雪道ゆきみち)” の例文
このとき、盲目もうもく母親ははおやきながら、十五、六のむすめが、雪道ゆきみちあるいていきました。母親ははおや三味線しゃみせんかかえていました。旅芸人たびげいにんです。
雪消え近く (新字新仮名) / 小川未明(著)
吹雪ふゞきなかの、雪道ゆきみちに、しろつゞいたみやを、さながらみねきづいたやうに、たか朦朧もうろうあふぎました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
雪道ゆきみち地道じみちとの過渡期なるこの季節のこととて、例の家根から掻き落した雪が、まだそのままに高く積もって峻しい山となっていたり、すでに一部分それが除かれて、深い谷となっていたりして
春雪の出羽路の三日 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
太郎たろうは、もしや、おじいさんが、この真夜中まよなか雪道ゆきみちまよって、あちらの広野ひろのをうろついていなさるのではなかろうかと心配しんぱいしました。
大きなかに (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供こどもは、たいせつなものでもにぎったように、それをくようにして、さびしい、雪道ゆきみちうえを、自分じぶんいえのあるむらほうして、とぼとぼとあるいてゆきました。
赤い手袋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どこからともなく、たくさんのあやしげなふうをした人間にんげんが、城下じょうかあつまってまいりました。毎日まいにち毎日まいにち雪道ゆきみちをあるいて、とおくから、ぞろぞろとはいってきました。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうど、そのがたでありました。そらくもって、さむかぜいていました。あまり人通ひとどおりもない、雪道ゆきみちうえに、二つのあか手袋てぶくろがいっしょにちていました。
赤い手袋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「よく星明ほしあかりで、雪道ゆきみちがわかりましたね。」と、太郎たろうのおとうさんはいって、びっくりしていました。
大きなかに (新字新仮名) / 小川未明(著)
どこをても、ゆき野原のはらしろでした。だんだんまちちかづくにつれて、みちうえ人通ひとどおりがおおくなりました。雪道ゆきみちうえあるいていくものもあれば、そりにっていくものもあります。
からすとうさぎ (新字新仮名) / 小川未明(著)
達夫たつおくんは、さむいほしばれのしたそとて、戸口とぐちっていました。やがて、あわれなくろいかげがとぼとぼと雪道ゆきみちをちょうちんのでたどってくると、もうおそろしいなどということをわすれて
つじうら売りのおばあさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
それよりか、おとこは、もう二日ふつかもなにもべずにいました。はらいて、あたまがぼんやりとして、どこをどうあるいているやらわからずに、まえへのめりそうなかっこうをして雪道ゆきみちをたどっていました。
おかしいまちがい (新字新仮名) / 小川未明(著)
まちをはなれると、さすがに、まちからむらほうへいく人影ひとかげえなかったのです。おじいさんは、ひと雪道ゆきみちつきかりで、とぼとぼとあるいてかえりました。ものすごいようなあおみをびたつきひかりです。
夜の進軍らっぱ (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、だれもひととおらない、雪道ゆきみちうえに、しあわせの人形にんぎょうちていました。そして、もうそのかおうえにも、からだうえにも粉雪こなゆきのかかっているのが、ちょうちんのひかりらされてられました。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)