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真率
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しんそつ
ふりがな文庫
“
真率
(
しんそつ
)” の例文
旧字:
眞率
もし
真率
(
しんそつ
)
と云う
語
(
ことば
)
が許されるとすれば、気の毒なくらい真率であった。従って、彼は彼等に対しても、終始寛容の態度を改めなかった。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あるいは滑稽にあるいは壮大にあるいは
真率
(
しんそつ
)
にあるいは奇抜にあるいは人事的に十人十色なるを思へば、初めの我思案こそ
拙
(
つたな
)
かりけれ
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
宗近の言は
真率
(
しんそつ
)
なる彼の、裏表の
見界
(
みさかい
)
なく、母の
口占
(
くちうら
)
を
一図
(
いちず
)
にそれと信じたる反響か。
平生
(
へいぜい
)
のかれこれから
推
(
お
)
して見ると多分そうだろう。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
専門
技倆
(
ぎりょう
)
的に巧でないが、
真率
(
しんそつ
)
に歌っているので人の心を
牽
(
ひ
)
くものである。この歌には言語の
訛
(
なまり
)
が目立たず、声調も順当である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
彼れ人に対して
真率
(
しんそつ
)
、
漫
(
みだり
)
に辺幅を飾らず、
然
(
しか
)
れども広人
稠坐
(
ちゅうざ
)
の
裡
(
うち
)
、
自
(
おのずか
)
ら一種の正気、人を圧するものありしという。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
▼ もっと見る
シネクネと
身体
(
からだ
)
にシナを付けて、語音に
礼儀
(
れいぎ
)
の
潤
(
うるお
)
いを持たせて、
奥様
(
おくさま
)
らしく気取って挨拶するようなことはこの細君の大の
不得手
(
ふえて
)
で、
褒
(
ほ
)
めて
云
(
い
)
えば
真率
(
しんそつ
)
なのである。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
十
米
(
メートル
)
ほど距てて、隣の天幕の歩哨も見ているのだ。が、趙の、この、平生に似ない
真率
(
しんそつ
)
な
慟哭
(
どうこく
)
が私を動かした。私は彼を
扶
(
たす
)
け起そうとした。彼は仲々起きなかった。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
唯
仔細
(
しさい
)
に研究し
来
(
きた
)
って今と昔との間にやや差異のあるが如く思われるのは、仮借の方法と模倣の精神とに関して、一はあくまで
真率
(
しんそつ
)
であり、一は甚しく軽浮である。
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その顔には常に
真率
(
しんそつ
)
で腹蔵のない、豪胆なところが現われている。誰とでもすぐ懇意になって、相手がまだけろっとする暇もない
中
(
うち
)
に、もう『君、僕』で話しだす。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
一千に近い大衆が狭い町筋に楕円を描いて夜の七八時から翌朝まで文字通り
無宙
(
むちゅう
)
に踊り抜くのである。
真率
(
しんそつ
)
な文句、単調な身振り、節は誰も知っている「ナカノリさん」である。
温室の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
という事が、少し甘い、しかし
真率
(
しんそつ
)
な熱情をこめた文体で長々と書いてあったのだった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼女は夫のためにはいかにも
真率
(
しんそつ
)
で、赤裸々でつくしていたと、わたしは思っている。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彼は驚きてわが黄なる
面
(
おもて
)
をうち守りしが、わが
真率
(
しんそつ
)
なる心や色にあらわれたりけん。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
常には見ることがなく、またはこの際に気をつけて見れば見られる、或る動物の集合と去来とをもって、
真率
(
しんそつ
)
に神の通行の
御先払
(
おさきばら
)
いと考える
風
(
ふう
)
が、近い頃までは確かに有ったのである。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
或日、
老僕
(
ろうぼく
)
、先生の家に至りしに、二三の
来客
(
らいかく
)
ありて、
座敷
(
ざしき
)
の真中に
摺鉢
(
すりばち
)
に
鰯
(
いわし
)
のぬたを
盛
(
も
)
り、
側
(
かたわ
)
らに
貧乏徳利
(
びんぼうとくり
)
二ツ三ツありたりとて、
大
(
おおい
)
にその
真率
(
しんそつ
)
に驚き、帰りて
家人
(
かじん
)
に
告
(
つ
)
げたることあり。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
彼女は伏目になって、言葉の切れ目切れ目に平一郎を
真率
(
しんそつ
)
に見上げた。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
龍造寺主計の
真率
(
しんそつ
)
な視線を浴びると、つと舌がためらった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
伝右衛門の素朴で、
真率
(
しんそつ
)
な性格は、お預けになって以来、
夙
(
つと
)
に彼と彼等との間を、
故旧
(
こきゅう
)
のような温情でつないでいたからである。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
初三句は極めて
拙
(
つたな
)
き句なれどもその一直線に言い下して拙きところかえってその
真率
(
しんそつ
)
偽
(
いつわ
)
りなきを示して
祈晴
(
きせい
)
の歌などには最も適当
致居
(
いたしおり
)
候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
これは
供奉
(
ぐぶ
)
した人麿が、天皇の御威徳を讃仰し奉ったもので、人麿の
真率
(
しんそつ
)
な態度が、おのずからにして強く大きいこの歌調を成さしめている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
橋本に騾馬の講義を聞くと、まず騾と
駃騠
(
けってい
)
の区別から始めるので、
真率
(
しんそつ
)
な頭脳をただいたずらに混乱させるばかりだから、黙って
鞍
(
くら
)
のない裸姿を眺めていた。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼らがその
真率
(
しんそつ
)
にして赤児の如き点、また対照の価値なしとせず。松陰
自
(
みず
)
から諸友の
己
(
おのれ
)
を疎隔するを
嗔
(
いか
)
るや、曰く、「最早吾といえども尊攘を説くべからず」と。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
五年前の進は勉学の志を
擲
(
なげう
)
たない
真率
(
しんそつ
)
な無名の文学者であったが、
今日
(
こんにち
)
の進は何といってよいのやら。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
初三句は極めて
拙
(
つたな
)
き句なれども、その一直線に言ひ下して拙き処、かへつてその
真率
(
しんそつ
)
偽
(
いつわ
)
りなきを示して、
祈晴
(
きせい
)
の歌などには最も適当致しをり候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
そういう
巧緻
(
こうち
)
でないようなところがあっても、
真率
(
しんそつ
)
な心があらわれ、自分の心をかえりみるような態度で、「来にけり」と詠歎したのに棄てがたい響がある。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
これ則ち十五、六歳の少年に告げたるなり、その
真率
(
しんそつ
)
にして
磊灑
(
らいしゃ
)
なる、直ちに肺肝を
覩
(
み
)
るが如し。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
「先生、子規さんとは御つき合でしたか」と正直な東風君は
真率
(
しんそつ
)
な質問をかける。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
例へば、
武者小路実篤
(
むしやのこうぢさねあつ
)
は——千八百八十五年に生れ、「
白樺派
(
しらかばは
)
」の中心人物となり、近来
日向
(
ひうが
)
に「新しき村」を建設し、
耕読
(
こうどく
)
主義を実行す。彼の著作は単純
真率
(
しんそつ
)
、技巧を
施
(
ほどこ
)
さず、
自
(
おのづか
)
ら清新の気を
具
(
そな
)
ふ。
日本小説の支那訳
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は坂井の家に、ただいやしくも
免
(
まぬ
)
かれんとする
料簡
(
りょうけん
)
で行った。そうして、その目的を達するために、恥と不愉快を忍んで、好意と
真率
(
しんそつ
)
の気に
充
(
み
)
ちた主人に対して、政略的に談話を
駆
(
か
)
った。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
縁語に巧を
弄
(
ろう
)
せんよりは
真率
(
しんそつ
)
に言いながしたるがよほど上品に
相
(
あい
)
見え
申
(
もうし
)
候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
全くただの人間として大自然の空気を
真率
(
しんそつ
)
に呼吸しつつ穏当に生息しているだけだろうと思う。自分はこれらの教育あるかつ尋常なる士人の前にわが作物を
公
(
おおやけ
)
にし得る自分を幸福と信じている。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
面白く趣味ある材料の充実したる上に、書き方子供らしく
真率
(
しんそつ
)
にして技術家の無邪気なる処善くあらはれたり。書き直すに及ばず。二、三個処字を直して、それにて全く総ての日記の手入終る。
明治卅三年十月十五日記事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「行徳の俎というのは何の事ですか」と寒月が
真率
(
しんそつ
)
に聞く。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
真
常用漢字
小3
部首:⽬
10画
率
常用漢字
小5
部首:⽞
11画
“真”で始まる語句
真
真似
真面目
真実
真直
真中
真紅
真暗
真赤
真鍮