あづか)” の例文
旧字:
それには、是非ともお交際を願つて、いろ/\な立ち入つた御相談にも、あづからせて戴きたいと、それで実はあんな突然なお申込を……
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
上田と四郎左衛門とが捕へられた後に、備前で勇戦隊を編成した松本箕之介みのすけ入牢にふらうし、これにあづかつた家老戸倉左膳の臣斎藤直彦も取調を受けた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「お鮨なんですよ、昨夕ゆうべ大使夫人にお招きにあづかりましてね、その折戴いた御馳走なの、貴方に上げたいと思つて、態々わざ/\持つて、帰つたのですわ。」
この第三回のかう、われは髪を剃りつゑを曳きて古人の跡を蹈み、みづから意向を定めてありしかば義友も遂に我に迫らず、遂に大坂の義獄にあづからざりしも
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
第三の「遺老の実歴談に就きて」は「明治維新の前後に際会して国事にあづかりし遺老の実歴談多く世に出づる」
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
何等の祝福ぞ、末代下根の我等にして、この稀有けう微妙の心証を成じて、無量ののりの喜びにあづかるを得べしとは。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
たまに情人と分かれてゐる時は、二人は中洲へ往つて魚や貝の料理を食つた。凡そ市にありとあらゆる肉欲に満足を与へる遊びには、己達二人のあづからぬことは無い。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
しかし、再び年少の頃の私は、そのやうな故事来歴はあづかり知らず、ただ口繩坂の中腹に夕陽丘女学校があることに、年少多感の胸をひそかに燃やしてゐたのである。
木の都 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
じつに一行が首尾しゆび探検たんけん目的もくてきを達するを得たるは、忠実ちうじつ勇壮ゆうさうなる人夫の力大にあづかつてちからありとす。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
世間に見られ、批評され、或は崇拝され、或は非難され、或は人間を感化する傑作と云はれ、或は世間を毒する作と言はれても、それは実は作者のあづかり知らないことだ。
心理の縦断 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「彼の悔悟は彼の悔悟で、僕のあづかる事は無い。畜生も少しは思知つたと見える、それも可からう」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
吾がすむ塩沢しほざは下組したぐみ六十八ヶ村の郷元がうもとなれば、郷元をあづかり知る家には古来こらい記録きろくのこれり。
我れ等もあづからしめ給へ。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
その伊沢分家、同又分家、渋江氏等と交つて、往々諸家の内事をあづかり聞いたことは、わたくしの既にしば/″\記した所である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
多数の漢学思想を主意とする学者の中に挺立して、能く革命の気運に馴致じゆんちし、明治の思想の建設にあづかつて大功ありしものは、実に斯る特性あればなり。
猫がその遺産金をつかつたかは、自分がその相談にあづからなかつたから、よくは知らないが、唯愛国婦人会や赤十字社に寄附しなかつた事だけは事実らしい。
盲人は絵画の鑑賞にあづからなければ、聾者も音楽の鑑賞には与りません。同様に又文芸の鑑賞もまづ文字を読んでその意味を理解する所から始まるのであります。
文芸鑑賞講座 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「あゝさうですか。いや、今日はお招きにあづかつて有難うございます。僕は、御存じの杉野たゞしの息子です。こゝに、いらつしやるのは、唐澤男爵のお嬢さんです。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
吾がすむ塩沢しほざは下組したぐみ六十八ヶ村の郷元がうもとなれば、郷元をあづかり知る家には古来こらい記録きろくのこれり。
此方こちら暢気のんきなものだから那様こんなこととはちつとも知らない、山田やまだまた気振けぶりにも見せなかつた、けれどもさきにも言ふごとく、中坂なかさかに社をまうけてからは、山田やまだまつた社務しやむあづからん姿であつたから
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あながちにおのが見証をもつて世に吹聴ふいちやうせんとにはあらず、唯だ吾が鈍根劣機を以てして、ほ且つこの稀有けうの心証にあづかることを得たるうれしさ、かたじけなさのおさへあへざると、且つは世の
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
すると色目を使つたと云ふ、常に溌剌たる生活力の証拠は宇野氏の独占にまかすべきではない。僕もまた分け前にあづかるべきである。或は僕一人ひとりに与へらるべきである。
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
藤原道長みちながの如きは、一條いちでう、三條、後一條天皇の御代、三十余年にわたつて、政治の最高枢機にあづかり、その子頼通よりみちも、父についで、摂政または関白たること五十余年であつた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
此によつて見れば、昭憲皇太后の御入内ごじゆだいには、薫子の口入があづかつて力があつたらしく見える。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
然れども当時の文学中の最大部分たる洒落本、戯作の類の大に之にあづかりて力ありし事を思はざる可からず。当時の作家はおほむね遊廓内の理想家にして、且つ遊廓塲裡の写実家なりしなり。
われは宇宙の間に於けるわが真地位を自覚しぬ。吾れは神にあらず、又大自然の一波一浪たる人にもあらず、吾れは「神の子」也、天地人生の経営にあづかる神の子也。何等高貴なる自覚ぞ。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
慈善の為に少しはひとにも見せておんなさい、なんぞと非常に遣られたぢやないか。それからね、知つてをる通り、今度の選挙には実業家として福積ふくづみが当選したらう。俺もおほいにあづかつて尽力したんさ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
といふと、松下氏は自分が下相談にでもあづかつたやうに
利仁の命令は、言下ごんかに行はれた。軒からとび下りた狐は、直に広庭で芋粥の馳走に、あづかつたのである。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
作者は或は巣元方さうげんはうだとも云ひ、或は呉景だとも云ふ。呉の名は一に景賢に作つてある。四庫全書総目に、此書は官撰であるから、巣も呉も其事にあづかつたのだらうと云つてある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
新教勃興後の基督キリスト教国は一般に新活気を文学に加へたり、其然る所以ゆゑんのものは基督のみ是を致せしにあらず、悪魔もあづかりて力あるなり、言を換へて云へば、聖善なる天力ヘブンリー・パワーに対する観念も
他界に対する観念 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
詩に謂ふ二児は、即ち十一歳の榛軒と五歳の柏軒とで、常三郎はあづからなかつたのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
三たび我が行きし時に、蒼海は幾多の少年壮士を率ゐて朝鮮の挙にあづからんとし、老畸人も亦た各国の点取てんしゆに雷名を轟かしたる秀逸の吟咏を廃して、自村の興廃に関るべき大事に眉をひそむるを見たり。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
信憑しんぴようすべき記載もなく、又其事にあづかつた人も亡くなつたので、私はくはしく知らぬが、裁判官の中にも同志の人たちに同情するものがあつたので、苛酷な処置にはでなかつたさうである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それに事によつたら、品もあづかつたのではあるまいか。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)