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脆弱
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ぜいじゃく
ふりがな文庫
“
脆弱
(
ぜいじゃく
)” の例文
まるで、大自然の威力の前に、
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な人間の文明がおどおどして、
蝸牛
(
かたつむり
)
のように頭をかたく殻の中へかくして萎縮しているようである。
犠牲者
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
角閃石
(
かくせんせき
)
に多くの
黒雲母
(
こくうんぼ
)
を
雑
(
まじ
)
えた、また構成の比較的
脆弱
(
ぜいじゃく
)
なもので、
殊
(
こと
)
に
凝灰
(
ぎょうかい
)
岩をもまじえているので、風化浸蝕作用は案外早く行われ
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
自然の偉大なるものをも
脆弱
(
ぜいじゃく
)
なるものをも、強き人をも弱き人をも、樹木の幹をも一筋の
藁
(
わら
)
をも、あらゆるものを巻き込んでゆく。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
従って、その集結、その「陣」を構成している箇々の素質の如何によって、陣全体の性格と
強靱
(
きょうじん
)
かまた
脆弱
(
ぜいじゃく
)
かのけじめが決まる。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
うっちゃって置けば、比較的
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な五穀蔬菜は、
野草
(
やそう
)
に
杜
(
ふさ
)
がれてしまう。二宮尊徳の所謂「天道すべての物を生ず、
裁制補導
(
さいせいほどう
)
は人間の道」
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
脆弱
(
ぜいじゃく
)
であった四肢には次第に充実した筋力が満ち男性は山野を馳け廻って狩もすれば、通路の安全を妨げる大岩も楽々揺がせるようになる。
われを省みる
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
一たび
繋
(
つな
)
がれては断ち難い、
堅靭
(
けんじん
)
なる
索
(
なわ
)
を避けながら、己は縛せられても解き易い、
脆弱
(
ぜいじゃく
)
なる索に対する、戒心を
弛廃
(
しはい
)
させた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ところが、そのボネーベ式の
拱貫
(
きょうかん
)
が低く垂れ、暗く圧し迫るような建物が、たちまち破瓜期の
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な神経を
蝕
(
むしば
)
んでいったのだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その男の感じたこと、考えたことが直ちに施設となるような、その場あたりの
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な方針が目に見えて来る。
羞
(
はず
)
かしいのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
葦のような
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な身心をもちながら、思考するという不思議な力をもっている。五尺の小さい身でありながら、宇宙の大を考えることができる。
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
そこに用意されていた数々の
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な人工物を
薙倒
(
なぎたお
)
した上で更に京都の附近を見舞って暴れ廻りながら琵琶湖上に出た。
颱風雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
一つは
大洪水
(
だいこうずい
)
のような司法の力、一つは
硝子
(
ガラス
)
で作った
羽毛
(
うもう
)
のようにまことに
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な魂——その二つの間に
挿
(
はさ
)
まれた彼、青竜王の心境は実に
辛
(
つら
)
かった。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
伯爵はあの通り肥って、心臓の弱いのを気にして居るし、身代りになった坊ちゃんは、それにもまして、ビードロのような
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な心臓を持った青年だ。
死の予告
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
此
(
かく
)
の如く
脆弱
(
ぜいじゃく
)
にして
清楚
(
せいそ
)
なる家屋と此の如く湿気に満ち変化に富める気候の
中
(
うち
)
に
棲息
(
せいそく
)
すれば、かつて広大堅固なる西洋の居室に直立
闊歩
(
かっぽ
)
したりし時とは
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
従来の
牆壁
(
しょうへき
)
を取り払うにはこの機会があまりに
脆弱
(
ぜいじゃく
)
過ぎた。もしくは二人の性格があまりに固着し過ぎていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な、うすい皮膚は、まだ水蒸気を含みながらも真っ白に
冴
(
さ
)
え、着物の
襟
(
えり
)
に隠れている胸のあたりには、水彩画の絵の具のような紫色の影があります。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
見かけだけは肥って居るので、他人からは非常に頑健に思われながら、その
癖
(
くせ
)
内臓と云う内臓が人並以下に
脆弱
(
ぜいじゃく
)
であることは、自分自身が一番よく知って居た。
マスク
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それから暫く考えて、三元が罪に
堕
(
お
)
ちたのも此の世の約束が
脆弱
(
ぜいじゃく
)
になったからだと思うと、書きそえた。そう書きながら、ふと彼は自らを嘲ける気持に落ちた。
黄色い日日
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
美の
脆弱
(
ぜいじゃく
)
さが彼女には欠けてゐた。その不具によつて、劉子のは
象牙
(
ぞうげ
)
の彫像のやうに永遠に磨滅することのない美であつた。これは永遠の不具
乃至
(
ないし
)
は完成であつた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
剥離した皮膚は
脆弱
(
ぜいじゃく
)
で、容易に断烈して除かれた。この種の熱傷を受けた者のほとんど大部分は速やかに死亡した。私はこの原子爆弾熱傷の発生機転をこう考える。
長崎の鐘
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
しかし今はもう葉子の神経は極度に
脆弱
(
ぜいじゃく
)
になって、あらぬ方向にばかりわれにもなく鋭く働くようになっていた。倉地は疑いもなく自分の病気に愛想を尽かすだろう。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
しかも頭の両端の複眼の突出と胸部との関係が
脆弱
(
ぜいじゃく
)
でなく、胸部が
甲冑
(
かっちゅう
)
のように堅固で、殊に中胸背部の末端にある
皺襞
(
しわひだ
)
の意匠が面白い彫刻的の形態と肉合いとを持ち
蝉の美と造型
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
それに引きかえこの劇場わきの老木の新芽というものは
脆弱
(
ぜいじゃく
)
で辛味もこっくりしているのだ。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
伸びるにつれて触手の根元は糸のように細まり、今にも折れるかと危ぶまれたが、その危険を無視して、
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な触手はいよいよ伸び、従っていよいよ脆弱性を増しつつあった。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この事件によってソヴェート政権および赤軍が
脆弱
(
ぜいじゃく
)
になったとは考えられないであろう。
政治の論理と人間の論理
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
人間は可憐であり
脆弱
(
ぜいじゃく
)
であり、それ故愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる。
堕落論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
(いや、待て、俺もひとつ食って、——
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な神経を叩き直してくれようか。)
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
中央政府の勢力が広く波及したようでも、その把握力が極めて
脆弱
(
ぜいじゃく
)
なものでなかったろうか、中枢がただ一つであったということは、必ずしもその中枢の集中力の強大を意味するものではない。
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
その内ごもりの響きのある弱い声は、
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な楽器の音のようだった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私は二三日前に一人の女の不誠実と虚偽と浅薄と
脆弱
(
ぜいじゃく
)
と
浮誇
(
ふこ
)
とが露骨に現わされているのを見た。しかし私は、興奮して鼻の先を赤くしている彼女の前に立った時、
憐愍
(
れんびん
)
と歯がゆさのみを感じていた。
転向
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
それでなくても、顔の固疾や、
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な体質が出足を鈍らすのであったが、着つけない服をつけ、久し振りに靴を
穿
(
は
)
いて出掛ける時には、まるで大旅行に出て行くように悲壮な気持がしたものであった。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
聞くところによると、昔乞食がすまっていて、その乞食小屋が焼けたために、岩の質が更に
脆弱
(
ぜいじゃく
)
になって、さらでだに破損した仏は、いよいよ破損してその形をとどめぬまでになったのであるそうな。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
、実地に隠密して歩いて感じたことは、成程、彼等のうちにも、
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な分子もあるが、今日まで内蔵助から離れずにいる連中は、皆、死を
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たった、これだけのものさ。——尖鋭な鏨様のものが兇器らしいが、それも強打したのではなく、割合
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な縫合部を
後光殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
地質の
脆弱
(
ぜいじゃく
)
、人の達し得ないほど深い所に起こる地すべり、夏の豪雨、絶え間ない冬の雨、長く続く
霖雨
(
りんう
)
など。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
かくの如く
脆弱
(
ぜいじゃく
)
にして清楚なる家屋とかくの如く湿気に満ち変化に富める気候の
中
(
うち
)
に
棲息
(
せいそく
)
すれば、かつて広大堅固なる西洋の居室に直立
濶歩
(
かっぽ
)
したりし時とは
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そして蒔岡家の一同は、明くる朝の四時頃、風が
漸
(
ようよ
)
う収まるのを待ってその
忌
(
い
)
ま
忌
(
い
)
ましい
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な家へ、まだ何となくビクつきながら戻って来たと云う訳であった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
これに限らず一体に吾々は平生あまりに現在の
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な文明的設備に信頼し過ぎているような気がする。
石油ランプ
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
海岸に立っている、地形の
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な家は、時々今にも吹き飛ばされるのではないかと思われるほど、打ち揺いだ。海岸に砕けている波は、今にも
此
(
こ
)
の家を
呑
(
の
)
みそうに
轟々
(
ごうごう
)
たる響を立てゝいる。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
若い頃の声は極めて
脆弱
(
ぜいじゃく
)
で、歌の教師から「ガラスの声」と言われたということであるが、そのガラスの声が、後年ガラスを割るほどの強大な声になったということは、興味の深い因縁である。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
私の
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な小説家的な神経はむざんに叩きのめされた。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
その存在が
脆弱
(
ぜいじゃく
)
で、甚だ味気ないものである。
書について
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
それとて、こういう足もとの多事多端は、決してわが織田家の
脆弱
(
ぜいじゃく
)
によるものでもなく、方針の悪いために起る
破綻
(
はたん
)
でもない。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かかる崩壊は、当時シャン・ゼリゼーの地下にしばしば起こったことで、非常に流動性のものだったから、水中工事を困難ならしめ地下構造を
脆弱
(
ぜいじゃく
)
ならしめていた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
人間が燈火を発明したためにこれに化かされて
蛾
(
が
)
の生命が脅かされるようになった。人間が
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な
垣根
(
かきね
)
などを作ったためにからすうりの安定も保証されなくなってしまった。
からすうりの花と蛾
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
裸体にしてみるとその胸板には思いのほかの厚みがあって体じゅうに
溌剌
(
はつらつ
)
とした健康感が
溢
(
あふ
)
れているのに、夫はいかにも骨組が
脆弱
(
ぜいじゃく
)
で、血色が悪く、皮膚に少しも弾力がない。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
表面、
脆弱
(
ぜいじゃく
)
に見える国でも、内部は案外、充実している国もあるし、権威富力の大きく見えている強国でも、案外、中の
腐
(
す
)
えている国もある。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人間が
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な垣根などを作ったために烏瓜の安定も保証されなくなってしまった。図に乗った人間は網や鉄砲やあらゆる機械を工夫しては鳥獣魚虫の種を絶やそうとしている。
烏瓜の花と蛾
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
平静で謹厳で冷静で育ちもよくまたかつて
嘘
(
うそ
)
を言ったことのない人——あえて女とは言うまい——であった。
脆弱
(
ぜいじゃく
)
に見えるほど穏やかであったが、また
花崗石
(
かこうせき
)
よりも堅固であった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼は、諸国を武者修行して歩いていた当時から、伊勢の内部が、小党分立で、
神戸
(
かんべ
)
の北畠家を中心に固まっている内容の
脆弱
(
ぜいじゃく
)
を見ぬいていた。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“脆弱(
脆弱性
)”の解説
脆弱性(ぜいじゃくせい、en: vulnerability)とは、情報セキュリティ・サイバーセキュリティの用語で、コンピュータに存在する情報セキュリティ上の欠陥をいう。セキュリティホールとも呼ばれる。
(出典:Wikipedia)
脆
漢検準1級
部首:⾁
10画
弱
常用漢字
小2
部首:⼸
10画
“脆弱”で始まる語句
脆弱児
脆弱性
脆弱点
脆弱面