)” の例文
天下人々心を痛め、首をましめ、防禦を事とす。殊に知らず夷の東侵する、彼れ必ず傑物あらん。傑物ある所、その邦必ず強し。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ソロモン王の言葉にも「ふ、なんぢら乾葡萄をもてわが力をおぎなへ、林檎をもてわれに力をつけよ、われは愛によりてみわづらふ」
乾あんず (新字旧仮名) / 片山広子(著)
夫人がこのときの風采ふうさいは、罪あるものを救うべく、めるものをいやすべく、雲にしてかえる神々しい姿であった。廊下を出ると、風が冷い。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それはましさのないはげしい敵意、何かしらぐつと相手を地面まで押しつぶしてしまひたいほどの、腹の底からこみ上げて来る得体のしれない力だつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
今日は十一月四日、打続いての快晴で空は余残なごりなく晴渡ッてはいるが、憂愁うれいある身の心は曇る。文三は朝から一室ひとま垂籠たれこめて、独り屈托くったくこうべましていた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
『だって御自分にましい事がなければ構わないじゃありませんか、人の思惑なんか気にする事はないわ』
機密の魅惑 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
しばししてこの熱を見よと紀州の手取りて我ひたいに触れしめ、すこし風邪かぜひきしようなりと、ついに床のべてうちしぬ。源叔父のみてするは稀なることなり。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
む。子路祷らんことを請う。子曰く、これ有りや。子路こたえて曰く、あり、るいなんじを上下の神祇しんぎいのるといえり。子曰く、きゅうの祷ること久し。(述而、三五)
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
九月上旬には少しくむだ。「九日有登七老山之期、臥病不果、口占。望山不得登。対酒不思嘗。枕辺如欠菊。何以過重陽。」十九日には亡弟げんの法要を営んだ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
とおを出たばかりの幼さで、母は死に、父はんで居る太宰府へくだって、はやくから、海の彼方あなたの作り物語りや、唐詩もろこしうたのおかしさを知りめたのが、病みつきになったのだ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
終日家居して読書した。然るに未だ一年をも経ない中に、眼をんで医師から読書を禁ぜられるようになった。遂にまた節を屈して東京に出て、文科大学の選科に入った。
或教授の退職の辞 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
当時彼の取った態度を、叔母の今の言葉と結びつけて考えた津田は、別にこれぞと云ってましい点も見出し得なかったので、何気ない風をして叔母の動作を見守っていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生は常州じやうしう、水戸の産なり、そのはくみ、そのちうえうす。先生せんせい夙夜しゆくや膝下しつかばい戦々兢々せんせんきようきようたり。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は或る盲人按摩に失明の原因を聞きましたら中年頃重い眼病をんで少し快復した時山葵漬わさびづけを沢山食べたためその夜より両眼が非常に痛み出して遂に全く失明したと申しました。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
衆生しゅじょうむが故に、われまた疾む」という菩薩は、とうてい大衆のやるせない叫びに、耳を傾けずにはおられないのです。「他人は他人、おれは俺だ」などといって、すましてはおられないのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
病ニ罹リテタズ。実ニ癸丑六月十日也。享年五十六。牛籠うしごめノ常敬寺ニ葬ル。はい田中氏善クミ子ナシ。翁ハ躯貌くぼう肥大、風神脱灑だっさい。而シテ人ト交ルヤ胸ニ柴棘さいきょくナシ。烏山侯ノ愛重スル所ト為ル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
小簾をすのすきかげ隔てといへば、一重ばかりもましきを、此処十町の間に人目の関きびしく成れば、頃は木がらしの風に付けても、散りかふ紅葉のさま浦山しく、行くは何処どこまでと遠くながむれば
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
真底って噂し合えば、まして天変地異をおもしろずくで談話はなし種子たねにするようの剽軽ひょうきんな若い人は分別もなく、後腹のまぬを幸い、どこの火の見が壊れたりかしこの二階が吹き飛ばされたりと
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかしこれは現実でなく、夢に現れた厲鬼であるが、晋侯は間もなくんで、二豎子にじゅし(疾病の神)を夢み、所もあろうにかわやにおちてしゅつしたのを見ると、夢中の厲鬼がたたりをなしたと解するのほかはない。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
我は愛によりてみわづらふ。
三つのなぜ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
先年予が日本に在職中にありたることを回想すればかかる風説は日本政府の心をましむるに相違なかるべしといい
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
子曰く、しからざるかな、弗ざるかな。君子は世をおわるも名の称せられざるをむ。吾が道行なわれず。われ何を以てか自らを後世にあらわさん、と。すなわち史記に因りて春秋を作る。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
名声ある人の芸妓遊げいしゃあそびをせぬというかぎりはない、立派に客たる品位を保って、内にましい処がなければ、まだしも世間は大目に見ようが、梓はさる身分でありながら、一待合の女房を見て
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「疾是憂」とは云つても、猶幸にむには至らなかつたらしい。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)