血色けつしよく)” の例文
此返事このへんじいて、むつとはらつた。頭巾づきんした剥出むきだして、血色けつしよく頸元えりもとかゝるとむかう後退あとすざりもしない。またいてた。
顔は體程周三の心をうごかさなかツたが、それでも普通ふつうのモデルを見るやうなことは無かツた。第一血色けつしよくいのと理合きめこまやかなのとが、目に付いた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
しばらく待つて居ると、髪もひげも灰色をした、細面ほそおもてな、血色けつしよくの好いレニエ氏が入つて来た。「支那流の髭」と評判される程あつて垂れた髭である。その髭がよく氏の温厚を示して居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
主人しゆじん予想通よさうどほ血色けつしよく下膨しもぶくれ福相ふくさうそなへてゐたが、御米およねつたやうひげのないをとこではなかつた。はなしたみじかくんだのをやして、たゞほゝからあご奇麗きれいあをくしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
で、腕の血色けつしよくを見ても、にごりれて、若い血が溌溂はつらつとしてをどツてゐるかと思はれる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「さあ、もう時間じかんよ」と注意ちゆういしたとき、かれこの點滴てんてきおときながら、もうすこあたゝかい蒲團ふとんなかぬくもつてゐたかつた。けれども血色けつしよくくない御米およねの、甲斐々々かひ/″\しい姿すがたるやいな
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おそれあたりて、わがにくあらたなるべし。」みんなあとから、かみあかい、血色けつしよく一人ひとりとほる。こいつにけていたのだから、きふ飛付とびついてやつた。この気味きみわるで、そのくちおさへた。
汽車きしや血色けつしよく宗助そうすけまへをそろ/\ぎて、たちま神戸かうべはうむかつてけむりいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
色光沢いろつやも殆んどもとの様に冴々さえ/″\して見える日が多いので、当人もよろこんでゐると、帰る一ヶ月ばかり前から、又血色けつしよくが悪くなりした。然し医者の話によると、今度のは心臓のためではない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
が其他の点に於ては、尋常以上に情しよの支配を受けるべく余儀なくされてゐた。取次とりつぎ門野かどの足音あしおとてゝ、書斎の入口いりぐちにあらはれた時、血色けつしよくのいゝ代助のほゝかすかに光沢つやうしなつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)