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気勢
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けはい
ふりがな文庫
“
気勢
(
けはい
)” の例文
旧字:
氣勢
低空飛行をやっていると見えて、プロペラの轟音は焙りつけるように強く空気を顫わし、いかにも悠々その辺を旋回している
気勢
(
けはい
)
だ。
刻々
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
忍野郷
(
しのぶのごう
)
を出外れるともう釜無の岸であった。土手に腰かけて
一吹
(
いっぷく
)
した。それから
四辺
(
あたり
)
を見廻したが、人の居るらしい
気勢
(
けはい
)
もなかった。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
院長や、医員や、看護婦たちが容易ならぬ
気勢
(
けはい
)
であちこちと立ち廻っている間に、私はクロロフォムの壜と、マスクの用意をしました。
麻酔剤
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
雨滴
(
あまだ
)
れの音はまだしている。時々ザッと降って行く
気勢
(
けはい
)
も聞き取られる。
城址
(
しろあと
)
の沼のあたりで、むぐりの鳴く声が寂しく聞こえた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
その時は早や、夜がものに
譬
(
たと
)
えると谷の底じゃ、
白痴
(
ばか
)
がだらしのない
寐息
(
ねいき
)
も聞えなくなると、たちまち戸の外にものの
気勢
(
けはい
)
がしてきた。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
事実声の主は少しずつ、少しずつ、彼女の方へにじり寄って来るらしく、黒いもののうごめく
気勢
(
けはい
)
が、段々身近に感じられた。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
もう来るかもう来るかと、菊路たちふたりはおびえつづけていたのに、城中はおろか、どこからも使者らしい使者は来る
気勢
(
けはい
)
もないのでした。
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
囲いは、まるで罪囚の
牢舎
(
ろうや
)
にひとしい。隅には便所までついているし、襖の外には、番人達のきびしい
気勢
(
けはい
)
がするのだった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かんかん日の当っていた後の家の
亜鉛屋根
(
トタンやね
)
に、蔭が出来て、今まで昼寝をしていた近所が、にわかに目覚める
気勢
(
けはい
)
がした。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
外所
(
そと
)
は豆腐屋の売声高く夕暮近い往来の
気勢
(
けはい
)
。とてもこの様子ではと自分は急に起て帰ろうとすると、母は
柔和
(
やさし
)
い声で
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そのうちに、
階下
(
した
)
の八角時計が九時を打った。それから三十分も経ったと思うころ、外から誰やら帰ってきた
気勢
(
けはい
)
で
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
内にはまだ人の
気勢
(
けはい
)
がしていたが、門の扉の閉めてあるのを、矢田は「おいおい」と呼びながら
敲
(
たた
)
くと、すぐに
硝子戸
(
ガラスど
)
の音と、下駄をはく音がして
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
やがて引き出そうとする、出まいとする、その
格闘
(
あらそい
)
の
気勢
(
けはい
)
。と知るや、物をも言わずに味噌松は階下へ跳び下りる。
釘抜藤吉捕物覚書:03 三つの足跡
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
自分は、何の因果であの女が諦められぬのであろう、と感慨に迫りながら行く手の方を見ると、灰色空の下に深い山また山が重畳している
気勢
(
けはい
)
である。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
そう云う相手の
気勢
(
けはい
)
を見ると、瑠璃子は何気ないように、元の椅子に帰りながら、
端然
(
たんぜん
)
たる様子に帰ってしまった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そのうちに
平生
(
いつも
)
の癖で長くは睡っていられない老婆が眼を覚したところで、お
媽
(
かみ
)
さんの室にものの
気勢
(
けはい
)
がした。
狐の手帳
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
どこかの隅から、かの四月や五月やが人知れずにこにこして覗いているような
気勢
(
けはい
)
さえ感ぜられるのであった。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
何時
(
いつ
)
の間にか一
匹
(
ぴき
)
の飼犬が飛んで来て、鋭い眼付で彼の側へ寄って、
吠
(
ほ
)
えかかりそうな
気勢
(
けはい
)
を示した。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
土井はこう言って、近所に住っている原口を迎えに、すぐにも
起
(
た
)
ちあがりそうな
気勢
(
けはい
)
を見せた。
遁走
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
と言つてる所へ、入口に人の訪るる
気勢
(
けはい
)
。智恵子は
佶
(
きつ
)
と口を結んだ。俄かに動悸が強く打つ。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
さりとてまんざら待っていなかったというのでもない。しかし、いつまでたっても夫の来る
気勢
(
けはい
)
はなく……いいや夫ばかりかは! それっきり殿下も、もう姿をお見せにならなかった。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
日が暮れてから父が奥の四畳半で読書していると、縁側にむかった障子の外から何者かが窺っているような
気勢
(
けはい
)
がする。誰だと声をかけても返事がない。起って障子をあけてみると、誰もいない。
父の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「ヤッ、変だぞ、変だぞ」と、断水坊も将棋指す手を止め、この血は鼻から出たのであろうと、二人は
顔面
(
かお
)
はいうに及ばず、全身残りなく
検
(
しら
)
べてみたが、どこからも血の出た
気勢
(
けはい
)
が
微塵
(
みじん
)
程もない。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
台所へ廻ろうか、足を
拭
(
ふ
)
いてと、そこに居る
娘
(
ひと
)
の、
呼吸
(
いき
)
の
気勢
(
けはい
)
を、伺い伺い、
縁端
(
えんばな
)
へ。——がらり、がちゃがちゃがちゃん。
吃驚
(
びっくり
)
した。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
今にもだれかに怒鳴りつけられるかと、身構えさえして階段を上ったが、不思議なことには、そこにも人の
気勢
(
けはい
)
はなかった。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
土塀の
頂上
(
てっぺん
)
で腹這いになり、
家内
(
やうち
)
の様子を窺ったが、樹木森々たる奥庭には、燈籠の
燈
(
ひ
)
がともっているばかり、人の居るらしい
気勢
(
けはい
)
もなかった。
柳営秘録かつえ蔵
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
今日もそこに来て耳を
敧
(
そばだ
)
てたが、電車の来たような
気勢
(
けはい
)
もないので、同じ歩調ですたすたと歩いていったが、高い線路に突き当たって曲がる角で
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「騒ぎは何でござる。どうやら百姓共の容子を見れば、一揆でも起しそうな
気勢
(
けはい
)
でござるが、騒ぎのもとは何でござる」
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
庭面
(
にわも
)
や廊下先に、人の
気勢
(
けはい
)
がないかあるかを、耳を澄まして確かめるためだった。やがて、ずっと低い声でこう云った。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
種彦はあまりの事に
少時
(
しばし
)
はその方を見送ったなり
呆然
(
ぼうぜん
)
として
佇立
(
たたず
)
んでいたが、すると今までは人のいる
気勢
(
けはい
)
もなかった屋根船の障子が音もなく
開
(
あ
)
いて
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
信一郎は、身支度をしていた
為
(
ため
)
に、誰よりも遅れて車室を出た。改札口を出て見ると、駅前の広場に湯本行きの電車が発車するばかりの
気勢
(
けはい
)
を見せていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
お作と嫂の茶の
室
(
ま
)
へ入って来る
気勢
(
けはい
)
がすると一緒に、お国も茶の室へ入って来た。それを
機
(
きっかけ
)
に、嫂が、「どうもお邪魔を致しました……。」と暇を告げる。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
三次たちの
気勢
(
けはい
)
を聞きつけて起きて来た長屋の者が
消魂
(
けたたま
)
しく戸を叩いたので、七兵衛も寝巻姿で飛出して来たが井戸端の洗場に横たわっている娘の死骸を見ると
早耳三次捕物聞書:01 霙橋辻斬夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と
低声
(
こごえ
)
に教えてくれた。カッフェにいた男女が、
好奇心
(
ものずき
)
に廊下を覗いているらしい
気勢
(
けはい
)
がしたが、彼女が客を連れて階段を
昇
(
あが
)
りかけたときに、どっと笑い声が聞えた。
碧眼
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
日蔭に成った坂に添うて、岸本捨吉は品川の停車場手前から
高輪
(
たかなわ
)
へ通う抜け道を上って行った。客を載せた一台の
俥
(
くるま
)
が坂の下の方から同じように上って来る
気勢
(
けはい
)
がした。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この時クスリと一声、笑いを圧し殺すような
気勢
(
けはい
)
がしたが、
主人
(
あるじ
)
はそれには気が付かない。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
と、渠は、前夜同じ蚊帳に寝た女の寝息や寝返りの
気勢
(
けはい
)
に酷く弱い頭脳を悩まされて、夜更まで寝付かれなかつた事も忘れて、慌てて枕の下の財布を取出して見た。変りが無い。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
すると、母親は、さすがに手出しはし得なかったが、今にも打ちかかって来そうな
気勢
(
けはい
)
で、まるで病犬が
吠
(
ほ
)
えつくような
状態
(
ありさま
)
で、すこし離れたところから、がみがみいっている。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
入口の扉が開いたり、近よる人の
気勢
(
けはい
)
がしたりすると、彼女の神経は極度に緊張した。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
すると、私のその
気勢
(
けはい
)
に、今までじっと睡ったように身動きもしなかった銭占屋が
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
塵
(
ちり
)
も
埃
(
ごみ
)
も寐静ったろうと思う月明りの
中
(
うち
)
に、曲角あたりものの
気勢
(
けはい
)
のするのは、二階の美しいのの魂が、菊の花を見に出たのであろう。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やがて、
銘々
(
めいめい
)
発見されて、あとは彼一人になったらしく、子供達は一緒になって、部屋部屋を探し歩いている
気勢
(
けはい
)
がした。
お勢登場
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
人間さながら消えたかのように、存在の
気勢
(
けはい
)
さえも示そうとしない、相手の精妙の遁業にひそかに舌を捲いたのであった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
にじり寄ってむんずとその手をでも取ったらしい
気勢
(
けはい
)
がきこえると共に、あからさまな言葉がはっきりときこえました。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
源蔵の眼と、貞四郎の眼とは、
梯子段
(
はしごだん
)
の途中と下で
凝
(
じっ
)
と結びついていた。女中の来る
気勢
(
けはい
)
がしたので、二人は、無言のまま、二階へ戻って行った。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ふと前の
榛
(
はん
)
の並木のあたりに、人の来る
気勢
(
けはい
)
がしたと思うと、
華
(
はな
)
やかに笑う声がして、足音がばたばたと聞こえる。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
新子も、椅子の背にもたれて、わずかにまどろんだとき、部屋にはいった人の
気勢
(
けはい
)
がしたので、ハッと眼を開けるとそれはパジャマを着た準之助氏であった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
閉切った障子の中には更に人の
気勢
(
けはい
)
もないらしいのに唯だ朗かに
河東節
(
かとうぶし
)
「
水調子
(
みずちょうし
)
」の一曲が
奏
(
かなで
)
られている。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
水口の外に、女中が行水を使っているらしい
気勢
(
けはい
)
がしたが、土間にははたして浅井の下駄もあった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
呆然
(
ぼんやり
)
と戸外の
気勢
(
けはい
)
を覗っていた藤吉の耳へ、
竹筒棒
(
たけづっぽう
)
を通してくるような、無表情な仙太郎の声が響いた。瞬間、藤吉はその意味を頭の中で常識的に解釈しようと試みた。
釘抜藤吉捕物覚書:10 宇治の茶箱
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
勢
常用漢字
小5
部首:⼒
13画
“気勢”で始まる語句
気勢込