献上けんじょう)” の例文
旧字:獻上
それから百済くだらの国の王からは、おうま一とう、めうま一頭に阿知吉師あちきしという者をつけて献上けんじょうし、また刀や大きな鏡なぞをもけんじました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
四月三十日のひつじこく、彼等の軍勢を打ち破った浅野但馬守長晟あさのたじまのかみながあきら大御所おおごしょ徳川家康とくがわいえやすに戦いの勝利を報じた上、直之の首を献上けんじょうした。
古千屋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかるに、あるとき、とおみなみほうからわたってきたという、あかみどりあお毛色けいろをした、めずらしいとり献上けんじょうしたものがありました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
太子たいしが六さいときでした。はじめて朝鮮ちょうせんくにから、ほとけさまのおきょうをたくさん献上けんじょうしてまいりました。するとある太子たいしは、天子てんしさまのおまえへ出て
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
これは蒙古もうこよりチャーレス二世に献上けんじょうになったものだとビーフ・イーターが説明をしてくれる。余は三たびうなずく。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
帯の独鈷とくこ献上けんじょう、平ぐけ、印半纏しるしばんてん長繻絆ながじゅばん、——その長繻絆の燃え立つようないろにまじった刺っ子、刺っ子半纏……
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
その御殿もその中のいろいろなたから物も、サンマルティンの尊像がお山からお下りになったら、一まとめにして献上けんじょうするのだといっていたものですから
かたわ者 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
うやうやしく献上けんじょうしたものだったが、とうが磨滅した、役にもたたぬ廃物同様の古砲だったので、家光は激怒して、そっくりつっ返させたその四門の加農砲だったのである。
ひどい煙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
小僧「私の献上けんじょうしようと申しますのはデスナ、我国の兵の身長と敵兵の身長とのはなはだしい相違に着眼したのです。こっちは一ポイント六メートル位で、あっちは二メートルもあります。」
発明小僧 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
その火のはたらきをくぐって僕等の芸術は出来る。それを何ということだ。鋳金ちゅうきんの工作過程かていを実地にご覧に入れ、そして最後には出来上ったものを美術として美術学校から献上けんじょうするという。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「だまれ。あの黒鷲は、当山を攻めおとした時の生捕いけどりもの、大せつにをやって、ちかく浜松城へ献上けんじょういたすことになっているのだ、なんじらの見せ物ではない。帰れというに帰りおらぬか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
命は弟宇迦斯おとうかし献上けんじょうしたごちそうを、けらい一同におくだしになって、お祝いの大宴会えんかいをお開きになりました。命はそのとき
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「では格別の憐愍れんびんにより、貴様きさまたちの命はゆるしてやる。その代りに鬼が島の宝物たからものは一つも残らず献上けんじょうするのだぞ。」
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
太子たいしのおとくがだんだんたかくなるにつれて、いろいろ不思議ふしぎことがありました。あるとき甲斐かいくにから四そくしろい、くろ小馬こうまを一ぴき朝廷ちょうてい献上けんじょういたしました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「急いで来んでもいいのですけれども、このおみやげを早く献上けんじょうしないと心配ですから」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小僧「そうです。感電砲というのを発明しましたから、国家へ献上けんじょうします。」
発明小僧 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
ひがしくにから薬売くすりうりが、「これは支那しな昆崙山こんろんざんにあった、不老不死ふろうふしくすりでございます。」といって、献上けんじょうしたので、おうさまはいままで、としをとりをおそれていられたのに、さいわ不思議ふしぎ妙薬みょうやく
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
命は、これはふしぎなものが手にはいったとお思いになりました。その剣はのちに天照大神あまてらすおおかみへご献上けんじょうになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
太子たいしが八さいとしでした。新羅しらぎくにからほとけさまのお姿すがたきざんだぞう献上けんじょういたしました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
第一が千里飛べる長靴ながぐつ、第二が鉄さえ切れるけん、第三が姿の隠れるマントル、——それを皆献上けんじょうすると云うものだから、欲の深いこの国の王様は、王女をやるとおっしゃったのだそうだ。
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あれを献上けんじょうするからあなたのへやへ持っていらっしゃい。もっとも雷獣らいじゅうとそうしてズクは両人共きわめて不風流ゆえ、床の間の上へえたなり放っておいて、もう枯らしてしまったかも知れません。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのときちょうど奈良ならからはつもののうりを献上けんじょうしてました。めずらしい大きなうりだからというので、そのままおぼんにのせて四にんのおきゃくまえしました。するとまず安倍晴明あべのせいめいがそのうりを手にのせて
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)