角力すまふ)” の例文
ある新聞の取次店の前には、傘や蝙輻傘かうもりがさが押し合つて、角力すまふの勝負札を見てゐた。さま/″\な批評も人々の口から出てゐた。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
角力すまふだの撃劍げきけんだの、喧嘩だの勝負事だのと、荒つぽい碌でもない事を教へるからで御座いませう。私はそれが心配でなりません
ぼく角力すまふきらひだ、といふと、……ちひさなこゑで、「示威運動じゐうんどうだから、かたばかりでくんだ。」よした、とつと
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大英国はうらやむべき国よなどひそかに思ひ申しさふらふ。この甲板かふばん藁蒲団わらぶとん敷き詰めて角力すまふの催しなどもありしよしにさふらふ。私の室づきの山中は五人抜きの勝利を得しよしさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
時折車の音の聞ゆるばかり、春は囘向院えかうゐん角力すまふの太鼓夢の中にきいて、夏は富士筑波つくばの水彩畫をてんねむの後景として、見あかぬ住居すまゐさりとて向島根岸の如き不自由はなく、娘がのぞみかなひ
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
歓楽もやつた。射御しやぎよ角力すまふの技も学んだ。波羅門ばらもんの徒のやうな苦行もやつた。すべて世間にありとあらゆることをやつて来た。何の故に? 世間に生れたが故に、かう世尊は言つてゐる。
孤独と法身 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
發掘はつくつはじめ(其他そのた方面はうめんおい角力すまふつた)てからは、身體しんたい健康けんかう非常ひじやう良好りやうかうで、普通ふつう土方どかたとしても一にんまへ業務げふむれるやうつてると、益々ます/\おほおほきく遺跡ゐせきやうになり
先生は、「私の精神と由松の精神と角力すまふをとつて、私の方が勝つたのだ。」
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
むかし三段目の角力すまふを悩ませし腕力たしかに見えたり。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
背負せおひて一文貰ひの辨慶或は一人角力すまふの關取からす聲色こわいろ何れも乞食渡世の仲間なかまにて是等の類皆々長屋づきあひなれども流石さすが大橋文右衞門は零落れいらくしても以前は越後家にて五百石取の物頭役なれば只今市之丞の長八に對面たいめんなすにきつと状を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たまには、かゝァと角力すまふをとつた
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「俺に開けられないものが、お前に開けられるわけはないよ、——錢形の親分さへ、この箱と二日角力すまふを取つたんだ」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
けだしいろ象徴しやうちようではないのだが、春葉しゆんえふ羽織はおりういふものか、不斷ふだんから、くだん素見山すけんざんふうがあつた。——そいつをパツといで、角力すまふらうとふ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
屋敷やしき兩方りやうはうまたがつてるといふがらではない。あせだらけの浴衣掛ゆかたがけである。が、實際じつさい此時このとき、四十一番地ばんちじうし、角力すまふ土俵どへうきづいたので、四十番地ばんちをもりてたのだ。大分だいぶ茶番氣ちやばんげがさしてた。
八五郎は板戸と角力すまふを取つて暫くは手間取りましたが、フト氣が付いて敷居から外すと、棧はわけもなくケシ飛んで、嚴重らしい戸がガタリと外れました。
なげはうも、なげられるはうも、へと/\になつてすわつたが、つたうへ騷劇さうげきで、がくらんで、もう別嬪べつぴんかほえない。財産家ざいさんか角力すまふひきつけでるものだ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
友次郎の妙にからんだ物言ひがしやくに障らないではありませんが、ガラツ八とは貫祿が違ひますから、腹を立てたところで、喧嘩にも角力すまふにもなるわけではありません。