“鍍金(めっき)” の例文
「華族さんの平民主義なんて皆こんなものさ。都合の好い時丈け平民で、少し故障があると直ぐに地金を出す。元来が鍍金(めっき)だからね」
社長秘書 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
七、日軍肉迫すモンテ・カルロの堅塁(けんるい)。金鍍金(めっき)とルネッサンス式の唐草と、火・風・水・土の四人に神々に護(まも)られた華麗(けばけば)しき賭博室(サル・ド・ジュウ)。
鍍金(めっき)を金(きん)に通用させようとする切ない工面より、真鍮(しんちゅう)を真鍮で通して、真鍮相当の侮蔑(ぶべつ)を我慢する方が楽である。と今は考えている。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
橋の上から見ると、川は亜鉛板(とたんいた)のように、白く日を反射して、時々、通りすぎる川蒸汽がその上に眩しい横波の鍍金(めっき)をかけている。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
寄生虫は、瓦礫(がれき)を鍍金(めっき)して、群衆に示し、共謀して、それをなるべく高価に売りつけようとする。そうして、蔭で舌を吐いていう
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ニッケル鍍金(めっき)のバネつきの鉤(かぎ)が取りつけてありますが、この麻縄が引き上げた、天才少女、狩屋愛子の姿は見えなかったのです。
九つの鍵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ニッケル鍍金(めっき)でこんなにぴかぴか光っています。ここの環(わ)の所へ足を入れるとピチンと環がしまって、もうとれなくなるのです。
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
可(よ)かろう、で、鍍金(めっき)の奴が腕まくりをして、ト睨(にら)み合うと、こけ勘が渋団扇(しぶうちわ)を屹(きっ)とさして、見合って、見合ってなんて遣(や)ったんですって。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
内部は日光同様な鍍金(めっき)と装飾とで光り輝いている。そしてあけはなしてあるので、内部でやっていることはすべて外から、明瞭に見える。
但し、コサック騎兵とはいうもののその服は青と紫と、赤と、緑の四色の化粧服で、長い槍の尖端もニッケル鍍金(めっき)で光っている。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おかみさんの傍には太った斑猫がいるが、鍍金(めっき)した玩具の時計を尻尾にくっつけている。「子供たち」がふざけてくくりつけておいたのだ。
鐘塔の悪魔 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
まず「飾り」であるが、飾りには、金鍍金(めっき)と「消し差し」の二つ。箔を焼きつけたものが鍍金で、消粉を焼きつけるのが「消し差し」です。
米良が電流に乗ってリー・シー・ツワンの部屋に這入ると、彼は寝台のなかで外出着をつけて胸には瀝青を鍍金(めっき)した勲章をぶらさげていた。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
ちらと眺(なが)めたそのボール函の中からは、いつぞやのエッベの注進どおり、長方形の金鍍金(めっき)をした安物らしい歌い(オルゴール)時計が現れた。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
後者は白の胸当てをつけた上になお、鍍金(めっき)の銀か鍍金の銅かの高さ三寸ばかりの聖体を胸につけていた。前者はその聖体をつけていなかった。
微笑しいしい三人の太刀(たち)の構えをうち見守っていましたが、と……弥三郎はけっきょく笑止千万な鍍金(めっき)旗本でありました。
『でも私、いつもちやんとソース鍋を見てゐますよ。そして私はいつだつてよく洗つて、時々それを鍍金(めっき)させますよ。』
これに反して日本出来のは見掛けのニッケル鍍金(めっき)などに無用な骨を折って、使用の方からは根本的な、油の漏れないという事の注意さえ忘れている。
石油ランプ (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それはどんな石も割ることのできない、その水銀は決して剥(は)げず、自然が絶えまなく鍍金(めっき)をかけている鏡である。
譬えば鍍金(めっき)せるものの角々に真の質(きじ)の見(あらわ)るるが如しなどおもう折しも、按摩(あんま)取りの老いたるが入り来りたり。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
鍍金(めっき)鉄格子に囲まれた中で、我々は、わが政治犯達及び刑務所長ウルムブラント氏と共にカヴァを飲んだ。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
隣りの細君が御召縮緬(おめしちりめん)に純金の簪(かんざし)をと聞きて大いに心を悩まし、急に我もと注文して後によくよく吟味すれば、豈(あに)計らんや、隣家の品は綿縮緬に鍍金(めっき)なりしとぞ。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
では、御免(ごめん)遊ばせ。まア博士(せんせい)の研究室の此の異様(いよう)なる感覚は、どうでしょう! まるでユークリッドの立体幾何室を培養(ばいよう)し、それにクロム鍍金(めっき)を被せたようですワ。
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鍍金(めっき)であろうが、真鍮(しんちゅう)の粉や箔であろうが、金目には関係なく、兎も角も、金色をしたものなら、額縁から金紙から鑢屑(やすりくず)に至るまで、滅多無性に蒐集しているのです
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
会員というのは、靴屋の小僧とか、魚屋の忰(せがれ)とか、トンカツ屋のあんちゃんとか、蕎麦(そば)屋の出前持とか、円タクの助手とか、鍍金(めっき)工場の職工とか、ああくたびれる。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
芥子(からし)壺に関して中傷されたことはあるが、しかしそれは鍍金(めっき)の品に過ぎないことがわかった。自分はさっきの証人を七八年来知っている。それは単に暗合に過ぎない。
「北海道では今、群来の二字を充(あ)てるが、古は漏の字を充てている。鯡(にしん)のくきる時は漕(こ)いでいる舟の櫂(かい)でも艫(ろ)でも皆かずの子を以てかずの子鍍金(めっき)をされてしまう位である」
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
そうだ。佐野次郎にしちゃ大出来だ。一世一代だぞ、これあ。太宰さん。附け鬚模様の銀鍍金(めっき)の楯があなたによく似合うそうですよ。いや、太宰さんは、もう平気でその楯を
ダス・ゲマイネ (新字新仮名) / 太宰治(著)
もちろんその柄(え)は銀あるいは金鍍金(めっき)などで飾り付けてあります。なかなか立派なものです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
乾漆鍍金(めっき)ではあるが、いまはその金色も剥落して、鋼鉄のような強い威力を示している。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
鍍金(めっき)釘を打った格子組の木橇を引いたみすぼらしい辻待馭者はだんだん影をひそめて、それとは反対に、緋のビロードの帽子をかぶり、熊の皮の膝掛をかけて漆(うるし)塗りの橇を御した
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「よッぽどするでしょう?」抜いて出すのを受け取って見たが、鍍金(めっき)らしいので
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
白金(プラチナ)で鍍金(めっき)した石英糸に通過せしめ、糸の両側に電磁石を置くと、糸を通過する電流の多寡によって、その糸が左右に振れるから、その糸をアーク燈で照すと、糸の影が左右に大きく振れ
恋愛曲線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
節くれだった小指に、鍍金(めっき)の物々しい金指環をはめて居たり、河(かっ)ぱの様にした頭に油を一杯つけて、紫の絹のハンカチでいやらしく喉を巻いたりして居る様子は、ついしかめっ面をするほどいやだ。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ある日の午後、Tさんはぴかぴか光るニッケル鍍金(めっき)の筒の中に兎を押し込んで、すっかり身動きも出来ないようにしておいて、無理に口をあけて、ひき茶の粉をねったものをその中に押し込んでいた。
兎の耳 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
下村さんの考えは鍍金(めっき)じゃないかと思ったのでしょう。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
銀の雄弁といいたいが、これは銀鍍金(めっき)の饒舌(じょうぜつ)だ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ただ、帯(おび)ほどの澄んだ水が、雲母(きらら)のような雲の影をたった一つ鍍金(めっき)しながら、ひっそりと蘆の中にうねっている。が、女は未だに来ない。
尾生の信 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
中には合金や鍍金(めっき)、流し金なぞで満足している人もあるという次第で、各(おのおの)とりどり様々にその持ち前の性格を鼻の表現に光らせております。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
女の眼には、無垢(むく)も、鍍金(めっき)もわかりはしない。ただ黄金の光さえしていれば、容易(たやす)く眩惑されてしまうのだ——と主膳は冷笑気分になりました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
室内にあっては漆細工、真鍮、鍍金(めっき)、銀、黄金製の品物、鏡板を張った天井、床には冷たい藁の畳が敷きつめられる。
おかみさんたちの懐中時計も「一(どう)つ!」と言った。そして子供たちの懐中時計も、猫や豚の尻尾についている小さな鍍金(めっき)の時計も「一(どう)つ!」と言った。
鐘塔の悪魔 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
「鯱が益〻大きくなって来たぜ。『伊勢は津で持つ津は伊勢で持つ、尾張名古屋は城で持つ』というが、城全体があの鍍金(めっき)の鯱で持っているようだね」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
鍍金(めっき)、ガラハギをなさいましても、鍍金、ガラハギは、鍍金ガラハギ、やっぱり鍍金、ガラハギは、ガラハギ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「——この泥だよ、八、守り刀の鞘に付いていたのは。壁の繕(つくろ)いか何かに使った荒木田(あらきだ)が、雨や撒き水に解けて、この辺一面の庭に鍍金(めっき)をしたようになっていたんだ」
髪形(かみかたち)を変えること、眼鏡をかけること、含み綿をすること、それから又、『一銭銅貨』の中では、丈夫な歯の上に、夜店の鍍金(めっき)の金歯をはめる思いつきが書いてある。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
幸機を得よ、さらば汝は悉(ことごと)くを得ん。幸福なれ、さらば汝は偉大なりと信ぜられん。時代の精彩たる五、六の偉大なる例外を除けば、同時代の賞賛は近視にすぎない。鍍金(めっき)は純金となる。
滑らかに鉋(かんな)をかけた松板の壁、急須や茶碗を入れて隅っこに置いてある三角戸棚、聖像の前に、赤や青のリボンでぶらさげてある、鍍金(めっき)をした瀬戸物の卵、つい近ごろ仔を生んだばかりの猫
頗(すこぶ)る西洋の文明を悦び、一切万事改進進歩を気取りながら、其実は支那台の西洋鍍金(めっき)にして、殊に道徳の一段に至りては常に周公孔子を云々して、子女の教訓に小学又は女大学等の主義を唱え
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
寺井焼の方の金のことを、「水金(みずきん)」だから温泉に入れるとすぐ変色するし、鍍金(めっき)のような「あだ光り」がするといって、問題にしていなかった。私も随分手伝わされて、手が痛くなったこともあった。
九谷焼 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)