瑞西スイス)” の例文
老医師はその妻子だけを瑞西スイスに帰してしまい、そうして今だにどういう気なのか頑固がんこに一人きりで看護婦を相手に暮しているのだった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
瑞西スイスが、一面工業国でありながら、山水美をもって、世界の旅客を引きつける魅力は、甲斐の自然が、またこれを備えている。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
委員としては、米国GE研究所のシェファー博士、瑞西スイスの雪崩研究所長ドケルヴァン博士、加奈陀カナダ国立研究所のクライン氏の三人が選ばれた。
法皇の護衞なる瑞西スイス隊は正裝して、その士官はかぶと唐頭からのかしらはさめり。この裝束は今若き貴婦人に會釋せるベルナルドオには殊に好く似合ひたり。
窓のあけかたや、長押なげしの壁に日時計をつけたところなどをみると、南瑞西スイスのモン・フォールの山小屋キャバーヌをまねてつくったものだということがわかる。
仏蘭西の政体は毎度変革すれども、教育上にはいささかも変化を見ず。その他英なり荷蘭オランダなり、また瑞西スイスなり、政事は政事にして教育は教育なり。
政事と教育と分離すべし (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それから両人は互に文通して、励まし合つてゐたが、いくばくも無くスタインホイザアが瑞西スイスのベルンで卒中そつちうたふれてしまつた。
彼女は何と云うこともなく、まだ行ったこともない瑞西スイスあたりの湖畔の景色を空想したり、バイロンきょうの「シロンの囚人」の詩を思い浮べたりした。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この恨みは初め一抹いちまつの雲のごとくわが心をかすめて、瑞西スイスの山色をも見せず、伊太利イタリア古蹟こせきにも心をとどめさせず、中ごろは世をいとい、身をはかなみて
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
○三月、明治座にて「瑞西スイス義民伝」を上演。シルレルの「ウィルヘルム・テル」を巌谷小波さざなみが翻案したるなり。
明治演劇年表 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
元来米国と欧洲の瑞西スイスは、世界各国の人種が出入りするために、各種の秘密結社の策源地のようになっている。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
又春に成つたので瑞西スイスのジユネエブ湖畔に隠居して居る下宿の主婦の老母が娘の家へ遊びに来て滞在して居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
カラ松の林に取囲まれた瑞西スイス風の山荘シヤレエが、軽井沢のゴルフ・リンクに近い斜面の中腹に建つてゐた。
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「そうすると、貴方はあの瑞西スイスの牧師と同様に、人間と動物の顔を比較しようとなさるのですか」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ずっと以前瑞西スイスにいた頃に、回教は亜細亜アジア向きの宗教らしいという話をした人がある。耶蘇教やそきょうは信じてもやがてめるが、回教に入った者は出てこないということを謂った。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼の下宿には独逸ドイツのミュウニッヒの方から来た慶応の留学生を迎えたり、瑞西スイスの方へ行く人を送ったりしたが、それらの人達と連立ってルュキサンブウルの美術館をたずねた時でも
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あの箱根が瑞西スイスの山間か湖の畔であつたなら、どんなに自分の心は勇立つであらう。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
「お母様。湯本から登山電車に乗って御覧にならない。此間の新聞に、日本には始めての登山電車で瑞西スイスの登山鉄道に乗っているような感じがするとか云って、出ていましたのよ。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
墨西其メキシコ、モンテネグロ、和蘭オランダ波斯ペルシャ葡萄牙ポルトガル羅馬尼亜ルーマニア露西亜ロシア塞耳比亜セルビア暹羅シャム瑞典スウェーデン那威ノルウェー瑞西スイス土耳其トルコ勃牙利ブルガリアの二十六ヵ国の全権大使が会合して、国際的争議を解決するに
文明史上の一新紀元 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
中でも太陽を受けてまぶしいばかりにきらきら輝く北氷洋の氷山の大きな写真と、それからアンデルセンの物語の中の青年ルディーが、瑞西スイスの湖水で溺死して、水の底に沈んでいるのを
凍るアラベスク (新字新仮名) / 妹尾アキ夫(著)
仏蘭西フランスから英吉利イギリスに渡り、英吉利から和蘭オランダ独逸ドイツ瑞西スイスとまわって伊太利イタリーのミラノに来た。ミラノに来たのは僕は二度目である、そうして歩いているうちに妻はいつのまにか懐妊していた。
(新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
大正十年に在瑞西スイスまき有恒君が嶮難をもって聞えた前人未踏のアイガー東山稜の登攀に成功し、之が我国に報ぜられて若き登山家の心を躍らせ、岩山登攀の傾向を助長させたことは疑いない。
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
いや、瑞西スイスへ出かけるところです。家内が少し健康からだがわるいので、医者から山へ転地しろと云われたものですから。しかし山が寒くて此女これが困るようでしたら、湖水の方へ降りるつもりです。
瑞西スイス、ベルンの商人 鳴る、ビュッヒュウと鳴る。
雷嫌いの話 (新字新仮名) / 橘外男(著)
ところで、場面は、瑞西スイスサン・モリッツである。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
瑞西初夏(瑞西スイスの初夏)
南半球五万哩 (新字新仮名) / 井上円了(著)
あんなにも私の愛していた瑞西スイス式のバンガロオだの、美しい灌木かんぼくだの、羊歯しだだのを、彼女に指して見せながら、私はなんだか不思議な気がした。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
議官セナトオレは紫衣を纏ひて天鵞絨びろうどの椅子に坐せり。法皇の禁軍このゑなる瑞西スイス兵整列したる左翼の方には、天鵞絨のベルレツタを戴ける可愛らしき舍人とねりども群居たり。
その後、だいぶたってから、白耳義のスパや、瑞西スイスのヴェーヴェなどで、邦子を見かけたというひとが、二三人あった。
野萩 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
かつてその婚約時代に和蘭オランダ独逸ドイツ瑞西スイスを遊学してまわった事があるが、その帰朝土産に仏蘭西フランス巴里パリの犬の展覧会から、何万フランか出して買って来た世界第一
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もう十年も前のことであるが、倫敦ロンドンに留学中私はユニバシティカレッヂのポーター老先生の所へ繁げ/\出入りしてゐるうちに、一緒に瑞西スイスへ行かうとさそはれたことがあつた。
ツーン湖のほとり (新字旧仮名) / 中谷宇吉郎(著)
だんだん贅沢が身にみるに従い、やがてその家も手狭だと云うので、間もなく本牧ほんもくの、前に瑞西スイス人の家族が住んでいた家を、家具ぐるみ買って、そこへ這入るようになりました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
瑞西スイスの山村へ里帰りに行ったときの日記である、ローザにしても、辻村や子供たちにしても、その里帰りが、永久の訣別になったわけであるが、当時の日記は『山岳』へ寄稿するつもりで
瑞西スイスの首都 Zürichチュリヒ をば午後二時十分発の急行列車で立った。そして、方嚮ほうこうを東南に取り、いわば四方から湖に囲まれたという姿の、Rigiリギ の山上に一夜泊ろうとしたのであった。
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ある身上話を残して置いて瑞西スイスの方へ出掛けて行った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
簡素な木造の、何処どこ瑞西スイスの寒村にでもありそうな、朴訥ぼくとつな美しさに富んだ、何ともいえず好い感じのする建物である。
木の十字架 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
その後だいぶたってから、白耳義のスパや瑞西スイスのヴェーヴェなどで邦子を見かけたというひとが二、三人あった。
ユモレスク (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
二三年前の事、或る若いエスペランチストが私の処へ遊びに来ましたついでに、瑞西スイスとかのエスペラントの雑誌へ「能」の事を投稿したいから、話してくれないかと頼みました。
能とは何か (新字新仮名) / 夢野久作(著)
雪委員会の第一回の総会は、一九三三年にリスボン市で開かれ、チャーチ博士を委員長とし、他に瑞西スイスのマーカントン教授及びイタリアのエレディア教授が顧問として、これを援けた。
斯くさゝやきつゝ、友は我を延いて大なる廳を過ぎ、そこを護れる禁軍このゑ瑞西スイス兵の前を歩みて、當直士官の室に入りぬ。君は病めりと云へど、面は紅に目は輝けるこそいぶかしけれ。さなり。
主人と云うのは瑞西スイス人だそうで、名古屋の或る会社の顧問とかをしていて、始終留守がちであり、家には、姿は西洋人臭いけれども容貌ようぼうはフィリッピン人か支那人のように見える若い夫人が
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
紳士、「去年の夏は何處でお暮らしになりましたか?」お孃さん、「瑞西スイスのチロルで——」なかなか味をやるぞ。
エトランジェ (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
シニョレは瑞西スイスのホテルで給仕になりすまし、夏場稼ぎをしているのを、七月になって探しあてた。
悪の花束 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
墺太利オーストリア、シェンブルヌの王宮の門前で歩哨に撃たれて死んだとか、前皇后の生地マルチニック島で、白耳義ベルギーのブルュクセルで、瑞西スイスのベルヌで、というぐあいなのである。
フランス伯N・B (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
まるで瑞西スイスあたりの田舎いなかにでもありそうな、小さな橋だの、ヴィラだの、落葉松からまつの林だのをしるしつけながら、彼女のために、私の知っているだけの、絵になりそうな場所を教えた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)