなにかあなたのことをお愛し申してゐるので、あなたに、お世辭せじなど云へませんわ。私にお世辭は、お止めになつて下さい。
二十三といふ若盛り、純情家らしくて危な氣はありますが、その代り世辭せじも驅け引もないと言つた、生一本の良い男です。
殿との御覽ごらうじ、早速さつそく伺候しこう過分々々くわぶん/\御召おめしの御用ごよう御用ごようだけ、一寸ちよつと世辭せじくだかれ、てしか/″\の仔細しさいなり。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いくらお世辭せじをつかつても屹度きつところされてしまうにちがひないとおもつて、心配しんぱいあまりガタ/\ふるへてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
いまいまなくなつたらさびしかろうとおひなされたはほんの口先くちさき世辭せじで、あんなものはやてゆけとはうき𪉩花しほばなちならんもらず、いゝになつて御邪魔おじやまになつて
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夫人。おん身はまことに世辭せじき人なり。我姿はいつもの通りなり。衣はゆるく包みしふくの如し。否々、面を赤うし給ふことかは。おん身も年若き男達の癖をばえ逃れ給はずと思はる。
「おやまあ、しばらくでがしたね」とおつたは、さき世辭せじをいうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
今、誰か不道徳な馬鹿者が、つまらない下司口げすぐちいて私の胸を惡くするとしても、私には自分がその人間よりも上等だとは、お世辭せじにも云へません。
のきばのまつつるをくひはせぬか、これを世間せけんなにるらん、母御はゝご世辭せじ上手じようずにてひとらさぬうまさあれば、いものにしてやみをたどるむすめよりも、一まいあがりて
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「主人は顏を見せません。番頭は四十がらみの、世辭せじの宜い男で」
にあるころ唐棧とうざんぞろひに小氣こきいたまへだれがけ、お世辭せじ上手じようず愛敬あいけうもありて、としかぬやうにもい、父親てゝおやときよりはかへつてみせにぎやかなと評判ひやうばんされた利口りこうらしいひと
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うつくしいまなじり良人をつとはらをもやはらげれば、可愛かあいらしい口元くちもとからお客樣きやくさまへの世辭せじる、としもねつからきなさらぬにお怜悧りこうなお内儀かみさまとるほどのひとものの、此人このひと此身このみ裏道うらみちはたら
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あねなるひと全盛ぜんせい餘波なごりいては遣手新造やりてしんぞあねへの世辭せじにも、いちやん人形にんげうをおひなされ、これはほんの手鞠代てまりだいと、れるにおんせねばもらありがたくもおぼえず、まくはまくは
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)