えい)” の例文
鹿じかなく山里やまざとえいじけむ嵯峨さがのあたりのあきころ——みねあらし松風まつかぜか、たづぬるひとことか、覺束おぼつかなくおもひ、こまはやめてくほどに——
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
古人はさくらを花の王と称した、世の中に絶えて桜のなかりせば人の心やのどけからましとえいじた、吾人は野に遊び山に遊ぶ、そこに桜を見る
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
こうした獄中のえいもある。また昨日、百数十日のあいだを、獄舎虱ひとやじらみと共に起居した所から、ここへ移って出られるさいにも
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何をえいじているのか見当もつかぬが、ともかくもツシヤの石と金属とに縁があったらしいことが考えられる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
えいじける故流石さすが公家くげ侍士さふらひ感心しこし墨斗やたてを取出し今一度ぎんじ聞せよと云に女は恥らひし體にて口籠くちごもるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「去年は倭奴わど上海をおびやかし、今年は繹騒えきそう姑蘇こそのぞむ。ほしいままに双刀を飛ばし、みだりにを使う、城辺の野草、人血まみる」。これ明の詩人が和寇わこうえいじたるものにあらずや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
医「松島は日本三景の内でな、随分江戸のお方が見物に来られるが此のくらい景色のい所はないと云ってな、船で八百八島を巡り、歌をえいじ詩を作りに来る風流人が幾許いくらもあるな」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
試みに「暮春ぼしゆん」の句を成すを思へ。蕪村ぶそんの「暮春」をえいぜしのち、誰か又独自の眼光を以て「暮春」を詠じ得るの確信あらんや。梅花の如きもその一のみ。否、正にその最たるものなり。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
友人いうじん松井通昭まつゐつうせうわが七福しちふくえいずるのうたせらる。ろくするものこれなり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
この歌はもしあなたのおえいではござりませんか。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
めんめんと数千字をつらね、漢王と美妃の享楽、溺愛、哀別、輪廻りんねまでの、飽くまで、煩悩に始まって煩悩につきる人間慾と無常をえいじ尽して余りがない。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この人が国へかえろうとするにさきだって、日本をえいじた一篇の詩をつくって、世に公けにした。その文句はもうだれも覚えておらぬだろうが、各節のおわりの一行に
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
と、芥川あくたがはさんがえいじて以来いらい、——東京府とうきやうふこゝろある女連をんなれんは、東北とうほく旅行りよかうする亭主ていしゆためおかゝのでんぶと、焼海苔やきのりと、梅干うめぼしと、氷砂糖こほりざたう調とゝのへることを、陰膳かげぜんとゝもにわすれないことつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
からもの肩衝かたつきで、これが東山義政ひがしやまよしまさの手に入ったとき、義政がよろこびの余り「くれなゐの初花染めの色深く思ひし心我れ忘れめや」の一歌をえいじたというのでこの銘がある。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文部省から出ている『俚謡集りようしゅう』という本の中には、たしか伊豆半島の物搗歌ものつきうたとして、鎌倉をえいじた民謡が三つ四つ出ており、つぎのようなおどけたものもその中にはまじっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それと、——いづれ菖蒲あやめと引きぞわづらふ、という即興をえいじて、あやめの前という美女を君からいただいて妻としたという話なども、彼の実際的な経歴から見て、取上げがたい伝説である。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は今まで主として椰子の実のつぼさかずきなどの方から入ってみようとしたのだが、古くは「玉藻たまもるあま乙女おとめども」とえいぜられたその海の玉藻の用途、「それもてこ」と歌われた色々の貝や石
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これは、北満の配所で、徽宗自身が、皇帝たる自身の末路をえいじた一詩だ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また鹿児島県で開聞岳かいもんだけえいじたという「雲の帯してなよなよと」という歌にもこの囃しがあり、さらに南へ行って沖繩県の八重山群島やえやまぐんとうなどにも、しょんがいをもっておわる哀れな別れの歌があった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
と、この折にも、一首をえいじて、左右の人々にしめされた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なるえいに対して、光秀が苦吟の末
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)