種々しゅじゅ)” の例文
「そうかね。そこのところは、余にはよく呑みこめないが、とにかく、上陸作戦をやるについて、あらかじ種々しゅじゅもらうものは貰って置きたい」
馬関より乗船れから船場屋寿久右衛門せんばやすぐえもんの処からのった船には、三月の事で皆上方かみがた見物、夫れは/\種々しゅじゅ様々な奴が乗て居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
両国りょうごく広小路ひろこうじに沿うて石を敷いた小路には小間物屋袋物屋ふくろものや煎餅屋せんべいやなど種々しゅじゅなる小売店こうりみせの賑う有様、まさしく屋根のない勧工場かんこうばの廊下と見られる。
お杉について安行の知っているのは、この位の程度であったが、迷信の多い人々の説を聞いたら、まだこの上にも種々しゅじゅ不可思議の実例があるらしい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こう考える主人は、ときどきそれとなくおくまねいで茶菓ちゃかなどをあたえ、種々しゅじゅ会話かいわをこころみるけれど、かれが心面しんめんになんらのひびきを見いだしえない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
種々しゅじゅの間違った祭事や儀式等があるけれども、それは小さな宝玉の周囲にある岩のようなもので、その本心においては確かに仏陀ぶっだあるいは菩薩ぼさつがあって
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その時、現今いま医科大学生の私の弟が、よく見舞に来てくれて、その時は種々しゅじゅはなしの末、弟から聴いたはなしです。
死体室 (新字新仮名) / 岩村透(著)
そののちさいわつきばかりは何の変事もおこらなかった、がさすがにその当座は夜分便所に行く事だけは出来なかった、そのうち時日じじつったし職務上種々しゅじゅな事があったので
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
そうして自分じぶんあたたかしずかところして、かねめ、書物しょもつみ、種々しゅじゅ屁理窟へりくつかんがえ、またさけを(かれ院長いんちょうあかはなて)んだりして、楽隠居らくいんきょのような真似まねをしている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
明治六年、維納ウィーン府大展覧会の開場のとき、拙者せっしゃもその差遣さけんせられた官員の一人でありました。当時〈(そのとき)〉目に触れ、耳に聴くところの利益は、種々しゅじゅ様々でありました。
禾花媒助法之説 (新字新仮名) / 津田仙(著)
近ごろ世間に海軍とやら本願寺ほんがんじとやら何々党なになにとうとやらに関して、種々しゅじゅ面白おもしろからざる表裏ばなしを聞くが、つみにくむべきも、その関係者の人については、慈悲じひの心をもって当たりたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
……と申すしたから……これはまた種々しゅじゅお心づかいで、第一、鯛ひらめの白いにもいたせ、刺身を頬張った口からは、如何どうかと存じますので——また折もありましょうと存じますが、ともかく
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かもかく殺人器の進歩しつつある一方に於て、人類の道義的観念は益々向上し、近時、ことに海牙ハーグに於ける国際平和会議開会以後は、種々しゅじゅの方法規約を設けて戦争の惨状を軽減せんと試みつつある。
世界平和の趨勢 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
れを昼のうちに見て置て、夜になるとその封書や髻のあるのをひっさらえて塾にもって帰て開封して見ると、種々しゅじゅ様々のがんが掛けてあるから面白い。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
お杉が評判の美人であるにもかかわらず、さかりを過ぎるまで縁遠いについても、山里には有勝ありがち種々しゅじゅの想像説が伝えられた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
というのは、マナサルワ湖は経文にいわゆる阿耨達池アノクタッチであるということについては学問上種々しゅじゅの異論がありますが、とにかく普通の説に従えば阿耨達池であるという。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
食後の休みなどには、種々しゅじゅ世間談せけんばなしも初まったが、この怪談というものは、いずれの人々も、興味を持つものとみえて、私等はある晩のこと、偶々たまたまそれを初めたのであった。
感応 (新字新仮名) / 岩村透(著)
こう学説がくせつは、ただ種々しゅじゅ学説がくせつあつめて研究けんきゅうしたり、比較ひかくしたりして、これを自分じぶん生涯しょうがい目的もくてきとしている、きわめて少数しょうすうひとばかりにおこなわれて、多数たすうものはそれを了解りょうかいしなかったのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
唯学校を盛にするだけの事ではなくもつとだいなる運動の序幕かと存をり候例へば帝国劇場の如きは義塾の側より殆ど自在に使ひ得られべきやう見受けられは言はずとも種々しゅじゅ面白き事ありさうに候
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ソコで江戸にまいってからも、本藩の様子を見れば種々しゅじゅな事をこころみて居る。兵制で申せば西洋流の操練を採用したことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ホルトショ州からラサ府までは種々しゅじゅ廻り道などしたので千二百七十九哩も歩いて居ります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)