やり)” の例文
あかね吹貫ふきぬき二十本、金の切先の旗十本、千本やり、瓢箪の御馬印、太閤様御旗本の行列の如く……」と、『大阪御陣覚書』に出ている。
大阪夏之陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
まだ鉄砲ややりを持つてゐる十四人は、ことばもなく、稲妻形いなづまがた焼跡やけあとの町をつて、影のやうにあゆみを運びつつ東横堀川ひがしよこぼりがは西河岸にしかしへ出た。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
... むしろ遣いようによってはやりよりも役に立つように心得ました」「けれども五十本百本という竹槍を持って戦場を駆けまわることはできまい」
青竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
(近頃、おごづらの羽柴勢に、目にもの見する日は今だ。百錬ひゃくれんの滝川勢のやり鉄砲がどんな味のするものか覚えさせてくりょう)
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白馬岳の南には杓子しゃくし岳があり、更に其南に接してやりヶ岳がある、仮に之を白馬三山と唱え、共に同じ地質から成っている。
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
やりのやうに突つ立つた忍び返しの上に、若くて丈夫さうな男が一人、手拭の頬冠り、縞物しまものの澁いあはせを着たのが、殆んど逆さ大の字になつた形に
「おのれ、ふかくにも生けどりになるほどの侍として、ものゝひょうりが分るか」と、やりのいしづきで石見どのゝあたまを三度おつきになりました。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それがし高坂弾正かうさかだんじやうと申して、信玄公被管ひくわんの内にて一の臆病者也、仔細は下々しもじもにて童子わらべこどものざれごとに、保科ほしな弾正やり弾正、高坂弾正にげ弾正と申しならはすげに候、我等が元来を申すに
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
蓮華れんげじい鹿島槍かしまやり、五りゅう……とのびて、はるか北、白馬しろうまやりにいたるまで、折からの朝日を受けて桜色というか薔薇色というか、澄み切った空にクッキリと聳えているではないか。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
次の附句つけくこれを例の俳諧はいかいに変化させて、晴れた或る日の入日いりひの頃に、月も出ていて空がまだ赤く、向こうから来るやりと鑓持ちとが、その空を背景にくっきりと浮き出したような場面を描いて
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
手に/\錆びたる槍を持ちて立上り来りアリヤ/\/\/\と怪しき声にて叫び上げつゝ初花太夫を残したる九人の左右に立ち廻はり、罪人の眼の前にてやり先をチヤリ丶/\と打ち合はし脅やかす。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そういうことで世間の行末が好くなって行こう理窟はござらぬ。これは何としても世間一体を良くしようという考え方に向わねば、何時迄経ってもやりかたな、修羅の苦患くげんを免れる時は来ないと存じまする。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
やりたちすがりたる花のくれ 去来
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
三 やりガ岳の鶴首つるくびと鶏
残雪の幻像 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
それを聞いて悄然せうぜんと手持無沙汰に立ち去るものもある。待ち構へたやうに持つてゐたやりつてゐた荷を棄てて、足早あしはやに逃げるものもある。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
水へ向って射込んでも、矢は用をなさず、刺叉さすまたで掻き廻しても、投げやりほうりこんでも、笑うが如き泡沫あわが一面ぶつぶつ明滅するのみである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
針木、蓮華、じい、鹿島槍、五竜、大黒、牛首、唐松、奥不帰おくかえらずやり杓子しゃくし、白馬、小蓮華と山稜の大波がうねって、其右は王ヶ鼻に遮断されている。
美ヶ原 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
やりのように突っ立った忍び返しの上に、若くて丈夫そうな男が一人、手拭の頬冠り、縞物の渋いあわせを着たのが、ほとんど逆さ大の字になった形に
青木主膳はやりで突かれたもゝ繃帯ほうたいをしていたが、二度目に腕へ負傷してからも痛手いたでに屈せず働いていた。そして極くたまに法師丸の顔を見ることがあると
敵味方三千七百の人数入り乱れて突いつ突かれつ伐つ伐たれつ互に具足の綿噛わたがみを取り合ひ組んで転ぶもあり首をとつて立ちあがれば其首は、我主なりと名乗つてやりつけるを見ては又其者を
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
やり、奥不帰、唐松岳に至る後立山山脈の山々が望まれた、さまざまな形をした残雪が山の特長を語っているのが懐しい。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
志津ヶ嶽合戦のみぎり、桜井佐吉が高名、比類なく、七本やりの衆にも勝れり。早く病死する故に、人是を知らず。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四辻のあたりに敵の遺棄した品々を拾ひ集めたのが、百目筒ひやくめづゝ三挺さんちやう車台付しやだいつき木筒きづゝ二挺にちやう内一挺車台付、小筒こづゝ三挺、其外やり、旗、太鼓、火薬葛籠つゞら具足櫃ぐそくびつ長持ながもち等であつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
やり取る者とも云われるが、徳川殿の中に加わりては、足手まといの弱兵にて一方の役に立ったとも覚えず、自分の勲功を御賞めになるなど、身びいきと云うもので、三河の人の思わむことも恥し
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
従って槍、やり、劒、赤鬼、餓鬼、錫杖しゃくじょう等は、北アルプスの山名には似合わしい文字であるが、南アルプスには例外として唯一の鋸岳があるのみである。
南北アルプス通説 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「山のごとく飾り立て」とあるのは船楼やともに、旗幟はたのぼりだのやりや熊手を植えならべて進んで行ったものであろう。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅中の家康は茶屋四郎次郎ちゃやしろじろうの金と本多平八郎ほんだへいはちろうやりとの力をかりて、わずかに免れて岡崎おかざきへ帰った。さて軍勢を催促さいそくして鳴海なるみまで出ると、秀吉の使が来て、光秀の死を告げた。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あえぎ上って来た方は、到底、この決死の形相の前には立ち得なかった。真っ向に、太刀を浴び、胸いたへ、やりをくい、早くも、いたる処に惨たる犠牲を、出してしまった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やりヶ岳、杓子しゃくし岳から力の籠った線が緊張の度を倍加して、朝日岳の肩越しに大蓮華山の尖鋭なる峰頂を一刀に刻み上げている。山稜の大波は更に北に走って、鉢ヶ岳、雪倉岳の波頭が白く突立つ。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ざっとしるせば、その折、信長の手に捕われていた敵方の妻女百二十幾人と、その召使の女たち三百八十余人は、すべて、一ヵ所に集められ、やり薙刀なぎなた、鉄砲の類で殺された。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしも四十七歳、はや老武者の組に入りかけて来たが、このたびの合戦こそは、畢生ひっせいのもの、先君のとむらい合戦、いざといわば、みずからやりも持ち、太刀打ちもなす覚悟でおる。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「孔明死す。孔明死せりか。——いまは速やかに残余の蜀兵を追いかけ追いくずし、やりも刃も血に飽くまでそれを絶滅し尽す時だ。天なるかな、時なる哉、いざ行こう。いざ来い。出陣の鉦鼓しょうこ鉦鼓」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれは——名古谷山三は一のやり——という歌であろうが」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——鑓仕やりし鑓仕は多けれど、岡谷五郎次は一のやり
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、「為朝ためとも」という銘のあるやりを彼に与えた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やりの穂先に織田が首
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)