氣高けだか)” の例文
新字:気高
想へば、氣高けだからふたけたる横笛をうきくさの浮きたる艷女たをやめとはひがめる我が心の誤ならんも知れず。さなり、我が心の誤ならんも知れず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ときに、先客せんきやく一人ひとりありましてみぎました。氣高けだかいばかりひんのいゝとしとつたあまさんです。失禮しつれいながら、先客せんきやく邪魔じやまでした。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あなた方は、その氣高けだかい愛のお心で私を死からお救ひ下さいました。この御恩に對しては何とお禮申上げてよいか分らない程でございます。
圖するところはヂドに扮したるアヌンチヤタが胸像なりき。氣高けだかうるはしきその面輪おもわ、威ありてけはしからざる其額際、皆我が平生の夢想するところに異ならず。
愛となさけの使者のやうに不幸な人達を訪れて𢌞る清らかな、白い、き立ての麥粉を、その名が記念してゐる失はれた少女に譬へて見ることは、美しくも氣高けだかく思はれるに違ひない。
水車のある教会 (旧字旧仮名) / オー・ヘンリー(著)
ああ私はあらゆる淨い氣高けだかい土地をかうして今までむだにけがして來た
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
そなたその氣高けだか姿すがたほん蝋細工同樣らうざいくどうやうをとこ勇氣ゆうきからははづれたものぢゃ。
森と言へば叢立むらだつ霧のこちごちに氣高けだかく厚くとりで立てたる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
たへ氣高けだか眼差まなざしも、世の煩累わづらひに倦みしごと
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
※弟きやうだい建場たてば茶屋ちやや腕車くるまやとひながらやすんでところつて、言葉ことばけてようとしたが、その子達こだち氣高けだかさ!たふとさ! おもはず天窓あたまさがつたぢや。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
世には斯かる氣高けだかき美しき女子をなごも有るもの哉と心ひそかに駭きしが、雲をとゞめ雲を𢌞めぐらたへなる舞の手振てぶりを見もて行くうち、むねあやしう轟き、心何となく安からざる如く
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
黒き瞳子ひとみ※電せんでんの如き少女二人、暫し飛ぶが如くに車の迹を追ひ來りしが、ジエンナロはこれをも美しとたゝへき。されどララの氣高けだかきには比ぶべうもあらざりき。
「イングラム孃の形で——氣高けだかい、美しい人——あなたの花嫁さまです。」
淺草寺あさくさでら觀世音くわんぜおん八方はつぱうなかに、幾十萬いくじふまん生命いのちたすけて、あき樹立こだちもみどりにして、仁王門にわうもん五重ごぢうたふとともに、やなぎもしだれて、つゆのしたゝるばかりおごそか氣高けだか燒殘やけのこつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この塵をかうむらざる美の影圖は、その氣高けだかきこと彼「ワチカアノ」なるアポルロンの神の像の如く、儼然げんぜんとして我前に立てり。嗚呼、この影圖よ。今これを知りたるものは、唯だ神と我とのみ。
氣高けだかき信もて我が手に置きて
ほゝのかゝり白々しろ/″\と、なかにも、圓髷まるまげつた細面ほそおもて氣高けだかひん女性によしやうの、もつれたびんつゆばかり、面窶おもやつれした横顏よこがほを、またゝきもしないさうひとみ宿やどした途端とたんに、スーとりて、いた
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)