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蒼褪
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あおざ
ふりがな文庫
“
蒼褪
(
あおざ
)” の例文
主人八郎兵衛と番頭、度を失って挨拶も忘れたものか、
蒼褪
(
あおざ
)
めた顔色も
空虚
(
うつろ
)
に端近の
唐金
(
から
)
の
手焙
(
てあぶ
)
りを心もち押し出したばかり——。
釘抜藤吉捕物覚書:09 怨霊首人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
間もなく病的に
蒼褪
(
あおざ
)
めた
臼
(
うす
)
のような馬の大きな頭が、わたしの
目路
(
めじ
)
ちかくに鼠色とはいえ明色ではない
悒々
(
ゆうゆう
)
しい影をひいて
停
(
とま
)
った。
ヒッポドロム
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
心中の深い苦悶が透き
徹
(
とお
)
らんがばかり
蒼褪
(
あおざ
)
めた顔にありありと刻まれて、しかし殿下は
身揺
(
みゆる
)
ぎもせず、ただ一度二度深く頷かれた。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
船で知り合った、中学の
先輩
(
せんぱい
)
、Kさんからの親切な
激励状
(
げきれいじょう
)
だったのです。再び、表の芝生にでた、ぼくの顔は
蒼褪
(
あおざ
)
めていたかも知れません。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
顔は
蒼褪
(
あおざ
)
め肉は落ち、衣裳は千切れ
且
(
か
)
つ
穢
(
よご
)
れて、土牢の内で永い間苦しめられた
辛苦
(
しんく
)
の
態
(
さま
)
がまざまざとして現われている。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
どうしたことか今までとは打って変って、その顔色はひどく
蒼褪
(
あおざ
)
め、烈しい疑惑と苦悶の色が、顔一パイに
漲
(
みなぎ
)
っていた。
三狂人
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
泣いているのか、笑っているのか
判然
(
わか
)
らないまま……洋紙のように
蒼褪
(
あおざ
)
めた顔色の中で、左右の赤い眼が代る代る開いたり閉じたりし初めました。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
……といつても、これ、勿論『婦系図』のほうには近代的憂苦のかげをやどした抒情詩が
蒼褪
(
あおざ
)
めている。
上野界隈
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
疲れた顔や、唇の色がまるで死人のように
蒼褪
(
あおざ
)
めていた。寒い風が、顔や
頸
(
くび
)
にかかった髪を吹いていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
いつ見ても
蒼褪
(
あおざ
)
めた顔をして、大きな
潤
(
うるおい
)
のある眼でちょっと
挨拶
(
あいさつ
)
をするだけである。影のようにあらわれては影のように下りて行く。かつて足音のした試しがない。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
刑事が、失神したように
蒼褪
(
あおざ
)
めた彼女の父と、チタ子を別室に連れて行った。老警部が私に言った。
大阪万華鏡
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
よじって伸ばす白い
咽喉
(
のど
)
が、
傷々
(
いたいた
)
しく伸びて、
蒼褪
(
あおざ
)
める頬の色が見る見るうちに、その咽喉へ
隈
(
くま
)
を薄く
浸
(
にじ
)
ませて、
身悶
(
みもだえ
)
をするたびに、
踏処
(
ふみどころ
)
のない、つぼまった
蹴出
(
けだし
)
が乱れました。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
髪の毛は段々と
脱落
(
ぬけお
)
ち、
地体
(
じたい
)
が黒い
膚
(
はだ
)
の色は
蒼褪
(
あおざ
)
めて黄味さえ帯び、顔の
腫脹
(
むくみ
)
に皮が釣れて耳の
後
(
うしろ
)
で
罅裂
(
えみわ
)
れ、そこに
蛆
(
うじ
)
が
蠢
(
うごめ
)
き、
脚
(
あし
)
は
水腫
(
みずばれ
)
に
脹上
(
はれあが
)
り、脚絆の
合目
(
あわせめ
)
からぶよぶよの肉が大きく
食出
(
はみだ
)
し
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
此
蒼褪
(
あおざ
)
めた生気のない古手の思想が、意識の表面で
凝
(
こ
)
って
髣髴
(
ほうふつ
)
として別天地を拓いている処を見ると、理想だ、人生観だというような種々の観念が美しい空想の色彩を帯びて
其中
(
そのうち
)
に浮游していて
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
その顔色と云えばまったく血の気もなく
蒼褪
(
あおざ
)
めて——。
柿色の紙風船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
住持の
詞
(
ことば
)
に玉音は
蒼褪
(
あおざ
)
めた顔をちょっと
赧
(
あか
)
らめた。
法華僧の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
蒼褪
(
あおざ
)
めて見える鼻の高い顔を、随分寒い風に晒らし、鬢の毛をサラサラ
靡
(
なび
)
かせながら、お吉は湖面を眺めていた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
娘はふと母親の顔を見たが、すっかり顔色が硬ばって
蒼褪
(
あおざ
)
めているのを、この上ない恐ろしいものに眺めた。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
血の気もないほどに
蒼褪
(
あおざ
)
め切って、しかも口も利けぬくらいにブルブルと手足を震わせているのであった。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
太田ミサコの顔が瞬間、
蒼褪
(
あおざ
)
めたが、この計算を愛する女が事務的に男の愛情をためしてたずねた。
女百貨店
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
刈り込んだ
髯
(
ひげ
)
に交る
白髪
(
しらが
)
が、忘るべからざる彼の特徴のごとくに余の眼を射た。ただ血の
漲
(
みな
)
ぎらない両頬の
蒼褪
(
あおざ
)
めた色が、冷たそうな無常の感じを余の胸に
刻
(
きざ
)
んだだけである。
三山居士
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
急に
蒼褪
(
あおざ
)
めた円枝が、無言で、口を開けたり閉じたりしていると、おこよが言葉を挾んで
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
こう話している内にも、事務員は明らかに驚いたらしく、見る見る顔色が
蒼褪
(
あおざ
)
めて来た。
白妖
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
大統領は、
蒼褪
(
あおざ
)
めた長い顔をしきりに
縦
(
たて
)
にふって
肯
(
うなず
)
く。
不沈軍艦の見本:――金博士シリーズ・10――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
月夜よりはやや暗く、暁の色よりは艶がなく、
蒼褪
(
あおざ
)
めた他界的の光であったが、他ならぬ夜光虫の光であった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
蒼褪
(
あおざ
)
めてはいられながらも、
一言
(
ひとこと
)
一言に頷いていられる殿下の、気高く
凛
(
りん
)
とした若々しい顔を眺めていると、これでは丁抹乙女たちが胸躍らせるのも無理はないな! と
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ふしぎな発作のあとの、さらりとした児太郎の顔は、やや
蒼褪
(
あおざ
)
め、
凄艶
(
せいえん
)
として震えて見えた。
お小姓児太郎
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
血だらけの袖で、死人のように
蒼褪
(
あおざ
)
めた色で、一段一だんと、弾みを打って。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「さあ……」と夫人は
蒼褪
(
あおざ
)
めて小首を
傾
(
かし
)
げながら不安気な様子で
死の快走船
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
……お顔の色もお体も今夜のように
蒼褪
(
あおざ
)
めて
顫
(
ふる
)
え、そしてお眼からも今夜のように涙が流れておられました。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ひどく顔色が
蒼褪
(
あおざ
)
めてよほど何事かを思い悩んでいられる風であったが
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
面色
蒼褪
(
あおざ
)
めているのは、あながち月の
隈取
(
くまど
)
りばかりではないらしい。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
蒼褪
(
あおざ
)
めた顔は小さく寂しげにやつれきっていたのである。
蛾
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
が、その顔色は恐ろしく
蒼褪
(
あおざ
)
めていた。
気狂い機関車
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
蒼褪
(
あおざ
)
めた深夜の月である。なかば開けられた露台の扉から、風と一緒に月の光が部屋の中へ射し込んでいる。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
眼が血走って、顔は狂気のように
蒼褪
(
あおざ
)
めていた。
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
年の頃は十八、九、恐怖で顔は
蒼褪
(
あおざ
)
めていたが、それがまた素晴らしく美しい、お屋敷風の娘であった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
面色
蒼褪
(
あおざ
)
めて富五郎、壁を背負って仁王立ち。
釘抜藤吉捕物覚書:04 槍祭夏の夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「…………」ムリオは
凝然
(
じっ
)
と私を見詰め、
蒼褪
(
あおざ
)
めた唇をわななかせたが、卒然と床へ膝をついた。
西班牙の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「はい。」と若い僧侶は顔色も
蒼褪
(
あおざ
)
めて
釘抜藤吉捕物覚書:02 梅雨に咲く花
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
鳰鳥の顔は
蒼褪
(
あおざ
)
めた。そうして座にも
堪
(
た
)
えぬと見えて、黙ってスッと立ち上がった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「ああ今夜は厭な気持ちだ。月までが
蒼褪
(
あおざ
)
めて幽霊のように見える」
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
侶船
(
ともぶね
)
の武士達はこれを見ると、いずれも
蒼褪
(
あおざ
)
めて騒ぎ立て
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
顔
蒼褪
(
あおざ
)
めた遠江守は、頷いて恭しく
一揖
(
いちゆう
)
した。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
婦
(
おんな
)
の顔はそれを聞くと再び
颯
(
さっ
)
と
蒼褪
(
あおざ
)
めた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
蒼
漢検準1級
部首:⾋
13画
褪
漢検1級
部首:⾐
15画
“蒼”で始まる語句
蒼
蒼白
蒼空
蒼蠅
蒼黒
蒼然
蒼々
蒼穹
蒼味
蒼茫